[発行日:2004.08.19] vol.7 コラム C.W.ニコル氏 バードウォッチングと水のざわめき、飯島 博さんの環境授業 見学記 他1件
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆[発行日:2004/ 8/19]☆☆
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もくじ 【1】 飯島 博さんの環境授業 見学記
【2】 コラム C.W.ニコル氏
バードウォッチングと水のざわめき
― 五感で森の楽しさを感じよう! −
【3】 日本生態系協会からのおしらせ
第3回学校ビオトープコンクールの報告書できる。
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こんにちは。株式会社トンボ、環境事業企画室の小桐です。
今はオリンピックたけなわ、皆さんも選手の頑張りに感動と興奮を覚え
る日々をお過ごしではないでしょうか。さて、8月中旬を過ぎ、気候も
例年と同じに戻った感がありますが、7月末から8月上旬の西日本の台風
と雨は大変なものでした、台風が去ったと思ったら、雨、そしてまた次
の台風とこの時期としては異例の多さではなかったでしょうか。
今回は、ビオトープを使った教育について、取材記事ややコラムを掲載さ
せて頂きました。
せっかく作ったビオトープをいかに継続し、教育の中に取り入れていくか、
ビオトープに棲む生物を捕まえ、観察し、写生をして対象物の特徴やさま
ざまなつながりが分ってくる観察授業。
楽しい反面、子供たちにとっては写生は結構難しいタスクのようです。
大切なのは自然とのつながりを眼で、肌で、匂いでと五感で感じること。
生物を通して、自分たちとの違いを見つけたり、その生態について理解を
深めたり、自分以外の生き物への理解を深めることが環境教育の第一歩と
いえるのでないでしょうか
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★ 1.飯島 博さんの環境授業 見学記 ★
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このビオトープメルマガのコラムもお願いしているアサザ基金代表の飯島
氏、その豊富な生物、生態系に関する知識と、類まれなる行動力で霞ヶ浦、
北浦を軸にその近隣の環境の復元をしようと精力的に活動されています。
飯島氏が指導された霞ヶ浦近隣の学校ビオトープは既に、113校を超え
ています。小学校はもとより中学校、幼稚園はたまた駅の校内ビオトープ
と霞ヶ浦のまわりのいろんなところでビオトープができ、授業に観察に、
自然の復元にと活用されています。
今回、阿見町立吉原小学校で飯島さんの環境授業を拝見させていただきま
した。
いかに作ったビオトープを利用して、子供たちの興味や関心を育てるかの
あり方について貴重な体験でした、今回はその一部ですがご紹介します。
飯島さんは幼稚園にはそのレベル、小学生にも2年生、3年生、5年生と
それぞれのレベルに応じて授業をしておられます。また、1回でなく、シ
リーズで話をされます。それだけに子供たちも楽しく、そして知らないう
ちに自分たちの住む地域の環境のありかたが分ってきます。
100年構想で霞ヶ浦とその周りの生態系を復元するという考え方が、人
の教育も交えたしっかりしたものだと感じることが出来ました。
今回は2回にわたった向台小学校5年生の授業の模様をレポートします。
<第1回目授業>
アサザの話から始まりました。
ビオトープを作り、生き物が住みやすい場所を作ったね、池にはどんな植
物がいる? そうアサザだね。
アサザは葉が水に浮かぶ植物、花が咲いて、実が出来る。実が熟すと種が
割れる。種子が出来る その種子は水に浮く。そして岸に着いて打ち上げ
られる。
冬は霜が出る。 4月になると葉が出る。5月には葉が増える。
6月には梅雨になる。雨が降ると水位が上昇、水底に根がだんだんと伸びて
いく。
種子が沈んだものは休眠状態。でもまれに 酸素に触れ 太陽光を浴び、寒
さを越すと発芽する。温度にも関係している。
霞ヶ浦の岸はコンクリートになった。 アサザの種はコンクリート壁にあた
るとすべて沈む。このままではアサザは絶滅。
生き物とお話をするには1.どんな暮らしをしているか2.体のつくりを調
べるとどんな棲みか(場所)の3つを調べる必要がある。
それを無視して勝手なことをするとすると生き物は絶滅してしまう。
人間も同じ事をすると相手が分る。
以下断面図を描きながら分りやすく解説
めだかの話。日本中で絶滅しそう。めだか以外にもいる。トキがそうだ。昔
は田んぼにいてどこにでも見られた。佐渡島にしかいない。
メダカも絶滅しそう。体のつくり、暮らし、住処を考えてみよう。
メダカは どこで見るか ビオトープ、田んぼや用水路。浅いところにいる。
深いところでは大きな魚に食べられる。大きくなると浅いところに棲めない。
だから大きくならない。ちいさいまま。メダカの学校を卒業しない。
卵を産む。卵の観察をしよう。卵には毛が生えている。水中に葉のある水草
にくっつきやすいように。
