[発行日:2007.07.27] vol.31 「豊かな森が、豊かな心を育む」アファンの森、 豊かな自然環境の中での小学校教育
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2007.7.27 ━★
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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。いよいよ各地で梅雨明けと
なりました。子供たちも夏休みに入り、朝の通学時間にその姿をみないのが
少しさびしい感じもしますが、セミの鳴き声も聞かれるようになり、夏のに
ぎやかさと暑さはこれからさらに増していくと思われます。
もくじ 【1】「豊かな森が、豊かな心を育む」
【2】「豊かな自然環境の中での学校教育
横浜市立獅子ヶ谷小学校
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【1】「豊かな森が、豊かな心を育む」
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読者の皆様こんにちは。
財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団の事務局におります河西(かさい)
と申します。先日大きな地震がありました。森の番人である松木によると、
「アファンの森の前の道が波をうった」ほど大きく揺れましたが目立った被
害はなく日常を過ごしております。被災者の方には心よりお見舞い申し上げ
ます。
前号の小桐様からのバトンを受けまして、「アファンの森」に子ども達を迎
えて実施している活動をご紹介いたします。
きっかけはニコル理事長の故郷ウェールズでの日常でした。ウェールズでは
診療所に通う方が「森へ出かけなさい」という処方箋を受け取ります。その
処方箋にしたがって森へ出かけ、それぞれのペースで森を散策し自宅へ戻り
ます。日本の「アファンの森」と姉妹森であるウェールズの「アファンン森
林公園」ではごく日常的に心身の調子を整えるために多くの人が散策してい
るのだそうです。また、小学校の授業が森で行われていたり、中学生が小学
生向けに森のシアターで「いじめは良くない」という劇を披露していたり、
教育の場としても普通に利用されています。
日本のアファンの森でも実施できないだろうか?ここから「アファン”心の
森”プロジェクト」が生まれました。日本アムウェイ?のOne by Oneこど
も基金(http://www.1by1.jp/)と協働で実施し始めて4年目を迎えていま
す。児童養護施設で生活する子ども達と、盲学校に通う子ども達を対象に、
年間5回(施設3回、盲学校2回)実施しています。
施設の子ども達と盲学校の子ども達とでは運営の細かい部分では違います
が、「心を豊かにする」ことを目的に、短い時間(施設:2泊3日、盲学校1泊
2日)の中でまずは「素直な言葉や表情が見聞きされる」ことを目標に実施し
ています。
その内容はというと、地元で生活し日常的に森を楽しんでいる方々をガキ大
将にし、子ども達を連れまわして森遊びです。冬はクロスカントリースキー
と雪遊び。その他に、夜の森で火を囲む、森のお話会、ツリークライミン
グ、ニコルさんと分かち合い、森でリズムセッション、などさまざまなこと
を試しています。
大切にしているのは、ガキ大将である地元の方々が森でおもしろがっている
こと、本気で楽しいと思っていることに子ども達を巻き込んでいる、という
ことです。
森(自然)は受容の存在だと考えています。
特にアファンの森は生き物の関わりが多様です。
そんな森の中で、ガキ大将と活動しながらアウトプット(話す、体を動か
す、絵を描く、涙を流す、など)すると、少しづつ子ども達は開放(解放)
していきます。素直な状態になったところで森のさまざまな生き物やスタッ
フ達で子ども達を磨いて輝かせるそんなイメージをしています。
その子らしい笑顔が見えたり、森の奥のほうへ入ると、自傷行為が和らいだ
り、最終日に「大きな家族みたい」と言っていたり、「帰りたくない」と涙
を流していたり、帰りの新幹線で、いつも言いなりになっていた子に「私は
嫌だ」とはっきり表現できたり、アートセラピーから「もう一度人を信じて
みよう」と言う絵を描いたり、アートセラピーで怒りが浄化していることが
伝わってきたり、「森のうた」を作詞作曲してくれたり、森の木々がおしゃ
べりをしている絵を描いてきてくれたり、…子ども達が表現してくれたこと
や、日常に戻ってからアンケートやお手紙で伝えてくれることなどをみる
と、改めて森での活動は心に響いているんだな、と感じさせられます。
アファンの森は「生き物のための森」です。
さまざまな生き物が暮らせるように、荒れた森に長い時間多くの手を入れ
て、豊かな森に再生しました。つまりアファンの森は、ニコルや松木の「愛
情」がこめられている場所です。「どんな楽しいことをしようか?」と下見
をして考えている講師やスタッフの愛情もこめられています。
このアファンの森で「愛情」を受け取った子供たちが、将来的に「森」を大
切に残していく動きに関わり、森がごく日常的に当たり前に存在する社会に
なればよい、と考えています。
実は、こうしてこの文章を書いている2週間後に、今年3回目が実施されま
す。
目に映るコナラの葉
頬を伝う風
草花や土の匂い
ヤマグワの甘酸っぱい味
聞こえてくるキビタキのさえずり…
すぐそばの木々からはできたての酸素が放出されています。
