[発行日:2009.04.01] vol.53 杉村光俊氏 コラム、芝山湿地の ニホンアカガエル 他2件

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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2009.4.1 ━★
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  ★☆★トンボ・エコフォーラム掲示板を開設しました★☆★

 環境学習(自然環境教育・消費者環境教育)に関心のある先生や
 NPO法人会員、保護者の方の情報交換の場としてご投稿をお待ちし
 ております。お気軽にご利用ください。
 http://www2.tombow.gr.jp/eco_project/eco_forum/index2.html

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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。各地でソメイヨシノの開
花の声が聞かれています。例年より1週間ほど早く、福岡で一番初めに開花
が告げられました。花が例年より早く咲くということで、昆虫、渡り鳥等に
色々と影響が出るのではないかと心配になります。

最近「きものと農業」という本を読み、「衣」に関する日本の伝統を知る
事が出来ました。農業国の日本では、太陰太陽暦が明治維新までは使われ
ており、その暦と生きものとそして「衣」が深く関わっていたことを。

この旧暦でいうと今年は、11年ぶりに閏5月があり、夏が4ヶ月間ある
そうです。七夕は新暦に8月26日、お盆は9月3日とか。     
3月3日の桃の節句は新暦だと4月上旬が本当の時期。丁度今頃で桃の花
が咲く頃です。しかし、花屋では、新暦にあわせて桃の花が咲くように促
成栽培をしているとのこと、どこか、無理をしているなと感じます。

周りの変化や生きものの動向に注視をしたいと感じる今日この頃です。
発行が1日遅れましたことお詫びします。


   もくじ【1】コラム 杉村光俊氏
         トンボを取り巻く環境の変化

      【2】芝山湿地の ニホンアカガエル
      

      【3】桜川中学校 里山体験授業の成果
          
   
      【4】次代を築く人材を育てる矢掛高校
         ビオトープ編



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         【1】コラム 杉村光俊氏
          トンボを取り巻く環境の変化
  
  
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トンボだけでなく、昆虫の世界全体に元気がない。学会、同好会は高齢化が
進み、昆虫少年が絶滅危惧と揶揄される。勢い、わが「学遊館あきついお」
は無論のこと、各地の昆虫館も来館者減に苦慮する日々が続いていると聞く。

図鑑ともなればなお深刻で、20年ほど前なら全国で4〜5万部さばけていたト
ンボ版が、たかだか数千部の販売に四苦八苦。理由は簡単、身近な場所から
トンボを始めとする昆虫がいなくなってしまったから。好奇心の塊ともいえ
る子供たちの周りに昆虫がおりさえすれば、昆虫館も図鑑類も彼らにとって
必需品であるに違いない。

ネアカヨシヤンマやベッコウトンボといった特殊な環境に固執する種類は言
うに及ばず、ギンヤンマ、シオカラトンボなど川でも水溜りでも生活できる
種類さえ、決して身近な存在とは言えなくなってしまった。
日本の秋を象徴するアキアカネとて例外ではない。

普通、昆虫類減少の最たる要因は生息環境の変化(悪化)である。とりわけ、
幼虫時代を水中で過ごすトンボにとって、水域の汚濁や消滅は致命的だ。
シオカラトンボやアキアカネなど、水田環境に適応してきた多くの日本産ト
ンボ類にとって、放置田と埋め立てが急進する里山はもはや安住の地ではな
い。

加えて、温暖化など近年の異常気象も看過できない。四季による気温変化の
明瞭な日本という国で進化を遂げてきた生物たちとって、寒暖の差は種存続
上での絶対条件。実際に我がトンボ王国でも、キトンボという赤トンボの一
種が1月27日まで生存という長寿レコードを更新した記録的暖冬を経ての200
8年春、コツバメやツマキチョウといった春のチョウが異常に少なく感じられ
た。

