[発行日:2004.05.28] vol.6 コラム 杉村 光俊氏 トンボが逆立ちしたら帰っておいで、 アファンの森 見学記

 
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☆     | テイコク環境事業企画室
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆[発行日:2004/ 5/28]☆☆



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  もくじ 【1】 アファンの森 見学記
     
      【2】 コラム 杉村 光俊氏
          
          トンボが逆立ちしたら帰っておいで 
         
      【3】 高校生の環境意識を育て、森の未来を守る
         
          〜「第3回森の聞き書き甲子園」〜を支援します。
           

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こんにちは。株式会社トンボ、環境事業企画室の小桐です。
初夏と思っていたら、来週から梅雨が始まるという天気予報、季節の巡り
は早いものです。

日本の経済はすこし、持ち直したとの報道も一部ありますが、その影響か
CO2の排出量は増え、京都議定書での取り決めの実行が危うくなる始末。

私たちはいったい何を求めて生きているのだろう。何を残そうとしている
のでしょうか。

先祖から受け継いだ環境はまた、私たちのものでなく、これからの子孫か
らの預かりもの そんな意識が足らないのではないかと書いた新聞があり
ました。

先日うれしいことに茨城県の中学校から環境授業をして欲しいとのお話を
頂きました。制服にまつわる環境の話や、なぜ環境を守らないといけない
かについて企業の立場で実行したり、考えたりしていることを生徒さんに
伝えて欲しいというものです。

直接ビオトープという話にはいたらないかもしれませんが、地元でおこな
われている アサザプロジェクトの取り組みについても触れる予定です。

これまでは岡山の地元でしか環境授業のチャンスがなかったのですが、
新しい出会いがあると期待しています。

今月は、このメルマガをお願いしているC.W.ニコル氏のアファンの森を
訪ね、森の復元について色々お話をお聞きしました。
未来へつなげるニコル氏の思いを聞くことができました。


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   ★     1.アファンの森 訪問記        ★
          未来へ続く壮大なビオトープ    
          
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作家のC.W.ニコル氏が財団の長を勤める 長野県 黒姫山の近く、信濃
町の飯綱山にあるアファンの森。

最初は、個人のトラスト運動によって、土地を買い上げ、失われた自然の
回復をしようというものでした。それが20年以上にもわたって行われ、
今日まで続いています。
 
アファンの森は最初は森作りでなく、自分の家作りだった。
22年ほどまえに、静かだった信濃町のニコルさんの家の近くにも住宅が
増え、静かな土地に住みたいと森を買ったのがきっかけ、ちょうどその頃、
森の奥のほうで森林の伐採が始まり、近くの川が雨が降るたびに泥水が流
れるようになった。
せっかくの自然が破壊されていくと、個人で直接林野庁に公開質問状を送
り自然破壊の中止を求めた。それが新聞に大きく報道された。

自分で森は守らないといけないと思い、次々に土地を購入、森の管理人
「松木さん」(営林署に永年勤めた森のスペシャリスト)と二人三脚でこ
れまで森の復元に携わられてきました。
熊笹を刈り、病気の木を間引き、水源が豊富なので、小川をつなぎ、池を
作り、豊かな森を作ろうとブナやナラなどの木を植えてこられました。
池の土手には一部桜も植えられて、季節感にあふれた森となっています。

アファンの森の入り口にある短い木に穴が開いていました。ふくろうが棲
むための巣だそうです。徐々にふくろうが増えている。
これは食物連鎖の上位にある種が増えるということなのでその下位にある
生き物が増えたことを示しています。アファンの森を歩くといたるところ
で鳥の声がします。
でも残念ながらこの森と接している国有林からは鳥の声が聞こえてきませ
ん。
なぜ? 手入れがされておらず、動物たちにとってはうれしい森ではない
からなのだそうです。

アファンの森には 人々が森と対話するバッファーゾーン(緩衝帯)と人
々が入れないコアゾーンを設けておられます。
そしてこのバッファーゾーンは「里山」の機能を持たせ、きのこの栽培、
炭焼きなども行われています。
バッファーゾーンにはティピの森(テントハウス:中で雨天でも話が聞け
る)ゾーン、2つの池があるゾーンとその傍に 森の声を聞く場がありま
す。

森の上のほうは国有林と接していてその境界には水路が作られており、そ
こには岩魚もすんでいます。
でもこの水路は自然の流れでなく、U字管が埋められていました。まるで水
を流すためだけのものでそこに棲む岩魚の遡上がある場所からはできなく
なっています。
ニコルさんも残念がっておられますが、まあこれくらいは(国の仕事)許
してあげないとね。と岩魚が食べられるので寛容なようです。

でも国有林からアファンの森へ繋がる小川の流れが、このコンクリートの
壁面で分断されており、いずれ小川の流れを取り戻したいと、計画をされ
ています。
アファンの森は伏流水も多く、水溜りや水の流れをつないで連続した流れ
を作り、最後は滝も作りたいと考えておられます。

熊笹を買った跡地には植林をするための目印が立っていました。今日はそ
こに植える苗木も届いていました。まだまだ健康な森にするには時間と手
間がかかるのです。


ニコルさんはこの豊かな森を使って新しい試みを始められました。

障害を持った子供たちが自然に親しみ、色々なプログラムを体験してもら
うことで障害を乗り越え、フィジカルチャレンジャーとしてこれからの生
活を元気にがんばってもらうことを期待する「ファイブセンスプロジェク
ト」というものです。

