[発行日:2009.02.28] vol.52 千葉で進む学校ビオトープ改修、次代を築く人材を育てる矢掛高校 

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┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2009.2.28 ━★

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  ★☆★トンボ・エコフォーラム掲示板を開設しました★☆★

 環境学習(自然環境教育・消費者環境教育)に関心のある先生や
 NPO法人会員、保護者の方の情報交換の場としてご投稿をお待ちし
 ております。お気軽にご利用ください。
 http://www2.tombow.gr.jp/eco_project/eco_forum/index2.html

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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。先日、生物多様性に関す
る企業のガイドラインの素案が新聞に発表されました。あちこちでセミナ
ーやシンポジウムも開催されており、生物多様性は企業活動に直接、間接
に影響があることが認識され始めてきました。持続可能な社会をつくるた
めにもこれからも学校ビオトープ作り支援や環境学習支援を続けて行きた
いと考えます。



   もくじ【1】千葉で進む学校ビオトープ改修
         千葉市立稲浜小学校

      【2】次代を築く人材を育てる矢掛高校
         ・マイバッグ編
         ・森の聞き書き甲子園編


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        【1】千葉で進む学校ビオトープ改修
           千葉市立稲浜小学校
  
  
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千葉県では生物多様性ちば県戦略のもと様々な「ビオトープ」づくりや維持
・再生活動が盛んになっています。学校ビオトープ15箇所についても補助
金が交付され改修があちこちで進んでいます。改修費用の1/3を学校側で
準備すれば、あとの2/3を県が負担するもので、全体で上限100万の助
成がされます。

今回、改修の途中を拝見したのは、千葉市立稲浜小学校。97年にビオトー
プが作られた同校ですが、その後紆余曲折があり、ビオトープを利用した活
動が中々定着していませんでした。今回の助成金を活用しようと、地域の方
や保護者の協力を得て改修が進んでいます。
千葉県の助成の条件として「地域を入れる」ということがあり、実行委員会
が組織されました。転勤のある先生、卒業後に離れてしまう保護者だけが中
核をなしたのでは、継続的なビオトープの活用や存続ができないとの県の判
断です。

説明をしてくださったのは、稲毛二小でいのちの森活動を中心で指導されて
いるグループ2000の横田さん。稲浜小学校ビオトープの改修には千葉県
の環境学習アドバイザーの立場で関わっておられます。

今回の改修は、ゴムシートを敷き、水漏れ防止をすることと校庭の一角の池
につなげる約30メートルほどの流水路の水の循環を確保するための電源工
事と循環ポンプの設置。さらに隣接して田んぼ作りです。共に色々な生物が
集まるビオトープにしようというものです。
現在はまだ、工事中で流水路が掘られて、その上に土がかぶせられた状態で
す。
しかし、ポンプアップした水の受け場となる甕には近隣の小学校で不要にな
った給食用の釜が再利用され、ポンプの設置もされていて、基本的なインフ
ラは整備が済んでいます。
以前設置された太陽光発電の設備も利用される予定で、日中のポンプアップ
に使用するということ。完成すれば、子ども達は自然エネルギーの働きにつ
いても学ぶ事ができます。

流水路の法面には草が植えつけられていて、これまでに3〜4回、各回20
人ほどの保護者や地域の方、OBの方々が参加して行なわれました。
完成すれば色々な生きものがやってくる事が期待されます。

メダカなどここまで自分で移動できない生きものは、できるだけ近いものが
良いので、近くの稲毛二小ビオトープから連れて来る予定とのことです。

次年度、モデル事業として認められれば、別の助成金が出るとのことで、2
年がかりでの整備と新しい活用が期待されます。春になって水が張られ、生
きもの達がそして児童が集まるビオトープになることが望まれる稲浜小学校
のビオトープです。
ビオトープ改修の状況はこちらからどうぞ

  http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/09.3.1/1.pdf




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        【2】次代を築く人材を育てる矢掛高校
           ・マイバッグ編
           ・森の聞き書き甲子園編

