[発行日:2007.01.24] vol.22 エコキャンパス訪問紀 フェリス女学院大学 未来をつくる 乙女達の環境活動 他2件

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┃     QQ     【スクールビオトープ メールマガジン】
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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2007.1.24 ━★

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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。新年もあけて早24日と
なりました。今年は暖冬の予報どおり、暖かい冬が続いていますが、そ
の分、各地で様々な影響がでています。また、鳥インフルエンザの広が
りも懸念されます。知らぬ間に両生類の病気が広がり、脅威となってお
り、世界的な監視が必要な状況です。(メルマガの最後に掲載していま
す。)
人間が作った社会は境界線がありますが、自然の中ではその境目は時とし
て意味を持ちません。日々の生活の中にも、新しい視点を持つことが求
められているのかも知れません。


もくじ 【1】C.W.ニコル氏
       学習の場としての森林
                
    【2】エコキャンパス訪問紀 フェリス女学院大学
        未来をつくる 乙女達の環境活動

    【3】カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言について  
        人と自然の研究所通信より

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        【1】 C.W.ニコル氏
             学習の場としての森林

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学習の場としての森林

長野黒姫にある私たちの小さな森(アファンの森)は、ウエールズにある
アファン森林公園と双子の関係だ。2002年に姉妹森林締結をした。
20年か少しその前、ウエールズに行った時の話しだが、私は森の中で授
業を受ける子供達を見た。それは私の心を強く動かし、その後日本で特別
な問題を抱えた子供達を対象にした森の活動「心の森プロジェクト」を作
る原動力になった。、森の多様性そして生き物たちの活力は彼らの心を開
き、新しいことへの関心やいのちの尊さを教える手助けになるのではない
かと。
昨年私がウエールズを訪れた際にチーフレンジャーのリチャード・ワグス
タフ氏とこの事について語りあった。彼は私に学校をずる休みする生徒の
ためのプロジェクトについて話をしてくれた、日本にも不登校の生徒はた
くさんいる。しかしながら、イギリスの法律は大変厳しく、子供達は学校
に行かなければならない。彼らが学校へ行かなければ、親から引き離され
て、施設に入れられることになる。殆どの子供はこれを望まない。

森林公園では最も扱いにくい怠け者の生徒達向けに2週間のプログラムを
立ち上げた。彼らは絶対これに参加しなければならない。最初、子供達は
「ふん、あんたなんか俺になにも教えることなんてできないんだ」という
態度で森に来た。その日のうちか少なくとも翌日にはそんな態度は吹き飛
んだ。それは、レンジャーが学校の先生が教えるようなやり方をせず、楽
しさと興奮を与えてくれる存在だとわかったからだ。
子供達は、外の仕事を手伝うことで、森の自然だけでなく、言葉の真の意
味や、与えられた時間内に目的地まで移動をするのに地図をどのように見
るかなど、今まで経験したことの無いことを学ぶ。また、このプログラム
は、国語や算数、歴史など勉強できる仕掛けになっている。

彼らは地方の歴史を学び、どこに昔の砦があり、戦いがあったかや、使わ
れていた武器の種類も学ぶ。それから、森の中のものを使い様々な計算を
する。仕事の後はキャンプファイヤーを囲み、お茶をいれ、パンやソーセ
ージを焼く。そしてレンジャー達と心の通う話をするのだ。
ある11歳くらいの小さな少年、彼は怠けの常習者で強情だったが、レンジ
ャーにこう話した。これまで悪く言われ続けて過ごしてきた学校の時間よ
りも、この2週間の学びの方がはるかに多くの事を学んだ。彼はこの森の
学校の後で、不本意だったけど普通の学校に戻った。そして、勉強に熱中
できる生徒に変ったと報告がある。私はほんの数日、森の中で一緒に過ご
すだけだったが、彼らの姿は、子供が自然の中で過ごす事の大切さを改め
て教えてくれた。          
                     2007年1月9日 C.W.ニコル



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    【2】エコキャンパス訪問紀 フェリス女学院大学
         未来をつくる 乙女達の環境活動

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「あたらさん」とは、「もったいない」の古語で、鹿児島や沖縄では今で
も残っている言葉だそうですが、雑誌暮しの手帖の別冊「あたらさん」に
も紹介されたフェリス女学院大学の総合的な環境活動。エコキャンパスの
取組みについて紹介します。

文部科学省が推進する「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(通称
「現代GP(Good Practice)」)において、フェリス女学院大学は「地球
温暖化抑制に向けた環境教育拠点の形成−地域に開かれたエコキャンパス
と環境情報発信による地域連携−」というテーマで「優れた取組」(Good
Practice)と選定されました。
同校取材のきっかけは昨年10月横浜で開かれた第1回3R推進関東大会
という環境省が主催したエコイベント。環境への取り組みの展示を見て、
取材したいと思っていたところ、12月には同校主催の「国際環境シンポ
ジウム」が行われその意を強くしました。同シンポジウムでは気象の世界
的権威である真鍋淑郎先生の温暖化のメカニズムの解説、南太平洋の島嶼
国キリバス共和国における温暖化による国土侵食の報告やエコキャンパス
の取り組みなど環境に関する貴重な話を聞くことが出来ました。これも現
代GPの実践です。

