[発行日:2007.01.25] vol.22 コラム C.W.ニコル氏 森、里山 そして教育 他2件

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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2008. 1.25 ━★


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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。2008年最初のメールマ
ガジンです。今年は洞爺湖サミットが開催されます。温暖化とともにこれか
ら重要となるのは生物多様性。そのどちらの解決にも基礎となるのが自然環
境学習、体験であると考えます。今年も様々な取材をとおして皆様に情報を
お伝えしたいと考えます。





   もくじ 【1】コラム C.W.ニコル氏
           森、里山 そして教育


       【2】NPO法人共存の森ネットワーク設立
          記念行事「森の名手・名人フォーラム」報告


       【3】書籍紹介 マザーツリー 
           − 母なる樹の物語 −


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          【1】コラム C.W.ニコル氏
              森、里山 そして教育


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私たちの遺伝子そして、環境が種、民族あるいは個人としての生存を
大部分において決定づけてきたように、私達の言語は文化に大きな影響を与
えてきた。子ども達は人々の名前、他の生き物の名前や彼らの周りにあるも
のの名前を学ぶ。
日本はどんなヨーロッパの国々よりも草花、木、昆虫、きのこなどの種類が
はるかに多く、優れた自然の生物多様性がある。そしてそれらのすべてに名
前がつけられ、年月を経ても受け継がれてきた。

 しかしながら、現代の子ども達のどれくらいが日本にある生物たちの名前
を言えるだろうか?殆どの子が漫画・アニメの登場人物の名前をはるかに多
く言えるだろう。これは未来の日本文化にとって重大な示唆を与える悲しい
ことである。

 地球の気候変動に焦点が当たったお蔭で、日本の学校の生徒達は炭素固定
をする森の役割についてほんの少しだけ学び始めた。これは、スタートであ
ってまだ十分とは言えない。

 私は、どの学校にも学べる里山や森を持って欲しいと思う。そこでは、暗
記だけでなく、遊びや活動を通して、子ども達が自分達の周りにあるものの
名前を覚えることができる。 
このことを通して、基本的な日本語の能力が豊かになると思う。森での学習
を経て、彼らは地域の歴史を知り、始めは国の歴史についてそれから世界の
歴史へとどのようにそれらが繋がっているかを学ぶことが出来る。

木々の中で、あなた方は数学の様な教科を学ぶことが出来る。
100?の区画を定める。これは、4本の杭と三角定規、10mの紐を使っ
て簡単に作る事が出来る。エリア内のすべての木の数を数える。樹種を学ん
だり、エリア内の樹種の存在をパーセント計算したりする。
林地内の100区画を調査するために一クラス30人を3つに分けて、1ha
すべてを算定するようにする。調査を行い、データを基に編集したり、比較
したりする。
 あなた方はどのように木が成長するか、どのように生殖するか、どのよう
に死んでいくか、朽ちて、新しい命をどのように生むかを学ぶことで生物学
だけでなく、化学と物理学を学習することができる。
学習のために森の中からサンプルを持ち帰りなさい、それは学校の予算に左
右されるが、大変簡単なものから高度に洗練されたものまでの実験装置を使
う勉強になります。

子ども達は先生以外に森に詳しい地域の人たちからも学ぶことができる。私
達と一緒に活動する松木さんは大学には行っていないけれど、私が会ったど
んな大学の教授達よりも森のことを知っている。彼は子ども達に語って聞か
せる事が大変好きで、若い人たちにはさらにだ。
 健康な森にいると、人々の身体と心が元気になる。森は知識を吸収する手
助けをするのだ。子ども達は将来のために、里山や森の管理をする多彩な仕
事を通して、何かを良くすることの感覚を身につける事ができる。
また、彼らは基本的な道具の使い方、個人やグループの安全、そしてエチケ
ットを学ぶことができる。
多くの人類の歴史と同じく、日本の歴史も森の知識に源を発する。水は森か
ら流れ出て、海を巡っている。この知識は永久であり、そして決定的なこと
だ。



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      【2】NPO法人共存の森ネットワーク設立
         記念行事「森の名手・名人フォーラム」報告


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先月ご紹介した「森の聞き書き甲子園」の卒業生達が今月は、人生の師「森
の名手・名人達」に久しぶりに会いました。
運営事務局が昨年12月に新たに「NPO法人共存の森ネットワーク」とし
て認可を受け、その設立記念行事として「森の名手・名人フォーラム」を開
催したためです。

全国より名手名人34名、聞き書き参加の学生、運営の母体であるフォック
スファイア倶楽部に関係する林野庁、国土緑化推進機構、支援してきた企
業、樹木環境ネットワーク協会のグリーンセイバーなど200名が集いまし
た。

これまで、高校生達の聞き書きを指導してこられた、作家の塩野米松氏 
が理事長となり、挨拶で事業の経緯を説明されました。米国のフォックスフ
ィアという森の仕事を聞くという事業を参考にして始めた。森の仕事に従事
した人が新たな人的資源として生かされ、高校生は名人達の過去、生きてき
た生活の知恵に触れることが出来るとともに、進路を考える良き機会とな
る。親以外の人を通して労働というものを知ることになり、日本の未来の人
材を育てることにもなる。