めだかは水が汚れると死ぬというがどうして困るのか?太陽の光が来なくな
ると、水草が枯れる。そうすると卵が生めなくなる。
メダカのすみ場は今どうなっているか コンクリートの壁では住めない。
冬はメダカはどうするか水位が減る。冬になると底にいてじっとしている。
ビオトープに冬行っても見れない。底にいる、表面に氷がはっても大丈夫。
田んぼにいるといいが冬は水がなくなるので秋になるとメダカは雨が降ると
田んぼの外に出て行く。昔は水を抜く時に出て行っていた。田んぼのあぜが
コンクリートになると行き来できない。道がなくなった。生き物の道を守ら
ないと生きていけない。
カエルの話。(飯島さんはよくカッパの絵を黒板に描く。)なぜカッパに近
いか カエルは体がびしょぬれ、体から水が蒸発する。だからたくさん水を
飲む おなかは白い。白い部分のおなかから水を吸い込む。口から飲まない。
カッパは頭の皿から水を飲む。
カエルはいつも池の中にはいない。カエルには泳ぎが下手なカエルもいる。
ヒキガエル。
子供を生むときだけ池にいる。林の落ち葉の中にヒキガエルはいる。湿って
いるところにいて地面の水分をおなかから吸う。
卵がかえっておたまじゃくしになる。それがカエルになって森に帰る。湿った
地面に沿って動く。カエルが動ける距離 500mから1000m=1ケロメ
ートル。
途中に道路が出来るとどうなる。水分がなくなるのでミイラになる。コンクリ
ートの溝が出来ると落ちると爪はあるが吸盤がないので落ちると壁を上れない。
アカガエルも同じ。殆どのカエルは吸盤がない。だから死ぬ。
アマガエルだけが生き延びやすい。
東京ダルマガエルが学校のビオトープに居る。どこから来たのか?下の池から
森を通って坂を上ってビオトープに来た。水が坂道から流れ出していたので水
を吸う事が出来た。
谷の下にある田を谷津田という。これが沼に繋がっている。120年前の地図
にはいたるところに谷津田がある。
トンボにも道がある。水の道が生き物の道。蛍もしかり。牛久沼へと森からど
んどん水が流れれば、水の道を増やして行けば生き物は生きて行ける。
夏休みに生き物を捕まえてどこに居たかを地図を作ると生き物地図が出来る。
人間の地図はあるが生き物の地図はない。みんなで作ってみたらよいのでは
夏休みの課題で考えてみたら 今ちょうど考えている時期。
<第2回目授業>
トンボの道。人間の地図にはトンボの道は書いていない。
シオカラトンボ メスとオスの絵を見せる。 卵をどうやって産むか 尻尾で
水面をたたく。そして卵を産む。水面に草がぼうぼう生えると産まない。あま
り草がないところに生む。だからプールに居る。アキアカネも同じ産み方。
草が生えているところで餌を捕って、卵を産むときに池に来る。
シオカラトンボにそっくりのトンボ。オオシオカラトンボ。
一緒に居るとケンカして強い生き物だけが生きるように思うがそうではない、
自然はうまく出来ている。
オオシオカラトンボは日陰が好き、シオカラトンボと同じようにして卵を産む。
普段は林の中に居る。だから同じ池を使ってもケンカしない。日陰に居るから
ギンヤンマはお尻で水をたたかずにアサザのような葉に卵を産みつける。普段
は草原に居る。クロスジギンヤンマ 木陰の水草に卵を産む。普段は林の中に
居る。両方のギンヤンマが学校のビオトープに来ている。
オオアオイトトンボのヤゴがビオトープで見つかった。
10−11月ころに、池の上の張り出した木の枝に穴を開けて卵を産む。ヤゴは糸
を出して池の中に入る。
どうやってビオトープに色々なトンボたちがやってきたのか
イトトンボはどれくらい飛べるか 高く飛べないので、低く飛ぶので草の道
が必要。1.2−1.5kmくらい
牛久沼から学校までどれくらいの距離、草の道はあるかな
ギンヤンマは4km飛ぶ、シオカラトンボは2km飛べる。
ハグロトンボ ひらひら飛ぶ 卵を水草の葉に産む。川でしか卵を産まない、
流れがあるところ。どこで見たか 日陰が好き、日が当たると暑くなるので林
がないと移動できない。1.5kmしか飛べない。流れている水が必要。水草に
卵を産む。
オニヤンマも水の流れがあるところに卵を産む。森の端の湧き水のあるところ
で尻尾をたてて、水に差し込んで砂の中に産む。谷津田で産む。
鳥にも道がある。
ホトトギス この声を聞いたことがある人 キョキョキョキョッ
鶯がまとまっていないとホトトギスは暮らしていけない。なぜか 鶯の巣に卵
を産む。
牛久沼の近所には谷があり、谷の横には森がある。森からは湧き水が出て牛久
沼に流れ込む。森のそばに谷津田がある。鶯の巣が10−20無いとホトトギスは
縄張りができない。
鶯の巣の周りを飛んでホトトギスが鳴いて縄張りを示す。それがホトトギスの
道。
林と森が繋がっていないとホトトギスは暮らせない。飛びながら鳴く。大きな
声で鳴かないと縄張りが知らせれない。夏は日本に居るが、冬は東南アジアへ
行く。
万葉集に一番載っているのがホトトギズ、カッコウと同じ仲間。
鶯がキョキョキョキョキョと鳴くときは警戒しろの声、ホトトギズが誰も居な
いときに卵を産む。ホトトギスの雛は早く大きくなるので背中に鶯の雛を載せ
て下に落とす。そうなるとその巣には鶯の雛は育たない。