  
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岡山県の西部、旧山陽道の宿場町として栄えた矢掛。今でも江戸時代の大名
の宿泊地であった本陣が残るこの町は豊かな自然に囲まれた落ち着いた雰囲
気を持っています。井原鉄道の矢掛駅のすぐ傍にある岡山県立矢掛高校は県
内唯一、環境授業を「環境演習」として正科で行なっています。色々取り組
みをされ、進学の実績でも環境方面に進む生徒も輩出しており、体験型の教
科学習が成果に結びついています。

今回と次回で3つのテーマで活動をご紹介します。今回は、「マイバッグに
関する取り組み」と「森の聞き書き甲子園」参加生徒のインタビューです。

1. マイバッグ編 
<不思議な出会い>
昨年11月30日、毎年開催される岡山県の環境イベント「岡山エコフェス
タ」で同じく出展していた矢掛高校の生徒さんと先生「マイバッグを作る布
を探している」ことを知りました。当社は制服の残布を教材として提供して
いてこれまでに75校に差し上げています。インターネットで探しても布を
提供してくれるところが見つからなくて焦っていたところだったので、まさ
にグッドタイミングの出会いでした。

<マイバッグ制作の目的>
早速家庭科の先生が残布を取りに来られ、その布を使ってマイバッグを生徒
が作りました。
これは、自分達が使うのでなく 環境授業の演習の一環だったのです。そし
て、12月19日 矢掛幼稚園の園児と保護者にオリジナルのマイバッグを
作ってもらうイベントを実施しました。
目標は、「愛着を持って使ってもらうため。」でも、その目的は何だったの
でしょうか?

<きっかけは漂着ゴミ>
話は昨夏に遡ります。
高齢化と過疎化により貯水池の環境浄化が進まない白石島(同校の南にある
瀬戸内海に浮かぶ島)で夏季の研修を行った事が原点です。

これまで、島の川の水は海に流す前に一度池に入れ、沈殿や自然浄化をした
後に海へ流すようにしていましたが、前述の要因により池の底に溜まった泥
を浚渫できずにいました。若い力でこの浚渫を手伝うと同時に、島に流れ込
む漂着ゴミの調査を実施したのがきっかけでした。

一番多かったのはレジ袋、この結果に驚いた高校生は、どこから流れてくる
のかを考え、その原因は島でなく、自分たちの地元にあるのではないかと考
えたのです。 地元を流れる小田川を調査した結果、ゴミの種類やその比率
が漂着ゴミと同じであるという結果を得ました。
小田川には、スイゲンゼニタナゴという絶滅危惧生物が生息しています。
ゴミ削減から始めて、その生息場所を保全しようとするのが最終目的なので
す。

<ゴミ削減のため作戦立案>
さて、どうするか、校内と地域でマイバッグの使用アンケートを取りました。
 持っている人は結構いるが実際は家に置き忘れたりして使われず、レジ袋
を使うケースが多いと判明。それならば、まず、買い物をする親がマイバッ
グを忘れず携行する方法を考えたのです。      

まずは、幼稚園の児童と保護者に一緒にマイバッグを作ってもらおう。そう
すれば、愛着がわくと同時に、こどもからも保護者へマイバッグを使うよう
に呼びかけるだろう。買ったり、貰ったりしたものは幾らでも家にあるがつ
いつい忘れてしまう。オリジナルこそが解決の鍵だと

<オリジナルマイバッグの制作>
幼稚園児に縫製は無理、そこで縫いあがったマイバッグにアップリケを貼り
付けてもらおう。バッグは布を2重にして楽しいものにしようとわずか3日
間で24枚のバッグを縫い上げました。そして園児達は保護者と一緒に楽し
くマイバッグ制作をおこないました。この日は、地元の新聞社とケーブルテ
レビ局の取材もありました。