当日応対いただのは、国際交流学部 佐藤助教授とエコキャンパス研究会
の会長 濱田倫子さん。(お二人は12月のシンポジウムでエコキャンパ
スの取組み発表) 壁面緑化、雨水を利用した冷却、地下熱を利用した冷
暖房への活用(最大5℃の緩和)、残渣の堆肥化、ビオトープづくり、エコ
キャンパス研究会による地域とのコミュニケーション、環境教育などの説
明をしていただきました。

■壁面緑化について 
2005年にできた体育館、併設のサークル棟の南壁面にトケイソウが一
面に生い茂っている。この植物が一番早く成長するとの事で、このほかア
イビーやハゴロモジャスミン、ノウゼンカズラ、テリハノイバラなど開花
時期が少し違う植物も植えられている。壁面直接だと根が生えて建物が傷
むので、金網と椰子殻から作ったマットに種を植え付けてありました。
■屋上ビオトープについて
3箇所あるが、拝見したのは、サークル棟の屋上ビオトープ。パーライト
30cm、その上に近所の土を10cm敷つめたビオトープ。池があり、
トンボが来やすい環境になっています。この屋上には土、木製ウッドデッ
キの部分に温度計を設置し屋上緑化により、どれくらいの温度引き下げ効
果があるかを調査しています。傍には太陽光発電パネルが設置され、発電
が行われています。土壌水分計があり、ある程度乾くとその電気を使い潅
水する仕組みもあります。
■ビオトープについて
2002年秋から着工し、約1年かけてできたビオトープ。約100uの
正方形に近い土地に傾斜をつけ、上下の池を流水で結んでいます。基本的
には水は循環くみ上げ式。当初はトンボ池を目指していたが、近くのNP
Oの方に蛍を育てる方がおられ、そのアドバイスもあり、今はゲンジボタ
ルとヘイケボタルを流水域と下池の田んぼ地で飼っているとの事。初夏に
飛ぶ蛍を見てみたいというビオトープに関わるエコキャンパス研究会(通
称エコキャン)の学生達の要望も強かったようです。生物調査と併せて草
刈という地道な活動を続けています。
■エコキャンパス研究会の活動
約30名の部員がいるサークル。7代目会長の濱田倫子さんは2年生。夏
休みは近くの小学生の親子を対象に毎年環境授業を行っています。ビオト
ープを使っての観察会やソーラークッカー使っての料理体験、自転車のダ
イナモとペットボトルを使ってのミニ風力発電体験などの環境授業それに
エコキャンパスツアーガイドなどを実施しています。環境シンポジウムも
このメンバーが運営をしていました。
■フェリス女学院大学の環境リーダー 佐藤助教授
今年で赴任3年目を迎える。現在環境担当教官が1名であるために孤軍奮
闘。環境に関する講義やゼミ、研究などとともにエコキャンパス研究会の
指導もされています。また、佐藤助教授は環境に対する意識が大変強く、
キリバスの国土侵食の話を聞いてからは、家庭でも暖房を一切つけず、厚
着で生活しているとの事。エコは身を切らないといけないという言行一致
の人です。
■残渣の堆肥化
食堂で出る生ごみ(25kg/日)を堆肥化。生ごみ乾燥機があり、乾燥
したものを集積し、群馬県の堆肥工場へ送り、コンポスト化。販売も可能
だが会計処理が面倒なため、現在は無料で配布中。その名も「フェリス3
00」由来は300gの重さだからとか。
■その他のエコ施設
・赤い風車による風力発電 旧校舎にて水のくみ上げに使った赤い風車を
105年ぶりに復活させ、新キャンパスで環境問題に取り組むシンボルと
して利用。
・エコビジョン 風力発電や太陽光発電などの発電状況の刻々の変化が分
るモニターが設置されています。太陽熱温水器についての状況も映し出さ
れます。
■エコ広報活動
「エコキャンパスの歩み」「エコキャンパスマップ」「エコキャンパスツ
アー」などの印刷物があり、きちんと広報できるようになっています。
同校の素晴らしい環境への取り組みは フェリス女学院大学 エコキャン
パスプロジェクトの HPに詳しく載っていますので是非ご覧ください。

     http://www.ferris.ac.jp/kankyo/index.html



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   【3】カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言について  
          人と自然の研究所通信より

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「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」文です。末尾に各学会、団体等
のリンク先が付いています。学会のページに解説書、一般向けQ&Aな
ど掲載されておりますので参照下さい。

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                    2007年1月13日

     カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言

共同署名団体
爬虫類と両生類の臨床と病理のための研究会、日本野生動物医学会、日本
生態学会・自然保護専門委員会、日本爬虫両棲類学会、野生動物救護獣医
師協会、日本動物園水族館協会、野生生物保全繁殖専門家グループ日本委
員会(CBSG Japan)、世界自然保護基金ジャパン、日本自然保護協会、日本
野鳥の会、生物多様性JAPAN、日本鳥類保護連盟、山階鳥類研究所、
日本両生類研究会、オオサンショウウオの会、NPO法人どうぶつたちの病