鳥は森を伝ってやって来る。森が離れて休める場所が無いと鳥は移動できなく
なる。
ムナグロ 5月に田んぼに来る。冬はフィリピン、沖縄に住んでいる。さんご礁
や日向で育ち、日本に来る。茨城の田んぼに居た後、秋田を経て、シベリアに
行き、ツンドラ、北極へ行って巣を作る。雛を育てる。1万km移動。夏の終わ
りにはまた移動。9月に日本に来る 北極は敵が居ない、虫が多い。生き物の道。
生き物の道で地球は覆われている。これからも勉強していこう。
夏休みに見た生き物を見た日と場所を書いておこう。昔の生き物のことをお年
寄りに聞いても良い。生き物のことで分らないことがあったら質問して下さい。
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★ 2.バードウォッチングと水のざわめき ★
― 五感で森の楽しさを感じよう! −
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C.W.ニコル氏
アファンの森にさまざまなゲストが来ていただくことは私の切なる夢でし
た。
今年から私はアファンの森を使った新しい試みを始めたのです。
それは何かというと、眼が不自由なゆえに、不当な扱いを受けたり、ある
いはそれゆえに色々な野外での活動をあきらめていた子供やその保護者の
方々に、アファンの森に来ていただいて森の素晴らしさを五感で体験して
いただくことでした。
どうしたら、彼らに喜んでもらえるのかを考え、何人かの専門家の方々に
意見を伺いました。
「どうしたら、子供たちは、森を体験し、森を好きになってくれるのだろ
うか」
すると専門家の方々は
「それは、絶対バードウォッチングだよ、ニコルさん」と教えてください
ました。
どうやってバードウォッチングをしてもらうのか? これはまさに私たち
にとって挑戦でした。
もちろん一番目に考えたのは、子供達を鳥の鳴き声が聞こえる場所に連れ
て行き、その名前や普段その鳥が食べているものや巣の場所を教える事で
す。そしてこのことは成功しました。
子供たちには鳴き声だけでなく、その鳥の形や大きさ、触感までも伝えた
い、そう考え、木彫りのデコイを利用しました。これにはまったく助けら
れました。
何せ、本物の鳥と同じサイズ、形、重さが伝えられるのですから。
あるガイドは山鳥の尾の羽から、梟の大きく、柔らかく、軽い羽まで、色
んな鳥のコレクションを持って来ました。
また、子供達が水の流れに関心を示し、自然のままの川の流れと、コンク
リートで固められた、静かでほとんど音のしない死んだ川の、音の違いを
聞き分けていたことを発見したんです。
「自然の川のにぎやかな音を聞いてごらん。この音は、川の中に棲む多く
の生き物達の、生きている音なんだよ。」私は子供達にそう教えました。
子供達はみんな、冷たく、流れのある、にぎやかな川との触れ合いを楽し
み、そしてその事が彼らを輝かせました。
1960年代にはじめて日本を訪れたとき、川遊びの出来る数多くのきれいで
透明な川がある日本は、夏の子供にとっては天国だと感じました。
でもそれから時が経ち、どれだけの川が失われていったことでしょう?
どれだけ多くの都会の子供達が川の生きている声(音)を聞くことが出来
なくなったでしょう?
素足にあふれんばかりの冷たくきれいな水を感じることが出来なくなった
のでしょう?
今の子供たちは、ファミコン画面の見すぎです。多くの時間をそれに浪費
しており、自然のすばらしさを感じるための感覚を失い、あるいは心が傷
ついてしまっています、
どれほどの子供達が自分の「目」以外の感覚で、鳥を「ウォッチ」したい
と思い焦がれているでしょうか?
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★ 3.日本生態系協会からのおしらせ ★
第3回学校ビオトープコンクールの報告書できる。
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今年2月に行われた第3回学校ビオトープコンクールの報告書が完成しまし
た。
この報告書は財)宝くじ協会からの平成16年度分助成金により行われた
との事です。
今回の報告書はコンクールの報告と学校ビオトープに関する小冊子の形式
になっています。しかも発表会と表彰式の模様がDVDに収録されています。
資金不足の中で開催したコンクールを少しでも多くの方に知っていただくた
めこのような形式になっています。
日本においても、環境の重要性が認識され、環境教育の方向性が模索される
中、学校ビオトープは優れた教材としてますます注目を集め、全国の学校で
取り組まれています。
今年度もコンクールの問い合わせが多く、関心の高さを事務局としては感じ
ておられるということです。
事務局では今後も学校ビオトープの更なる普及を目指し、情報提供やコーデ
ィネイトを進めていかれるとの事です。
この報告書についてのお問い合わせは
財)日本生態系協会 担当 佐山 義則 様まで
メールアドレス: y_sayama@ecosys.or.jp
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