昆虫飼育の大家によれば、春にしか飛ばないチョウは5月中にサナギとなって
以降、夏の暑さと冬の寒さを一定期間(量)経験しなければ翌春の羽化は叶
わないようだとのこと。
つまりトンボ王国の春チョウたちは、度の過ぎた暖冬のせいで十分な寒さを
体感することができず、春が来てもそのことに気付かず羽化できなかった、
ということらしい。案の定、年末から年頭にかけ「それなり」の寒さに見舞
われた今シーズン、2月に入ってからの暖かさを得てタベサナエが観察史上
2番目に早い記録となる、3月10日から羽化を始めている。

こうしたカラクリはサクラも同様、寒さを一定期間経験しなければ開花でき
ないとのことで、温暖化が進行する近年、開花の全国一番乗り常連だった高
知県は、その座を東京などに譲りっ放しである。

この他トンボ王国ではここ数年、サクラを始めカキツバタやハナショウブな
ど四季の花に「満開」の時期が無くなっている。むしろ日当たりのいい場所
に植えられた株の開花が遅れ気味という形で開花期間が長くなった結果、全
体に5分咲き状態のまま花期が終息してしまう感じだ。

ひょっとすると、件のアキアカネも水域減少に加え、卵で越冬し春に孵化す
る生活史のトンボであるにも関わらず、不安定な気象下で季節外れの孵化を
余儀なくされた幼虫が餌不足で餓死したり、あるいは冬季特有の渇水で干上
がったりしているのかもしれない。あくまでも想像の域を出ないが・・・。

良し悪しはともかく、我々を取り巻く自然環境が急速に変化していることだ
けは疑う余地がない。少なくとも、日々自然と対峙している者の目にはそう
映る。

問題は、自然との関わりが希薄な多くの現代人に対し、そのことをどのよう
に伝えていけばいいのか、ということである。温暖化もまた、自然環境の保
全に対し無関心な人が多いゆえの結果であるから、状況改善は容易なことで
はない。

さて、どうするか。実は薄々ながら、自分なりの解決案がまとまりつつある。
これは近いうち、トンボと自然を考える会の会報「トンボと文化」などを通
じ発表させて頂きたいと考えている。要は、生態系の保全を、いかにすれば
経済活動の中枢に移行させられるか、ということに尽きよう。




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         【2】芝山湿地の ニホンアカガエル

  
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< アカガエルを知る >
「少しだけ考えてみませんかカエルの気持ち」と題して千葉県立船橋芝山高
校でニホンアカガエルの講義と観察会が去る2月21日に開催されました。
実に80名ほどの方々が参加、昨年から様々なイベントを開催している同校
の科学研究部と顧問の佐野先生達の努力でだんだん参加者が増えています。
地域に開かれた学校ビオトープの活用が行なわれています。
地元新聞にも同校のニホンアカガエルの取材記事が載った事で、地域の関心
が高まったようです。

東邦大学理学部生物研究科 長谷川 雅美氏のお話で始まった楽しいカエル
観察。里山の生態系を支え、人と共生してきたカエル。ニホンアカガエルは
絶滅危惧種 千葉県レッドデータブックに載っています。ただ、条件が整え
ば復活するというお話。

このカエルは日当たりの良い水場に産卵します。でも、植生遷移が進み葦が
生えると陰が出来て産めなくなります。寿命が5年と言われ、5年間産卵が
できなければ絶滅してしまうことになります。 
耕作放棄で湿地がなくなると産卵場所がなくなりニホンアカガエルは減りま
す。その他、産卵場所と陸上生活場所が分断される、上陸したカエルの生
活場所がないというのも減少の原因となります。

アカガエルの産卵期は九州が11月、本州1〜3月、北海道は5月だそうで
す。1匹のカエルは1卵塊生むので卵塊を数えることで、親カエルの生息数
が分ります。オスとメスの比率は2:1との事です。4歳までしか卵は産ま
ず、2歳で親になる3歳で親になるのもいるそうです。体調5cmで180
0個、7cmのものだと2700個産むとの事です。