世界の両生類(カエル、サンショウウオ、イモリなど) 5,743種のうち、
120種が 1980年以降に絶滅したと推測され、さらに1,856種(32%)は絶
滅のおそれがあるとされています。このような急激な絶滅を加速させてい
る原因の一つとして、1998年に発見された「ツボカビ症(chytridiomycosis
)」があげられています。現在、ツボカビはIUCN(国際自然保護連合)によ
る外来生物ワースト100にもリストされ、世界的な監視が必要とされて
いる感染症です。
ツボカビ症は、真菌の一種であるBatracochytrium dendrobatidisによっ
て引き起こされ、致死率が高く(90%以上)伝播力が強いために世界中で
猛威をふるい、すでにオーストラリアや中米の両生類が壊滅的な打撃を受
けています。
また、野外における防除方法は、確立されていません。野外のカエルに流
行した場合、根絶は不可能です。
このため、オーストラリアでは輸出入検疫を強化するなど、国をあげて対
策に取り組んでいるところです。
 この感染症が原因でカエルの個体数が減少したり、絶滅に至る可能性が
あります。多くのカエル類が減少すると捕食していた昆虫などの増加、カ
エル類を主な餌としていた上位の捕食者(鳥類やヘビなど)への影響からわ
が国固有の生態系全体が破壊されてしまう恐れがあります。
ツボカビ症が確認されていないのは、これまでアジア地域のみとされて
きました。残念ながら、国内の飼育中のカエルから2006年12月25日にツボ
カビが検出され、初めてわが国への侵入が確認されてしまいました。

私たち共同署名団体は、この事実を重く受け止め、緊急事態を宣言いた
します。わが国に生息する両生類と生物多様性を保全するため、私たち専
門家は速やかに行動計画を策定し、可能な限りの努力を尽くす所存です。
同時に、それぞれの主体に対し、責任ある行動と以下の提案の実施を期待
します。

国民の皆様へ

地球規模で両生類が絶滅の危機にあることを理解し、むやみに野生の両生
類をペットとして飼育することは慎んでください。なお、ツボカビは、両
生類以外には、人を含めた哺乳類、鳥類、爬虫類および魚類には感染した
という報告はありませんので安心してください。
 すでに飼育している場合、飼育中の個体に異変があれば、すみやかに動
物病院や専門の研究機関へ連絡をしてください。ツボカビは、水中を浮遊
するため、水の管理が最も重要です。死亡したカエルを飼育していた水槽
や水は感染源となります。これらの汚水などを排水口や野外に排水するこ
とは、禁物です。当然のことですが、飼育している個体を野外に放つこと
や死亡した個体を野外に投棄することは絶対にやめてください。飼育中の
個体に異変があった場合には、野外の両生類との接触を避けてください。

動物輸入および販売業者の皆様へ

取り扱っている個体に異変が見られた場合は、すみやかに動物病院や専門
の研究機関へ連絡をしてください。もし、輸入先の国がツボカビ症の汚染
地域である場合には、輸入個体が病原体に汚染していないことを確認して
ください。また、販売を目的とする採集は、控えてください。

大学、研究機関、動物園、水族館の皆様へ

両生類を取り扱っている施設では、検疫体制を強化し、必要に応じて予防
措置を講じてください。感染が疑われる場合には、すみやかに専門の研究
機関に連絡してください。また、ツボカビ症についての正確な情報の周知
に努めてください。

マスコミの皆様へ

地球規模で両生類が絶滅の危機に瀕していること、ツボカビ症による深刻
な影響が世界各地で広がり国際的な共同行動が必要であること、すでにわ
が国にツボカビ症が侵入し、放置すれば取り返しがつかなくなるおそれが
あることなど、メディアを通じて正しい知識を広く国民へ伝えてください。

関係省庁の皆様へ

ツボカビ症の侵入により、わが国の生物多様性に取り返しのつかない影響
をおよぼすおそれがあることから、実態調査、検疫の強化、販売・流通の
監視、検査体制の確立等、すみやかな対策の実施や法制度の見直しを行っ
てください。

自然観察や野外調査を行なっている皆様へ

同時に多数の両生類が死んでいた場合は、すみやかに動物病院や専門の研
究機関へ連絡をしてください。不必要な生体の採集・持ち帰りは控えてく
ださい。また、ツボカビ症が流行している国でトレッキングに使った靴は、
靴底に付いた土を良く洗ってから使って下さい。

関連情報参照ホームページ
 
本件に関する詳細な情報(ツボカビ対策解説書、Q&A等)は、次のホーム
ページに掲載されております。

日本獣医病理学会/日本獣医病理学専門家協会
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/byouri/JSVPJCVP/index.html
(社)日本獣医学会
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/index.html
麻布大学 
http://www.azabu-u.ac.jp/
WWFジャパン
http://www.wwf.or.jp/chyt2007/



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┃        〒700-0985
┃        岡山市厚生町2-2-9
┃        Tel 086-232-0368 Fax 086-223-6680

┃   □ URL:http://www.tombow.gr.jp/eco_project/

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