まずは近くの木々の広がるところへ出かけてみてはいかがでしょうか。上を
見上げる、深呼吸、ストレッチ、散歩、読書、昼寝、整備作業、…などゆっ
くりと『自分自身のための時間』を過ごしてください。
小さな生き物の動き、香りの変化などに気づくようになったらしめたもので
す。そんな自分の感覚を味わってください。
そうしているうちに、ここに書いたことが実感いただけると思います。
そして、ぜひ実感したことを身近な方にお話してください。
「今日ね、少し時間を作って○○森林公園に出かけてきたんだよ。
そうしたらさぁ、何だか△△のような感覚に気づいてね、…」
自分の体の変化、感覚の変化、感じたこと、気づいたこと、ひらめいたこ
と、…
そんな話をしているあなたを見て、聴いている方は「私も出かけてみようか
な」と思うことでしょう。
子供が書いた絵です。
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.7.23/shaberi.jpg
森の歌です。
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.7.23/mori.jpg
財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団HP http://www.afan.or.jp/
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【2】「豊かな自然環境の中での学校教育
横浜市立獅子ヶ谷小学校
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6月末に横浜市鶴見区にある市立獅子ヶ谷小学校を訪問しました。周りは自
然環境が豊かで、三ツ池公園、獅子ヶ谷小、二ツ池とビオトープがつながっ
ています。学校の特徴は、自然と親しく触れ合う体験教育が盛んなこと。関
森校長に「学校全体がビオトープ」をご案内いただきました。
校内には、果樹がたくさん茂り、中庭では、児童が鉢植えトマト、なすびを
栽培。梅や桃、栗など食べられる自然の恵みもいっぱいです。
道路を隔てたところには各学年の畑があり、ジャガイモなど育てています。
これ以外にも、徒歩30分ほどのところに 田んぼや畑を借りて、5年生が
稲づくり(もち米)、6年生が蕎麦づくりを体験、その後菜の花を植え、卒
業式に使用しているそうです。
学校ビオトープは28年前の創立当時に作られ、流水が流れる田んぼがあっ
たそうですが、かなり以前に装置が壊れていて、今は落花生が植えられてい
ます。ここには雨水だけの大きな池があり、止水性トンボ多く棲んでいま
す。訪問した日も、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ
などが数多く見られました。
さらに、神奈川県絶滅危惧種であるチョウトンボ、やキイトトンボも飛翔、
マルタンヤンマの抜け殻も見られました。また、池では多くの水生植物が植
栽されています。アサザ、イヌタヌキモ、ヒルムシロ、ミクリ、ウキアガラ
など、池の傍には木が茂りトウネズミモチの花が咲いていました。池の反対
側には草地があり鬱蒼としており、オンブバッタやモンシロチョウなど色々
な生物が見られました。
昨年は専門家を招き、ビオトープに棲む生き物とその価値についての話をし
てもらっています。
関森校長は自然環境教育に熱心な方で、週に1度の朝会で環境のテーマを話
され、2年目になっても環境の話のネタはつきず、児童からは環境の事しか
話さない先生と見られているとご自身で笑っておられました。
朝会での話題のひとつに、ゲンジボタルが絶滅する恐れもある、カワニナに
似た外来種の巻き貝「コモチカワツボ」の話をしたとのことです。
正しい自然環境の知識がストレートに児童伝わっています。そしてその成果
か、この池にはザリガニは一匹も入っていません。
また、近くの三ツ池から採ってきたクヌギ、シイの実生から苗を育ててい
て、ビオトープや校内に植林するそうです。児童の環境の知識も相当増えた
のではないかと思われます。
ビオトープ保全のために、NTTドコモの助成金で流水循環ポンプを設置し
ています。現在は未稼働だが将来的なことを見据えての実施との事。日本生
態系協会に水質調査を依頼するなど学校から外部への働きかけを積極的に行
っていらっしゃいます。ちなみに水質は中性、貧栄養であったとのこと。プ
ランクトン、水生植物、ヤゴ メダカなどの循環がうまくいっている証拠で
す。
悩みは、絶滅危惧種の生物が多いために盗難にあうこと。昨年ドコモのHP
にビオトープの写真を載せたら、2回も草を捕られたそうです。
どうやらネット販売されているらしいとの事。それだけに外部への公開は原
則的にしていないそうです。こんなに貴重な種がいるのに紹介されないのは
残念な話ですが、心無い人達から生物を守るためには仕方のないことかもし
れません。
児童達にはビオトープは1週間に1回開放。あくまで観察が主体の利用で
す。普段自然に触れるのは中庭や校庭が中心で、少し離れているこのビオト
ープは生き物たちの住処として児童に認識されています。
地域とのかかわりも密度が濃く、先日はカブトムシ 幼虫80匹が届き、成
虫に孵らせようと児童が育てています。自然豊な環境の中で豊な感性、優し
い心を育てようとする関森校長の思いが伝わりました。
獅子ヶ谷小学校のHPです。
http://www.edu.city.yokohama.jp/sch/es/shishigaya/
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