[発行日:2007.09.28] vol.33 もうすぐできるみんなのビオトープ 墨田区立二葉小学校、トンボ デジタル生態図鑑完成 他1件
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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。秋の気配になったものの、
この夏感じた地球温暖化の影響は、身近なところでいろいろ起こっているよ
うです。私の周りでは、この温暖化に関する情報が最近頻繁に聞かれるよう
になりました。サンゴ礁の白化、アカトンボの減少、クマゼミの関東での繁
殖などマスコミでも取り上げられていますが、昆虫の生息範囲の変化がツキ
ノワグマの食料であるドングリに悪影響を及ぼしたり、生物多様性が温暖化
と共に失われつつあるようです。特に台風の影響がひどくなった日本の奥
山・里山では、放置された針葉樹の森が原因で大変な状況になっています。
自ら行動すべき時が迫っていることをひしひしと感じる今日この頃です。
もくじ 【1】もうすぐできるみんなのビオトープ
東京 墨田区立二葉小学校
【2】「体験から学び、育つ高校生」
千葉県立船橋芝山高校 科学研究同好会 生物班
【3】ついに完成 トンボ デジタル生態図鑑
杉村 光俊氏
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【1】もうすぐできるみんなのビオトープ
東京 墨田区立二葉小学校
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ところは、東京、両国国技館の北東、徒歩10分ほどの処にある小学校。コ
ンクリートに囲まれた同校は運動場もコンクリート。この都会の真ん中の小
学校でビオトープをつくろうとがんばっている先生方と4年生の児童たちが
います。
ビオトープづくりを指導するのは、アサザ基金の飯島代表や向山さんをはじ
めとするスタッフの面々。5月から始めた環境授業も5回を重ね、いよいよ
11月にビオトープを校庭の一角につくることになりました。この事業は、
資金面含めNECリース株式会社が全面的に支援されています。
<授業の経緯>
児童に生き物の知識をつけてもらうために、
1回目 5月下旬 生き物と話をしよう。体のつくり、くらし、棲みかにつ
いて学ぶ
2回目 ヤゴ救出作戦 屋上のプールにてヤゴを救い、しっかり観察
3回目 6月下旬 学校にもっとたくさんの生き物を呼ぼう 近くの自然公
園へでかけ実際に棲んでいる生き物を身近で観察
4回目 7月上旬 生き物の道を作ろう グループに分かれてビオトープに
どんな生物が来てほしいかを発表
5回目 9月上旬 最終的なビオトープに呼びたい生物の発表とディベート
<児童はディベートで育つ>
5回目は夏休みが間にはさまったこともあり、児童は色々と生物を観察し、
構想を練ったようです。面白かったのは発表の中にザリガニがいたこと。以
前の授業ではザリガニはヤゴも食べつくすので入れないほうが良いとなって
いたのですが・・・これがディベートのきっかけとなって
結果的に児童の理解を深めることになりました。飯島先生はビオトープに入
れたい生き物の体のつくり、くらし、棲みかについて再度解説をし、最終的
な判断は児童に任せるという行動をとりました。
ビオトープ予定地は、校庭の片隅にあるコンクリートで作られた深さ1mほ
どの長方体に近い観察池。創立90周年の記念事業で作られたとの事です
が、ビオトープの視点から見れば???の器。現在は使っていません。これ
を、土で埋めてメダカとヤゴが最低棲めるものにします。幸いに隣接する江
東区に生息するアサザも、シードバンクとしての表層の土もいただけること
になりました。
<これからの課題>
ちなみに弊社の環境事業企画室も付近の生物調査や江東区への連絡など少し
お手伝いをしています。11月初旬が楽しみです。
ただ、心配は地域や保護者との連携がまだないこと。先生や生徒の大が代わ
ったときにもきちんと運営されていくための下地づくりがこれからの課題で
す。
