[発行日:2004.10.18] vol.8 第3回 コラム 飯島 博氏 ビオトープは未来の社会を考えるための窓口、学校ビオトープ講演会 IN 高松よりの報告

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆[発行日:2004/10/18]☆☆
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  もくじ 【1】 第3回 学校ビオトープ講演会 IN 高松
          よりの報告
     
      【2】 コラム 飯島 博氏
          ビオトープは未来の社会を考えるための窓口
          
         
      【3】 ビオトープに関する本のご紹介
         
             里山再興と環境NPO
         − トンボ公園づくりの現場から −
          
          
            
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こんにちは。株式会社トンボ、環境事業企画室の小桐です。
10月も半ばを過ぎ、、秋の気配が強まる今日この頃です。
今回は、ビオトープの継続について、有効なお話を聞くことが出来ました
ので掲載させて頂きました。
ビオトープとは自然の少ない都市の子供たちに疑似的な体験をさせる施設
としては有効だが、実際の生態系を壊すこともあるのではないか、地域に
棲む生物に根ざした、地域環境の復元こそがビオトープではないかそれは
そうだが、自然の生物と自分たちのつながりなどを考えたり、触れたりす
る実体験の場としては学校ビオトープの果たす役割は大きいのではないか
などの議論もあると思います。
この議論は、どちらも正しく思います。ただ、ビオトープを通して、環境
意識が1人でも多くの子供たちや大人に伝われば良いな、と別の角度から
考えてみたりもします。
持続的な環境改善が図られる社会へすこしずつでも進んでいければという
思いで今月のメルマガをお届けします。
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   ★    1.第3回 全国学校ビオトープ講演会    ★    
          IN 高松よりの報告          
          
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去る8月21日に香川県 高松市において第3回学校ビオトープ講演会が開
催されました。そのなかで実例に基づくビオトープ継続の成功ポイント
や失敗例を通しての教訓など貴重なお話が聞けましたのでご紹介します。
NPO法人 高松まちづくり協議会理事の柘植 敏秀から発表がありました。
そもそも高松まちづくり協議会がビオトープ作りの支援を始めたきっかけ
はTV番組「素敵な宇宙船地球号」に影響されたとのことです。
 
これまでに通算11学校が取り組んだが、今は2−3の学校で実質運営され
ているのみという現状で、継続できなかった学校もしくは方向が変わった
事例についての理由をお聞きしました。
失敗事例
年末にPTA予算で突貫工事で作ってもらったビオトープ。PTA,校長が交替
するとビオトープへの愛着もなくなり自然消滅になった事例あり。
校長の意欲で作ったビオトープ。クラブ活動に利用されていたが、作った
あとのメンテナンス大変で、毎年池の浚渫費5−6万円が負担となってい
る。
周りの自然が豊かな地区にビオトープ。地域の渓流を生かしたビオトープ
ならよかっ たが、地域性を無視したビオトープになってしまった。
ライオンズクラブの補助で作ったビオトープ、いつのまにか蛍の養殖場と
化している。
このような中、しっかりとした取り組みで実践されている学校もあり、総
合的にどのようにしたらビオトープに取り組み、継続、発展できるかにつ
いてまとめておられますので紹介します。
中心となって活躍されているのは高松市築地小学校PTA会長 大熊和史さん
です。高松市の市街の中心部にある同校、ビオトープづくりはH15.2月の工
事着手の前年からです。近所での蛍観察やカブトムシの家など以前から生
き物に関しては熱心な先生がおられて取り組まれていました。
ビオトープへの取り組みが決まったあとは「ビオトープ推進員会」を作り、
他校の調査に始まり、基本の考え方、ビオトープを使った学習のあり方、
そして管理運営のあり方、年間スケジュールなどを検討・作成されました。
実際の建設には子どもたち、保護者、地域の方々が一緒に協力し行いまし
た。
そして完成後は地域との触れ合いをビオトープまつりや地域敬老会、ふれあ
いフェスティバルにおいて学習の成果の発表の形としても利用されています。
異色なのはPTAのビオトープへのかかり方、子供を通しての親への連絡だけ
でなく親への講習を通じてビオトープへ関われるようにしています。
親のビオトープへの関りのために3つのコースを用意。ホタルコース、ニッ
ポンバラタナゴケース、メンテナンスコースで興味のある分野で活躍できる
ようにされています。
異色の2つ目は子供たちの自然体験システム
1.学校を離れた自然の中での始業式
2.新1年生への入学式でのビオトープガイダンス
3.夏には高松近郊の島で児童たちだけのサバイバルキャンプ。自然のあり
  がたさを体験させるイベントも実施されています。
PTAは子供たちと同じく卒業しますが、それでも地域の住民として今後も関わ
っていけるようにと地域を含めた委員会が存在しています。地域の方々には
これからさらに強く関わっていって頂くとのことです。
残念ながら、児童人口が少なくなった築地小学校、廃校が決定するかもしれな
いと大熊さんのお話。学校の存続はどうすることも出来ませんが、ビオトープ
が地域の自然の触れ合いの場として存続して欲しいと思いました。