共存の森の学生達からは、4箇所で展開する活動紹介がありました。

 http://www.kyouzon.org/active/active02.html

その後、名人の代表の方に 色々お話を伺いました。学生は多くても、数人
の名手名人の話しか聞いた事がなかったため、今回の集いは多くの名人達の
生き様を聞くことが出来た貴重な体験となりました。
抜粋で名人をご紹介します。

名人 小林亀清氏 (富山) 合掌造りの家 茅葺の名人 戦後、山は裸だ
った。今年で79歳 50年前 森林組合に入った、植林が主だった。最近
はお金がかかるのでだんだん瓦葺やトタン葺きになった。結い制度 (お金
でなく 協力で返すお互いの助け合い。)も壊れていった。 自分の家が大
型の家だったので残さないといけない。世界遺産にも登録され、余計に残さ
ないといけないと茅場を任された。
現在、後継者が頑張ってくれるので助かる。世界遺産を守り、文化財を守る
ことは昔を守ること。埃を誇りに変えて頑張っている。森があって初めて自
分達の命がある。水や空気を作ってくれる。森が命をくれる。人間が森を支
配してはいけない。みんなの森。自分の家、自分で守らないといけない。自
然はみんなのもの。

名人 福本 雅文氏 (奈良) 樵 育った吉野の杉の伐採 58歳 山へ入
って34年。大学卒業して2年商社へ勤めて帰ってきた。吉野杉はなぜ良い
か?300年前の植林で間引きながら育てているから。杭丸太や足場丸太な
ど順番に間伐し、収入としながら育てる。所有者と経営者で成り立ってい
る。山守(経営者)が植林、育林、伐採を請け負う。100−150年の木
が一番多いが従事者は少ない。道も整備されていないのでヘリコプターで運
搬。毎日3機から4機ヘリコプターが飛ぶが、安い木を運ぶと赤字になる。
経済的に今は厳しい状況。

仕事は危険 昨年4人 50代のベテランが木の下敷きでなくなった。葉枯
らしをする木を倒して乾燥させる、それが秒速で動くことがあるので危な
い。重なっているのでどの木が落ちるか分らない。
3つ先の工程を見ないと命がなくなる。だから、後輩には厳しい指導をす
る。山は美しいが自然は厳しい、容赦ない。

大事に育ててきた木が残っているが今、売れない 値打ちはあるが需要がな
い。プレハブ、マンションが多くなったため。しかし、山は放っておいては
いけない。自分達で流通組合を作り、家を建てる人に体験伐採ツアーを企画
し、大勢来てくれるようになった。

林業家は、悲観的な話しかしないが、ここに来て若い人たちの活動を見て力
づけられた。現在チェーンソウアートスクールを開いている、木に関係ない
人が習いに月に60人が来る。現在はこれを広めていく事が楽しみ。若い人
が関心を持ってくれることを期待する。

共存の森ネットワークのホームページです。

  http://www.kyouzon.org/index.html

その後、森作りの未来、森と地域の暮らし、手わざを伝えるという分科会で
さらに多くの名人の話を学生達は聞きました。そして、「学業に忙しくフィ
ールド活動もなかなか出来ていないが、今回の経験を基に日本の森の現状を
伝えて行きたい。」「広葉樹含めた針広混交林の森が真の森、これからも森
に入りたい。」「どうやって生きていったらよいかを考えると手わざに繋が
るのではないか」など、これから自分達が関わっていこうとする思いを聞く
ことが出来ました。

最後に、これから森を有効に使わないといけない時代がやってくる。日本の
森林の成長の範囲の中でいかに暮らしていくかが問われる。木材消費量1億
立方m/年 森林成長量、9500万立方m/年 元金を使わなくても暮ら
していける。という副理事長で樹木環境ネットワーク協会の理事長 澁澤 
寿一氏よりまとめの言葉がありました。 
環境と経済そして、生物多様性、さらには日本人のこれからのあり方につい
て考えさせられたフォーラムでした。



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          【3】書籍紹介 マザーツリー 
             − 母なる樹の物語 −


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今回のコラムを書いていただいた C.W.ニコル氏の新刊です。

表紙画、挿画、題字は片岡鶴太郎氏が描かれており、内容ともども大変興味
深い書籍です。

一本のミズナラの木が語る 戦国時代から、現代までの500年にわたる森
と人々との関わり。代々繋がる人間の命とその土地で営まれる生活。 
森の命の代表として生きてきたミズナラの語りが、今の私達が忘れようとし
ている大切なものを思い出させてくれます。環境と経済、これからの日本人
の歩む方向すらも示唆した未来へのメッセージと言えます。時間、空間とも
に大きなスケールで描かれた今回の物語は、C.W.ニコルファンでなくて
も楽しみ、学べるものです。映画化が企画されており、映画の前に是非原作
で触れておきたい珠玉の一冊です。

    出版社は 静山社  ¥1,800円

C.W.ニコル氏のインタビュー情報も下記で見ることができます。

http://mainichi.jp/enta/book/etc/rakuten/interview/014/nicol_cw.html

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