< 船橋芝山高校のアカガエル >
つづいて、同校の科学研究部による芝山湿地のアカガエルについての発表が
ありました。
芝山湿地は20年間放置され、ニホンアカガエルは絶滅していました。斜面
林から流れ出す清水のお蔭でオニヤンマ、サワガニが細々と生きていました。

湿地を甦らせようと2001年に習志野高校の水田からニホンアカガエルを
移入しました。さらに2005年に船橋高校から700粒の卵を移入して遺
伝子汚染の害を防止してきました。
これまで、順調に増えたが昨年急激に減少したとの事。近くに棲む10匹の
狸の食害?閉鎖された場所での遺伝子の問題?など当日の段階では調査中で
した。対策も打ったので今年卵塊が増えれば狸の食害、減れば遺伝子の問題
である事が分るそうです。

その後、芝山湿地に移動し、卵塊やカエルの状況を確認しました。暫く行か
ないうちに東屋が、建てられ木道手すりも整備されており、地域に開かれ
利用されようとする「芝山湿地活用の意思」を強く感じました。
芝山湿地に入るとなぜが心が安らぎます。いつまでもここに居たいという
気持ちにさせる「場の力」がここにはあるのです。

千葉県の絶滅危惧種25種が生存する重要なホットスポットとなっている
ということも関係しているのかも知れません。

当日の模様はこちらからどうぞ
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/09.3.31/1.pdf



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        【3】桜川中学校 里山体験授業の成果

  
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「里山に学ぶこれからの生活」として2回に渡ってご紹介した 桜川中学校
里山体験授業の発表会が今月の中旬にありました。
中学生1年生達の体験発表の内容の深さと素晴らしさは驚くばかりでした。

130名の生徒がランチルームに集まり、代表8名による「里山体験授業の
発表」と全員が製作した里山体験をレポートした壁新聞の展示があり、授業
を指導したNPO法人樹木環境ネットワーク協会の皆さんと一緒に見学させ
ていただきました。

1月のレポートでお伝えしたとおり、里山体験をした時の感想はあったので
すが、3回の授業を通して彼らはどのように里山を捉えてくれたのかは大変
興味のあるところでした。1回目の講義 里山の生きもの、2回目の土地利
用の変遷(自分達の住む板橋区と多摩動物公園の今昔)間伐、笹刈り、里山
の利用の話、コナラポット苗作りとバリーション豊かな体験でしたが、1年
を通して残ったことはなんだったか?何が理解できているか? など次年度
も継続して取り組むので興味だけでなく、不安も少々あったことも事実です。

みんなの壁新聞の中の優秀作品24人の作品集が資料として印刷され、その
内容を見てみると、里山体験がクローズアップされるかと思いきや、3回の
授業それぞれの会の内容も書かれていました。先生の恣意的指導で無く、結
果的にバランスよく書かれていたとのこと。人の感性は本当に違うものだと
感心しました。

里山とは、里山と人間の関係、支えあういのちの輪、地球と里山、里山のつ
ながり、里山+人間=命、里山を守ることの大切さ、里山の色々な動植物な
ど など自分達が学習したことがまとめてありました。

「今回多摩動物公園で里山を守る体験をしましたが、なぜ里山を守るのでし
ょうか? 今日本では、各地で自然が壊され里山も少なくなってしまいまし
た。自然が壊されると同時に石油に頼る生活に変わっていきました。その石
油もあと富士山一杯分も残っていません。また、石油を使うことで気候など
環境も悪影響が出ています。 だから、これから里山などの自然を見直して
守らなくてはいけないと思います。」というような内容があります。

今回作業したライオンの森の活用についても色々な意見がありました。
自分達の先輩がこの森に入って笹刈りをするなど人の手が入ることで守られ
る自然、生物多様性について実感をした報告もありました。

