[発行日:2008.10.06] vol.47 コラム 杉村光俊氏 「中国・四国のトンボ図鑑」、体験学習 「水の関わりについて学ぶ」

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┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2008.10.06 ━★

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  ★☆★トンボ・エコフォーラム掲示板を開設しました★☆★

 環境学習(自然環境教育・消費者環境教育)に関心のある先生や
 NPO法人会員、保護者の方の情報交換の場としてご投稿をお待ちし
 ております。お気軽にご利用ください。
 http://www2.tombow.gr.jp/eco_project/eco_forum/index2.html

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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。9月末発行予定でしたが、
原稿の都合で少し遅れましたことをお詫びいたします。
さて、10月1日より、2年間活動拠点としていた東京を離れ、岡山県玉
野市に移動いたしました。引き続き、各地の活動の情報を提供しますが、
今後は関西以西の情報もお送りできるようになると思います。
引き続き、よろしくお願いします。


   もくじ 【1】コラム 杉村光俊氏
          「中国・四国のトンボ図鑑」誕生

       
       【2】体験学習 「水の関わりについて学ぶ」
          玉川学園5年生 プロジェクト・ワイルドで学ぶ


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         【1】コラム 杉村光俊氏
           「中国・四国のトンボ図鑑」誕生


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 この夏、私を含めた4人のトンボ屋で「いかだ社」から「中国・四国のトン
ボ図鑑」を出版させて頂きました。
A-5版・全256ページで、迷入種を加え、これまでに中国・四国地方から記録
された108種1亜種のトンボを最新情報たっぷりの解説と共に紹介しています。

基本的に見開き1種とし、左ページに生体による標本写真と解説、右ページに
は2〜3枚の生態写真を整然と載せています。標本写真は主として同定に有利
な横向きですが、翅斑に特徴がある種などでは展翅も入れ、細部が見辛い小
形のイトトンボ類などは実寸に加え、1.5〜2.5倍の拡大版も掲載しています。

生態写真は審美的に優れていることを基本に、種それぞれの特徴的な生態を
捉えた作品を選んでいます。例えばムカシトンボでは、翅を閉じて小枝にぶ
ら下がっているものを、オニヤンマではツクツクボウシを捕食しているもの
を、といった感じです。さらに、実物大のみながら掲載全種の終齢幼虫や、
類似種の見分け方ページなどもあり、正に中国・四国のトンボを調べたい方
必携の書になっているものと自負しています。

さて、「いかだ社」という出版社ですが、紙飛行機の作り方など主に児童向
けの工作本を主軸にしており、今回のような図鑑類は専門としていません。
ならば、なぜ?というと、社長が大のトンボ好きだから、ということに外な
りません。

実はこの話、いかだ社社長の新沼光太郎さんが始めてトンボ王国に来られた
15年ほど前から出ていました。会社を興して間もない新沼さんが「いつの日
にか、自分の手で楽しいトンボの図鑑を作りたい」と、夢を語っておられた
のです。ただ、自然の荒廃と共にトンボ愛好家も減少していく中、周囲から
「仕事に趣味を持ち込むのはいいことではない」と、ブレーキをかけ続けら
れていたそうです。それでも「そのために自分で出版社を興したのに・・・」
と、熱い思いを捨て切ることのできない新沼さんは周囲の反対を押し切って?
ついに趣味の本作りに着手してしまったという次第。我々もまた「子供たち
のトンボ離れ阻止」を合言葉に、持てる力を全て出し切ってその思いに応え
たつもりです。

その一つがページ数。当初の企画では予算面などから200ページでまとめる
ことになっていました。ただ、そうなると亜種を加えて109ある記録種全て
を見開きで紹介することができません。まして、幼虫や見分け方ページは望
むべくもありません。そこで3人の共著者とも協議の結果、会社側が著者のた
めに考えてくれていた少なからぬ?印税をそっくり制作費用に充てて頂くこ
とにしたのです。かくして、関係者一同の「熱い」思いがこもった、「厚い」
本が出来上がりました。

とは言え、実際に体験できる場所があってこその図鑑、子供たちがトンボ捕り
に興じられる水辺の保全こそが、その活用にとって一番の条件であることは言
うまでもありません。



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    【2】体験学習 「水の関わりについて学ぶ」
       玉川学園5年生 プロジェクト・ワイルドで学ぶ


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今年で2年目を迎えるプロジェクト・ワイルドによる玉川学園の環境体験学習。
小中高12年間教育を3つに区切り、中学年部の最初である5年生が7月14,
15日の2日間体験しました。

<プロジェクト・ワイルドとは>
プロジェクト・ワイルドについての授業は以前バックナンバー34,35号で紹
介しました。幼稚園児から高校生までを対象にした野生生物と自然を考える環
境教育プログラムです。全国的に学校の先生方やNPOの方を中心に1万3000
名ほどが資格をもたれています。

 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=3503

私たちひとりひとりが、野生生物と自然資源に対し、責任ある行動をとれるよ
うになることを目標とした環境教育プログラムです。

   http://www.projectwild.jp/projectwild.php

< プロジェクト・ワイルド実施の目的 >
中学年部の校長職である石塚先生が、プロジェクト・ワイルドの目的である
「野生生物と自然資源に対し、責任ある行動をとれる人材の育成」について評
価をされ導入を決定。特に今年は体験学習を通じて自分たちの生活や社会、自
然環境をはじめ、人間が水と深い関わりを持っていることを理解してもらい、
自ら環境のことを考えたり、環境に働きかけたりする活動を夏休みの自由研究
として行なって欲しい。との思いで実施されました。