これまでの授業の様子です。
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.9.27.pdf
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【2】「体験から学び、育つ高校生」
千葉県立船橋芝山高校 科学研究同好会 生物班
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前号で予告していた船橋芝山高校の科学研究同好会の生徒さんのインタビュ
ー記事です。現在3名と先生で芝山湿地を守っています。
<前半の活動紹介>
4月に入学してきた彼らは、これまでの半年で様々な体験をしてきました。
歓迎行事として船橋の海、三番瀬でカレイの稚魚を捕獲し学校の水槽で展
示、5月には当社も協賛したトンボサミットへの出席。校内展示のミズクラ
ゲに興味を持った生徒が入会し3名となり、その後は江戸川放水路でトビハ
ゼを捕まえ、繁殖期の7月まで校内展示を行う。7月には、付近住民を招い
ての校内ビオトープ芝山湿地でのホタルの鑑賞会のホスト役を務めました。
質問に答えられるように必死に勉強したとの事。
<夏休みにたくましくなる>
8月には近隣の市川西高校生物部と合同で和歌山県での自然体験合宿を行
い、自炊をして陸生ホタル(マドホタル、クロマドホタル)の観察や夜光虫
の観察などを体験しました。夜にテント担いで移動なんてこともあったと
か。超緊縮予算で5泊6日の生活を体験。普段では触れられない、大自然と
のふれあいに元々昆虫好きだった3名はさらに興味の対象が昆虫意外のも広
がったとの事です。そして度胸もつきました。
9月初めには、植物学会でのパネル発表。他の高校10校に混じって発表、
芝山湿地の価値について大学関係者からその大切さを評価され、改めて湿地
の持つ生物多様性の重要さについて認識をしました。
<これからの活動>
現在、湿地に棲むプラナリアの研究に着手。しかし、湿地の管理は大変で8
月は草抜きに終われる毎日だったそうです。毎日1時間半炎天下の中で2週
間 湿地の草刈(稲を植え ているので)、池の葦ぬき、外来種セイタカア
ワダチソウの伐採作業をこなしてきました。ついには顧問の佐野先生が熱中
症でダウンするほどのきびしい肉体労働。来年は早朝の草抜きで別のトンボ
の種類にも出会いたいと希望を語っています。
文化祭では、突然朝先生が持ってきたウーパールーパーとコウモリについて
展示をしたが、想定外だったので質問がでても答えられなくて
冷汗をかいたおまけもついたそうです。
<活動で感じること>
新しい発見があり、好奇心を満足させられるところに活動の楽しさがある
と、それだけに、疑問が出てきたら調べたくなるという変化が自分で感じら
れるようになりました。また、近隣の小学校へ出かけ、プールのヤゴの同定
やその後の羽化観察を通して知識も増えました。
自然環境について感じることは?の質問には、合宿に行って、自然豊なとこ
ろと都市部との温度の差を初めて感じたとの事。都市のヒートアイランドが
どういうものが分ったと答えてくれました。
<最後に>
この秋には250名の前での発表も予定されているとのこと。来年にはなん
とか部員を2名は増やしたい。そのためには、面白い話をしっかり準備した
いと語ってくれました。未来の自然科学者たちは、学校の宝 芝山湿地との
ふれあいを通して確実に成長しています。良き指導者との出会いは大切と改
めて感じたインタビューでした。
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【3】ついに完成 トンボ デジタル生態図鑑
杉村 光俊氏
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企画からほぼ1年。遂に卵期を除く、トンボの生態を網羅した学習用DVDが完
成しました。2004年秋より撮り溜めた250時間以上のハイビジョン映像の中か
ら、「飛びっきり(もちろん私にとってですが)」のカットばかりを選りす
ぐった約55分の作品です。