また、指導してくれたボランティアについても多くの生徒が調べており、環
境ボランティア以外にも色々なボランティアがあることを知った様子です。
NPOについても調べており、学習は色々な方向へ広がったことを実感しま
した。今回の学習をもとに5月から2年目の授業が始まります。

「君達は今日本で一番 里山の事を知っている中学生ではないか」と私の感
想を皆に伝えました。このような授業に取り組む学校がさらに増えれば、必
ず日本は変わると感じ、感動した発表会でした。

   http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/09.3.31/2.pdf


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        【4】次代を築く人材を育てる矢掛高校
              ビオトープ編
  

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昨年から改修工事を進めていた中庭のビオトープの完成式が2月中旬に行な
われました。「新おかやま夢づくりプラン」の事業として「産業廃棄物処理
税」を財源に高校生自らが様々な学習や体験活動をとおして企画・提案した
「憩いの広場」です。設計だけでなく、施工業者の研修を受け、完成まで生
徒がかかわりました。

このビオトープはテーマを「循環型社会を考える広場、進化する空間」とし
て整備を進めてきました。ユニバーサルデザインを取り入れ、車椅子の方に
も楽しめる水辺空間を作りました。

当日は、県、教育委員会、ビオトープ回収に関わった方と一緒に完成を祝い
ました。はじめに、中庭ビオトープ回収の流れ、思い、生徒が実施した内容
について発表がありました。

次いで中庭でテープカット。今回整備した中庭ビオトープにはエコ+ユニバ
ーサルデザイン。環境学習など色々な要素が組み込まれています。 環境に
やさしいハイブリッド発電(ソーラーと風力)でビオトープの水を循環させ
ます。橋やデッキは再生PETのリサイクルしたプラスチックで作られていま
す。
遊歩道のエコブロックには間伐材のチップが入っています。築山は以前の池
の残土、レンガ、コンクリートを使いました。ユニバーサルデザインとして、
池の歩道に傾斜をつけ車椅子に乗ったままでも水面が触れるようにして、池
の周りを自由に移動できるようにしました。当日お祝いの花輪が2つありま
した。良く見てみると近くを流れる小田川の川ゴミをくっつけて作った物で
した。上手にはできていたのですが、こんなにも川にゴミがあるのかと、知
ると悲しい気持ちになるものです。

学習のために、水中カメラや、使用した材料のリサイクル工程パネル、地域
の方との学習会ができるように大き目のデッキスペースの設置をしています。
この日の式典に使用した電力は、エクストエナジー・アンド・リソース株式
会社と契約したグリーン電力によって賄われました。電力は50kwh以下
と想定されます。

この日は、近隣の矢掛幼稚園の園児達がメダカを放流に来てくれました。同
校で飼っている、裏の池に生息する地元のクロメダカです。ブラスバンドの
音楽にあわせて放流してくれました。式典の最後で弊社がプレゼントした制
服の残布で作ったマイバッグを2年生の女子から来賓の方にプレゼント。

すべてが、エコのビオトープ完成式典でした。この池には、まだ、植栽があ
りません。あえて、入れずに4月から始まる環境演習の授業の中で、地元の
小田川に棲む植物を調査して、植栽します。そして、絶滅危惧種のスイゲン
ゼニタナゴも棲める環境に変わっていくのです。

同校は環境の取り組みの実績で「ユネスコ スクール」に岡山県で初めて認
定されています。持続可能な開発のための教育を実施する教育機関という意
味です。このユネスコスクールの取り組みの発表も大阪や地元岡山の学校を
招いて3月5日に行ないました。

このビオトープ完成式には地元ケーブルTV局も取材に来ました。あくまで主
役は生徒です。地域と共に歩もうとする新しい形のビオトープが始まりまし
た。トンボの産卵も楽しみです。
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/09.3.31/3.pdf
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┃   □ URL:http://www.tombow.gr.jp/eco_project/    

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