[発行日:2007.08.31] vol.32 「孤立したからこそ残った豊かな自然環境」 千葉県立船橋芝山高校 『芝山湿地』 他1件

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┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2007.8.31 ━★

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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。いよいよ各地で2学期が始
まってきています。私が子供のころは、真っ黒に日焼けするとほめられたも
のですが、今はオゾン層の破壊により紫外線に当たるのは有害になってお
り、日焼けした顔が見られないのはさびしい限りです。
まだまだ暑いですが、虫の声も聞かれるようになり、秋の気配が心なしか感
じられる頃となりました。



   もくじ 【1】新しい学校に新しいビオトープ

            
       【2】「孤立したからこそ残った豊かな自然環境」
            千葉県立船橋芝山高校 『芝山湿地』







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       【1】新しい学校に新しいビオトープ


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今、?トンボ環境事業企画室では、3つの学校ビオトープづくりのお手伝い
を始めています。そのうち2つは来年から新設される小学校、残りひとつ
は、東京の都心にある小学校。ここは6月初旬号でも少しご紹介しました。
今回は新しい小学校で進むビオトープづくりについて紹介します。

一校目は、広島県福山市にできる「ぎんがの郷小学校」これまでの中高一貫
教育に加えて小学校からの一貫教育が始まります。
校舎もできあがり、8月初旬には入学希望者への説明会が始まりました。
「ぎんが」で思い出すのは「銀河系」「銀河鉄道の夜」の言葉。そのとおり
人々の夢を大切にする学校です。校舎の窓も丸窓であったり、教室も星座の
名前がついていたりこれまでとは違います。

ここでは 郷学(さとがく)をコンセプトに教育が行われます。
受け継がれてきた日本人の郷の生活文化。人々が集い、共生するために昔か
ら培われてきた人間としての基本力を大切にし、人と人とが親しく向き合っ
て暮らしている環境が里であり、その考え方を教育にて実践していきます。

だからこそ、自然と触れ合う場が必要と「学校ビオトープ」を使った教育を
されようとしています。特にこだわったのは日本人の生活の原点「田んぼ」
です。小川の流れを作り、その中に小さいけれど高低差のある2枚の田んぼ
を作ろうとしています。
場所が高台であるために、体育館からの雨水をポンプでくみ上げるなどして
水の確保をしようとしています。ビオトープの側面は雑木林があり、ここも
子供たちの自然体験の場になりそうです。
余計な植樹をせずに、植生の遷移について子供たちと一緒に観察したいとい
う準備室長の考え。基礎工事はするも、新しい児童や保護者を中心にさらに
は、地域の人たちとの連携をしてビオトープを整備していきたいということ
です。その後の環境授業のことも考え自然体験活動のノウハウをお持ちの広
島県環境保健協会の方と一緒に支援をしていきます。

ぎんがの郷小学校のHPです。
 http://www.ginganosato.ed.jp/top.html
ビオトープ建設地  
 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.8.29/1.jpg
      
二校目は、名古屋市にできる南山小学校。小学校から短大、大学までの一貫
教育が行われる学園
キリスト教世界観に基づき学校教育を行い、人間の尊厳を尊重かつ推進を目
的とする人の育成を目的とするとして 新しく小学校が創設されます。

学校が位置する八事(やごと)地区は江戸の昔より小高い丘の地形であり、
花見客も多かった所。今では住宅が沢山建っていますが、キャンパスの一部
には雑木林があり、ここがビオトープとして使えれば子供たちにとって良い
自然体験の場になるのではないかと検討を始めたところです。

昔里山として利用されていたその場所は、現在は手入れが行われておらず、
鬱蒼とした森になっています。ところどころギャップはあるものの
林床には光が差さず、極相に近い状態になっています。
優占種はクスノキやクヌギなど、イロハモミジの他低木層として、カクレミ
ノ、アオキなどが多く見られます。
クヌギなどのどんぐりの木もあり、カブトムシも生息していそうですが、森
のポテンシャルから考えると多様な生物とはいいがたい状況です。

自然体験の里山として利用しようとすると、高木層の除伐や中低木の間伐が
必要となりそうです。昔、水が流れていた痕跡もあり、歩道との高低差もあ
って、欄干などの安全対策が施される必要があります。