四万十川流域で記録された88種の内、83種が登場、トンボと環境、幼虫(ヤ
ゴ)時代、羽化、未熟期、捕食、縄張、連結・交尾、静止産卵、飛翔産卵、
臨機応変型産卵、休止姿勢、没姿の12項目から成り、
「トンボと環境」では渓流や水田など、トンボが生息する代表的な水環境と
その代表種を紹介。
「幼虫(ヤゴ)時代」では平たいものや肢の長いものなど、ヤゴには様々な
形があること、さらに捕食や脱皮の瞬間を紹介。
「羽化」では直立型と倒垂型という2通りの羽化プロセスを紹介。
「未熟期」では羽化を終えたばかりの成虫の移動場所や、色変わりなどを紹
介。
「捕食」ではカやハエからクモ、トンボ同士に至る、様々な捕食シーンを紹
介。
「縄張」では静止型と飛翔型の縄張や縄張争いを紹介。
「連結・交尾」ではトンボの連結システムや、交尾の各パターンを紹介。
「静止産卵」では泥や植物などに止まって行なう産卵を、
「飛翔産卵」では飛水や打空など飛びながら行なう産卵を、
「臨機応変型産卵」では、連結での産卵や同じ種類でも状況によって産卵方
式が変わる例などをそれぞれ紹介。
「休止姿勢」では種類や状況によって異なる休止スタイルを紹介。
「没姿」では交通事故や天敵など様々なトンボの死亡例を紹介しています。
そもそもなぜこのような作品制作を思い付いたかといえば、
「子供達のトンボ離れを阻止する」ということに尽きます。20年ほど前、大
阪では子供達に「トンボ捕りをしたことがない人は?」と問いかけると、必
ず何人かの手が挙がると聞いて耳を疑ったことがありましたが、いまや我が
四万十市内でも同様の現実に直面しています。
中には「ヤゴは嫌い」との声まで。何につけても驚きや感動の量は、それぞ
れの対象物に関する知識や経験がモノを言います。同じ標本や写真をみて
も、トンボ捕りの経験があれば珍しいものとそうでないものとの区別が付け
られ、そうでない人よりもずっと楽しむことができるでしょう。
今回制作のDVDでトンボのことをよく知ってもらえば、色々な水辺からトン
ボの姿を見出せ、かつそれぞれの行動にも思いを馳せてもらえるに違いあり
ません。このDVDは、かつてのように多くの人々にとってトンボが身近な存在
になって欲しいと願う、私の執念が形になったものと言っても過言ではあり
ません。
生態的価値はもちろんのこと、それ以上に美しい映像作りに腐心しました。
一球入魂ならぬ1カット入魂といったところでしょうか。またその思いが通じ
たのか、トンボ達もレンズからわずか数十センチメートルという至近距離を
ものともせず、迫真の演技?を披露してくれています。もちろんそれなりに
しんどいこともありましたが、完成してみればそれらもいい思い出です。ま
た編集作業の途中、その心得のある方がボランティアでナレーションを引受
けて下さるという、嬉しい誤算もありました。
何はともあれ多くの人達、特に子供達にぜひ見て欲しいと思います。その
後で本物のトンボを見てみたいという者がどのくらい出てくるのか、楽しみ
でもあり不安でもあります。
なおこのDVDの入手方法ですが、基本的に当トンボ王国で体験学習をされ
た、または計画されている学校などのほか、(社)トンンボと自然を考える会
会員の中で、小中学校で教鞭を執っておられる方などに無償で提供させて頂
くことにしています。
もちろんそのための資金も必要で、これは社)トンボと自然を考える会の会
員さんに1口1,000円のご支援をお願いしています。この、(社)トンボと自然
を考える会の会員資格を持ち、1口以上ご協力下さった方にも、その御礼とし
て1枚進呈させて頂きます。詳しくは本会事務局までお問い合わせ下さい。
このDVDがジリ貧のトンボ界を救うきっかけになってくれればこれに勝る幸せ
はありません。
社団法人トンボと自然を考える会
〒 787-0019 高知県四万十市具同8055-5 トンボ自然公園内
TEL:(0880)37-4110 FAX:(0880)37-4113
E-Mail:トンボと自然を考える会
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