< アクティビティ・リーダー紹介 >
今回のプロジェクト・ワイルドを実施するアクティビティ・リーダーは同学園
の大学講師である根上先生と同大学の学生6名(学生環境保全委員会のメンバ
ー)と杉並区を中心に活動するPWすぎなみのメンバー12名。学生は講義の
合間を縫っての指導・補助です。
当初から支援するPWすぎなみの活動の思いと学園の考えが一致したことも見
逃せません。

PWすぎなみ  http://skogs-mulle.org/PW-Suginami/index1.html

< アクティビティの実施形式 >
1コマ90分 6科目(アクティビティ)を 5クラスが2日間ですべて履修
できるようにする形式で実施しました。
1クラス31名で5クラス。1アクティビティを講師が5人〜3人で実施。ゲー
ム体験型の授業であり、ゲーム形式の体験を行なった後40分間を振り返りの
時間として 個人で学んだレポートを書き、グループ発表、最後にその代表者
がクラス全体で発表するという形式を取りました。

< アクティビティの紹介1 >
2日間の初めは、児童、先生、アクティビティ・リーダーが芝生広場に集まり
ました。石塚先生の挨拶の後、導入のアクティビティです。「つながり発見!
生息地」を体験。はじめはリーダーが模範演技、続いて児童150人が輪にな
って後ろの人のひざに座り皆でつながるアクティビティを実施しました。 
  
 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.8.22/1.pdf

< アクティビティの説明 >
つながり発見は、水、えさ、棲家、すきま(生活空間)の4つに子
ども達を分け、各グループからひとりずつできてきて4人でひとつのグループ
を作り、その輪の数を増やし、その後はどんどん輪をつないで大きくしていき
ます。大きい円になったらみんなを右に向かせ、つま先と前の人のかかとが当
たるくらいまで輪を狭め、最後はみんなでしゃがんで後ろの人のひざに座ると
いうアクティビティ。どの一つが欠けても生きていけません。

< アクティビティの紹介2 >
私もリーダーの1人として参加。「渡りはつらいよ」を担当しました。児童が
マガンになったつもりで シベリアと日本を往復し、その間に色々な事件で、
マガン(自分)が死んだり、新しく生まれたりすることを経験し、感じたことを
発表します。
自然と人為的な出来事の比率がどうであるか、人間は自然とどのように関わっ
ているか、マガンは自然の中でどう増えたり減ったりしているなど、児童自身
の口から発言し、レポートを書いてもらいます。
 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.8.22/2.pdf

 人間だけが都合よく生きても、鳥と共生しないといけない、生息地を回復す
るボランティアを支援したい。など色々な意見が出ました。 

< 実施したアクティビティ >
この他にクラス毎に5つのアクティビティを体験しました。
「塵も積もれば」「森を育む水 水を育む森」「水の性質」「水の国のアリス」「驚異の水」       

< 3つのアクティビティ紹介 >
「塵も積もれば」は川や湖の水質がその流域の土地利用や自然の要素を大きく
反映していることを知り、人間の行動が影響するので、どのように責任を取っ
ていけば良いか自分たちのできることを考えます。
川の上流、中流、下流について自分達で絵を描いて考えました。

「森を育む水 水を育む森」は大学生が中心となってアクティビティを実施し
ました。体を使って森林に降る水を疑似体験することで、雨水、森林、野生動
物、人間が繋がっていることを理解します。森林のさまざまな機能も知る事が
出来、水と環境の問題に興味や関心が持てるようになります。

「水の性質」は実験です。水の3態を知り、水の循環を体現することで水の持
つ特性の一端に触れます。実験を通して水の性質が環境に及ぼす影響を考えま
す。

 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.8.22/3.pdf

< 2つのアクティビティ紹介 >
「水の国のアリス」は不思議の国のアリスをもじり、大きな体になって、地球
上にどのくらいの量の水が存在するのか、モデルを使って実感します。地球上
の水全部が1リットルの水だったとしたら海水はどれくらい?本当に使える水
はどれくらい?を様々な器具を使って体験します。
水資源の責任ある利用を考えるきっかけになります。

「驚異の水」は水の惑星と呼ばれる地球上にある水を雲、雨、海、人間の体内
の水など9の形態に分け、水の循環を体験します。サイコロを振り、自分の意
思とは関係なく、水の循環の変化形態であるビーズを集め、自分で物語を作り
発表しあうことで水の循環について気づきが始まります。       

< フィナーレとまとめ >
2日間のアクティビティを終わり、児童たちは講堂に集合。
雲から雨が降り。川に注ぎ、滝になり、再び川になって流れていくスライドシ
ョーを見ながら、自分が作成したレインスティック(雨の振る音が鳴る手製の
楽器)でスライドにあわせて音を出します。音楽と映像による水の体験と言う
プログラム。このあと、代表者の児童が講師陣に御礼を述べてくれました。そ
の後各クラスに戻り、体験した6つのアクティビティをとおしての振り返りの
レポートを作成しました。
     http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.8.22/4.pdf

児童たちが2日間で体験したことから夏休みの課題学習へ発展する事が期待さ
れます。今頃は仕上がって提出を待つばかりになっているのではないでしょう
か? 
私立の学校だから出来た授業ではないと思いますが、公立の学校でも、外部講
師活用による環境学習がより、有効に行われることを期待したいです。計画的
な年間学習プログラムに基づき、学校のニーズと外部指導者のニーズ、スキル
が合致し、綿密な事前打合せが行なわれることで有効な学習に繋がると感じた
2日間の授業でした。





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