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   ★ 2.コラム                  ★
     ビオトープは未来の社会を考えるための窓口 
        
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   NPO法人アサザ基金 代表理事   飯島 博氏
ビオトープというとトンボやカエルの住める池を作ったり、カブトムシや野鳥
がやって来る林を作ったりということに関心が集まりがちですが、わたしにと
ってビオトープ作りは作りは社会システムづくりの一部として捉えています。
つまり、個々のビオトープは自己完結しないということです。個々のビオトー
プに関わることで、子ども達や地域住民が自然と共存するための社会システム
づくりに参加することが、本当の目標であると考えています。 
アサザプロジェクトでは霞ヶ浦に自然を再生するために、流域の110を越え
る小学校にビオトープを作ってきました。これらのビオトープも霞ヶ浦流域に
自然と共存する循環型社会を作り上げていくためのシステムの一部です。
アサザプロジェクトでは子ども達と一緒に校庭にトンボ池ビオトープを作りま
すが、事前に必ず授業を行って子ども達とビオトープ作りの目的を確認します。
たとえば、ビオトープに入れて良い生き物は学区内に生息しているメダカとタ
ニシだけという約束を子ども達とします。
それ以外のトンボやカエルなどの生物は自分でビオトープを見つけてやって来
るので、じっと待つことにしましょう。
子ども達は事前に教室で生き物の体のつくりや暮らし、住みかについて勉強し
ていますので、生き物の目になってビオトープを設計して作ります。生き物の
立場で作ったビオトープには、必ず生き物が集まって来ます。集まって来た生
き物を子ども達が観察して記録していきます。
カエルやトンボは、どこからどうやってビオトープにやって来たのだろうか。
みんなで考えてみよう。ここからがビオトープ学習の本番です。その生き物は
森林に住むタイプかな、草原に住むタイプかな、田んぼに住むタイプかな・?
それぞれの生き物はどのくらい移動できそうかな?移動するにはどんな条件が
必要かな?学校の周りにそれらの生き物たちが住めそうな場所は本当にあるの
かな?地図を見て実際に探しに行ってみよう。子ども達の視野がビオトープを
拠点に地域に広がっていきます。
この学習の目標は、地域でもっとも弱い生き物が安心してビオトープにやって
来られる環境を学区内にどうやって作るかを提案することです。野生の生き物
の立場や視点を持って地域を見直してみるという学習は、自分だけの立場や視
点で見ていた時には見落としていた様々な環境要素や課題、問題を見えるよう
にしてくれます。他者の身になって地域を見直すこと。しかも、もっとも弱い
立場の生物に基準を置いて、地域作りを考えるという学習は、弱い立場の人間
への視点で地域コミュニティを見直すという学習にも発展させることが可能で
す。
つまり、ビオトープから始まった学習は、環境から福祉、さらには防災など、
町づくりの骨格に関わる学習へと発展させていくことも出来るのです。ビオト
ープを窓口に未来の社会を展望することは、まさに総合的学習の本来の目標に
も合致することでしょう。
アサザプロジェクトが行っているビオトープを活かした総合的学習は、このよ
うな理念に基づいて進められています。
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   ★     3. ビオトープに関する本のご紹介     ★
               
      里山再興と環境NPO
         − トンボ公園づくりの現場から − 
      著者 新井 裕氏    信山社サイテック    
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埼玉県 寄居町に在住され、平成元年に寄居町にトンボ公園を作る会を設
立し、寄居町の自然保全活動に取り組んでいらっしゃいます。
平成11年に活動に専念されるためにNPO法人むさしの里山研究会を設立、
現在代表を務めておられます。
この著ではこれまでとりくんでこられた里山再興における数々の取り組み
の実績を紹介されており、大変参考になります。また、単なる成功本でな
く、現在NPOとして活動される中での問題点や課題が提起されています。
今後、各方面の方々と連携をとって課題を解決していきたいとされていま
す。ビオトープづくりだけでなく、いかに維持継続していくか、参加者の
輪を広げていくかなど解決方向の示唆もあり、離れていても仲間がいるん
だと勇気づけられた本でもあります。
 
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