それだけに新入生や保護者が力をあわせて里山復元ができるようになると、
植生の変化、生き物の変化が見られて格好の遊びと学習の場になりそうで
す。具体的な整備計画はまだこれからですが、担当の理科の先生、地元のビ
オトープ管理士の方々と協力してスタートできる準備を整えようとしていま
す。

ビオトープ整備でいかに保護者や児童が主役となって活躍できるか、ビオト
ープを各教科の学習にどのようにいかすかなどこれまでに他校が実践された
来て事例を紹介しながら新しい学校の教育がスタートできるよう支援をして
います。

南山小学校のHPです。
 http://www.gate.nanzan.ac.jp/shogakko/news/index.html
ビオトープ候補地 
 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.8.29/2.jpg


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      【2】「孤立したからこそ残った豊かな自然環境」
         千葉県立船橋芝山高校 『芝山湿地』


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5月に全国トンボサミットで出合った船橋芝山高校の理科担当の佐野 郷美
先生にビオトープ『芝山湿地』を見学させていただきました。
佐野先生は赴任して2年目。千葉県生物多様性戦略の委員でもあり市民環境
NPOとしても活動をされています。

学校の立地は船橋市の東部、下総の台地。30年前に住宅地開発とともに設
立された高校です。ビオトープの場所は学校の北側、その昔、谷津だったと
ころ。そこは水が染み出すとの事で長いこと放置された場所でした。199
9年前々任者の先生が生徒と共に木道などの整備をされ、いまの芝山湿地に
なっています。 
県からの補助金で夏の渇水対策用に体育倉庫の雨水を雨水タンクに集める装
置もできているため、水が枯れることなく流れます。

山から滲み出す水辺には オニヤンマのヤゴや沢蟹が棲んでいます。 18
0坪ほどの土地ですが、田んぼ、池、小川もあり、最初にお伺いした6月の
半ばには田んぼでは、オオシオカラトンボなどが盛んに交尾を行っていまし
た。日本アカガエルのオタマジャクシも見られました。ヒバカリ、アオダイ
ショウなどのヘビも見られるとの事です。
2回目にお伺いした8月初旬には、オオシオカラトンボのほかショウジョウ
トンボやウスバキトンボ、アジアイトトンボなどが見られました。

この場所は周りの開発があっても残された場所で隣接する2方は住宅地、残
る2方は崖と接しています。幸いなことに下流の水系とは段差があり、生物
が遡上できないのでザリガニやウシガエルが入っておらず、外来種のいない
地区固有主が生息する貴重なビオトープとなっています。裏山は県の土地と
いうことで、草刈などが行われていますが、里山的な風情になっています。
ここは、ニホンミツバチも巣を作るほどです。
もちろんここや「サノリウム」(本メルマガ30号7月中旬号で紹介)で育
ったヘイケボタルも初夏の夜には、美しい光を見せてくれます。

同校の科学研究同好会と佐野先生が中心となってビオトープの観察、研究
や、草刈などの整備を行っています。
理科の授業で田植えをするときなど生徒は大喜び、女子生徒も泥んこになっ
て楽しく時間を過ごすそうです。しかし、酷暑の中でのセイタカアワダチソ
ウなどの外来種の草抜きは大変、今年は佐野先生が軽い熱中症を起こすほど
だったそうです。

そのような影の努力で維持されている芝山湿地は、生徒の心のオアシスとし
ても活用されています。養護の先生が悩みのある生徒を連れてくると口も聞
かなかった生徒が小一時間程すると口を開くそうです。
近所の小学生もこっそり遊びに来ます。事実私も、ここに来るとほっとし
て、一日中でも居たくなるそんな癒しのスポットです。自然だより「芝山湿
地」では、ビオトープを通しての様々な情報が発信されています。後日、科
学研究同好会の生徒さんのインタビューも紹介しますが、9月には植物学会
で高校生として初めての発表も決まったとのことです。
こころのふるさと「芝山湿地」秋の実りが楽しみです。

芝山湿地の写真です。 
   http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.8.29/3.jpg  

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