実はこのような自然体験学習フィールドはこれまでになかったそうです。 
普段自然に親しむ機会の殆どない障害を持った子供たち。
先日参加した目に障害のある7名のこどもさんたちは、森の中をスタッフ
の方々と歩きまわり、森のふかふかした土壌の感覚に大喜び、鳥の声がす
るとその鳥の大きさ、重さそっくりのデコイをさわりして、バードウォッ
チングを楽しんだとか。

あいにく雨の日だったそうですが、こどもたちは木々に囲まれて大変幸せ
な時間を過ごしたといわれていました。
また、同伴の保護者の方たちも最初は一人で大丈夫かと不安だったそうで
すが、最後は親同士が仲良くなり盛り上がったとか、森の持つ素晴らしい
力が、人々にも感動と喜びを与えてくれたようです。


ニコルさんは今後もこのプロジェクトを続けて生きたいといっておられま
す。
これからはこどもたちだけでなく、体の不自由な老人にも森と触れ合える
ものを作ろうと。
将来の自分のためにも(?)車椅子でも通れる森の道も計画中との事です。

さて、アファンの森の由来は C.W.ニコルさんの故郷ウェールズの「ア
ファン・ゴールド森林公園」から来ています。
炭鉱の跡地、ボタ山が多くあった同地を地元の人たちの粘り強い意志と行
動で見事森を復元されました。
自然の復元は、植物をよみがえらせ、動物たちを招き、人の雇用まで創造
したといいます。それにならった黒姫のアファンの森は2001年故郷の
アファンの森と姉妹の森になりました。

昨年、NHKで放送された「森の中から未来を見る」ではこのアファンの森
が紹介されました。このレポートより詳しくアファンの森について、そし
てニコルさんの生き様について紹介があります。ご覧になられた方も多い
のでは。
画質は悪いですが、家庭用ビデオで撮ったものがあります。必要な方はお
貸しします。 ご連絡下さい。

短い時間ではありましたが、森の持つ力が感じられた気がします。
歌手のさだまさしさんの歌に 「木を植えた男」という歌があります。

「森は水を作り、水は人を育て、なのに人は水を汚しながら生きる。」
「水は流れ流れ、いつか海に届き、海は水を癒しいつか空に帰す。」
中略 「私は木を植えるいつか森を作る。私は木を植える人の心に。」

この歌は、ニコルさんや、松木さんたちの応援歌だと信州の森と青空を
見て感じました。アファンの森はやさしい森です。癒しの森です。大き
なビオトープです。

アファンの森のホームページ:http://www.afannomori.com/




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   ★   2.トンボが逆立ちしたら帰っておいで ★
        

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トンボと自然を考える会 常務理事  杉村 光俊氏



我がトンボ王国のお膝元、具同小学校に中村市初のトンボビオトープが誕
生して早や半年以上経ちました。

既にコウホネやスイレンもきれいな花を咲かせ、トンボ王国最小のトンボ、
コフキヒメイトトンボもみられるようになっているようです。
「ようです」というのは、なぜかその後このビオトープを利用した観察会
指導に招かれることはなく昨年までと同様、子供達は広々としたトンボ王
国にやってきて生き物探しに興じています。

まだまだ自然が豊富にある具同地区の子供達にとっては、箱庭ビオトープ
よりもアメリカザリガニやミドリガメを自由に持ち帰ることのできる広大
なトンボ王国の方が魅力的なのかもしれません。

そこで彼らには別の活用方法を提案したいと考えています。
夏の暑い日、水辺で陣取るトンボは棒くいの上で逆立ちしたり、あるいは
ぶら下がったりして体の受光面積を小さくして体温の上昇を少なくするよ
う工夫することが知られています。

かつて、そのことを知っていた大阪のお母さんは子供達に「トンボが逆立
ちしたら家に帰っておいで」と言ってきたそうです。
子供達がつい遊びに夢中になって日射病などに患らぬよう、時々トンボに
注意しておきなさい、という訳です。

学校ビオトープに逆立ち上手なショウジョウトンボやチョウトンボが来て
くれればしめたもの、学校ビオトープは保健体育の授業にも役立つこと受
け合いです。
パワフルな具同小学校の子供達には、うってつけのビオトープ活用法にな
るかもしれません。






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   ★  3.高校生の環境意識を育て、森の未来を守る   ★
               
     〜「第3回森の聞き書き甲子園」〜を支援します。    
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○ 前号で紹介した 高校生森の聞き書き甲子園 の活動を支援させてい
  ただくことになりました。

支援といってもお金を出すのでなく、当社の社員やグループ企業の方々が
学校にお伺いして、主旨を説明し、チラシをお渡しし、ポスターを掲示さ
せて頂くものです。

各県の教育委員会から学校には告知があるとの事ですが、私たちは草の根
運動で1校ずつ訪問させていただくことにしました。

できるだけ多くの高校生に森の素晴らしさを知ってもらい、森とかかわり
生きてこられた方と触れ合い、日本の伝統を知るきっかけになればとの思
いです。

この活動が、さらに中学校、小学校へと広がり、未来を担う世代が、今の
世代よりももっと多く自然との触れ合える機会を持てたら良いのではと
はじめの一歩を踏み出します。


 

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