<これからの進め方>
今回の幼稚園でのマイバッグ制作教室は第1弾、今後保育園や小学校でもこ
の運動を広げて行きたいと矢掛高校の2年生の生徒達は考えています。今月
には幼稚園の保護者にアンケートを取り、その後の活用状況も調査するとの
ことです。PDCAもついでに学んでいる同校の環境授業は質の高いものです。
残布が矢掛町のゴミ削減に協力できたとことは社会貢献の第一歩と感じまし
た。これからの広がりが楽しみです。
 マイバッグ制作の模様はこちらからどうぞ

  http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/09.3.1/2.pdf


       2.森の聞き書き甲子園編 
当社が支援する「森の聞き書き甲子園」今年で7回を数え、700人の高校
生が森の名手名人の仕事・人生を聞き書きしています。来月には全国フォー
ラムが開催され、無事7期生も卒業します。同校でもこれまでに先輩が何人
か参加、今回は2年ぶりの参加です。

これまでのも卒業生達の声を聞いたり、一緒に森や田んぼで活動したりして
彼らの変化を見ていますが、現役の高校生とは詳しく話す機会が無かったの
でこれからの活動を支援していく貴重な情報となりました。
取材に応じてくれたのは、2年生の藤井将大さんと川上 久美さん。

< 応募の動機は? >
藤井:元々森に興味があったから。温暖化やCO2に寄与する森のことにも
関心があった。また、人と話すのが苦手で自分を変えたいと思ったのも事実。
先生方からの薦めもあった。また、聞き書きの先輩が環境関係の進路も進ん
だことを知り、自分もその方向に進みたいので思い切ってチャレンジ。

川上:高校に入って「環境演習」(1年生は必修)に取り組み、環境方面に
は興味はあった。進路も損方面には行きたいと考えているが、特別森の聞き
書き甲子園に興味があったわけではなかった。複数の先生に進められてじゃ
あやってみようということで参加した。

< どんな名人に聞き書きに行ったのか? >
藤井:徳島県の川筏の1本乗りの名人に話を聞いた。今は川筏の保存会に入
り、現職では仕事はしていない。2回聞きに行ったが、質問をつなげる事が
難しかった。でもバス停で待っていてくれるなど、名人の人柄に触れて大変
ためになった。

川上:鳥取県の原木きのこ栽培の名人。なめこ、平茸、椎茸など色々栽培し
ている女性の方。しかも加工食品椎茸煎餅などオリジナルな商品も開発して
おられる方。もともと小遣い稼ぎにはじめたが、今は本業になっている。
品評会でも表彰されるなど実力者だが、商売を超えて、原木きのこのおいし
さをみんなに伝えようとあちこちに出かけていって無料で配っている方。

< 聞き書きをしてみてどのような事がためになったか? >
藤井:名人の話を聞くうちに昔と今の暮らしの差を感じざるを得なかった。
今は裕福だと感じる、名人は中学生の時から働いていてすごい人だと感じた。

川上:普段見られないきのこ栽培を見られた。貴重な体験だった。聞き書き
に参加をして視野が広がったし、人間性が高まると感じた。
今まで引っ込み思案だった自分が、変わって「何でもチャレンジできそう」
と思えるようになった。

短い間でしたが、名人と触れた2回の訪問、そしてそれを名人の言葉でまと
めた苦労など、聞き書きを体験したことで自分の内的変化を感じた
二人でした。

日本の食を支える人たちの実に60%は60歳代、25%は70歳代の方々
です。10年後日本の食や伝統的な仕事はどうなるのでしょう?
おじいちゃん、おばあちゃんの世代がいなくなれば日本で伝統的に続いてき
た仕事や生活スタイルは引き継ぐ人も無く消えてしまいます。
若い世代が、そのノウハウや人生を聞き書きすることはある意味日本人の知
恵を継承することだと感じた今回の取材でした。
これからも森の聞き書き甲子園を応援して行きたいと考えます。
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