[発行日:2007.07.19] vol.30 ホタルは夏の人気者、 OB,OGが支える小学校のビオトープ
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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。西日本で大雨を降らせた今
回の梅雨前線に加え台風4号の被害。さらには中越沖地震、今回の災害でお
亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた
方々に心からお見舞いを申し上げます。被害にあわれた方々の一日も早い復
興をお祈りします。
もくじ 【1】ホタルは夏の人気者
【2】OB,OGが支える小学校のビオトープ
【3】NHK クローズアップ 現代
「身近な昆虫に異変あり」より
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【1】ホタルは夏の人気者
〜ゲンジ・ヘイケホタルの観察会〜
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初夏の夜をより魅力的にする昆虫といえば、やはりホタルではないでしょう
か?学校ビオトープや森の中での観察会など今年は5回ほど、関東、岡山で
観察する機会がありましたので報告したいと思います。
今年初めての観察会は東京吉祥寺にある武蔵野自然観察園でスタートしまし
た。ここでは、ゲンジボタルとヘイケボタルをゲージ内で飼育、5月の中旬
からに光はじめ、ピークは6月初旬とのこと。一番の苦労はカワニナの養殖
とのこと。ゲンジ、ヘイケが一度に見ることができるということでは都内で
も数少ない場所ではないでしょうか。8時過ぎて真っ暗になると飛びはじめ
ますが、この時間帯と11時過ぎくらいが一番舞うと伺いました。最盛時に
は一度に100匹近くは見られるということが一番うれしいところです。観
察会は6月初旬に実施されています。
http://www.shizenjuku.org
千葉市の稲毛二小 ここでは学校ビオトープで飼っているヘイケホタルの観
察会が6月末にありました。親子での観察が中心で、まずは、ホタルの一生
をスライド使って説明、見る時の態度も学び、静かに1列に並んでゆっくり
とビオトープを一周します。一度で見られないので3周する人もいます。ホ
タルの気持ちになって、虫よけスプレーは使わずに観察、残念ながら雨天で
あまり多くは見られませんでしたが、300人強もの人が集まりました。同
校のOBの中学生がスタッフとなって誘導、数少ないホタルだけに見えると歓
声があがり、それだけにいのちの尊さを共有できました。
横浜市港南区にある下永谷小学校では、校庭にある田んぼの横の池でヘイケ
ボタルを飼育しています。付近は住宅地で自然が残るのは今ではこの学校の
み、10数年前から自然体験、観察のビオトープづくりが始まり、現在では
OBが小学校の後輩を指導するまでになりました。昨年の観察会では付近の方
400人が集まり、単なる学校ビオトープでなく貴重な自然体験の場ともな
っています。
心配なのは、学校の南に位置する鎌倉市でカワニナに似た外来種「コモチカ
ワツボ」が大発生、ゲンジがこれを食べると5%しか、羽化せず光も暗いと
のこと、単為生殖で増えると考えられているため脅威となっています。さま
ざまな鳥の飛来地になっている同小学校にコサギなどが足に貝をつけてやっ
てきた例があるとのことで学校ビオトープのヘイケボタルにも注意が必要で
す。「コモチカワツボ」の写真はインターネットでも見ることができます。
見つけたら即除去したいものです。
私の住む岡山の家の傍には小さな流れがあり、毎年少数ですがゲンジボタル
を見ることができます。今までは意識したことがありませんでしたが、関東
地方で見たゲンジボタルの点滅速度がまったく違います。天竜川の西と東で
点滅の早さが違うとのことです。以西の種は2秒、以東は4秒の点滅、今後
も遺伝子交配が起きないことを祈ります。
千葉県 船橋芝山高校理科教諭の佐野先生は「サノリウム」と名づけるオリ
ジナルヘイケボタル飼育機械を開発されており、理科室で見せていただきま
した。長さ40cm幅20cmほどの透明なプラスチックケースに同校のビ
オトープ棲むヘイケボタルの幼虫が入っており、餌のカワニナを食べ、中央
にあるコケやシダの生えた土の部分で繭をつくり、羽化できるようになって
います。生徒に少しでも興味を持ってもらおうとする先生の努力の結晶で
す。今はもう羽化している頃でしょう。
とかく人気のあるホタルですが、新しく飼育する際には近隣の種であること
を確認し、遺伝子汚染が起きないようにすることが大切です。えさにも十分
注意をして、コモチカワツボなど与えないようにすることが肝要です。コモ
チカワツボにより、日本のゲンジボタルの絶滅を危惧する声もあります。
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【2】OB,OGが支える小学校のビオトープ
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先ほどご紹介した横浜市立下永谷小学校は、小高い丘の上にある小学校で
す。同校は創立40年。それまでは、松林のある山でした。今ではすべて住
宅地となり、もともとあった雑木類は校庭の一角に残っているのみです。
それだけに、孤立した緑の環境を守ろうと学校の自然環境整備が行われてお
り、卒業生、PTAが中心となって池を作ったり、田んぼを作ったり、色々
な自然と触れ合うゾーンを整備、「自然体験博物館」と呼ばれるこれらの場
所は、田んぼ・畑やふれあい水辺の自然体験ゾーン、そよ風の散歩道、フラ
ワーロードなど8つのゾーンに分かれています。
そして、昨年より卒業生クラブ「SSC」が正式に発足。大学生から中学生
まで60人がメンバー登録、実際の活動は時々の都合で10人前後が参加、
同会の代表は現在高校2年生が務めています。
各ゾーンの案内看板作りや、近くに流れる大岡川の水質、生き物調査などを
実施。その他、自分たちで田植えの実習も受け、自然体験ゾーンを使ったイ
ベントなどを小学生向けに企画しています。先輩が後輩と一緒に学ぶビオト
ープです。活動は土曜日が中心です。
そこまでOB達ががんばるのは、やはり地域の自然環境特性によるもの
現在の児童の親の世代が第2世代で、ふるさとはこの地、大学生高校生が第
2−3世代であるので地域に1箇所しかない自然が体験できる小学校への思い
は強いのです。それだけに卒業生クラブは自分たちがいつでも帰れる「ここ
ろの故郷の機能もこの小学校は持っています。」と胸を張ります。
夏の自然観察のためにヘイケボタルの里親になり、ヘイケボタルの幼虫を育
て、蛹化前に池に戻して羽化させているとのことです。だからこそ蛍の観察
会では400人もの人が詰め掛けるのです。
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【3】NHK クローズアップ 現代
「身近な昆虫に異変あり」より
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先月ご案内した NHK クローズアップ 現代ですが、ご覧になりました
か?「身近な昆虫に異変あり」のテーマで放送されました。
1.東京にクマゼミ大発生
これまで考えられていた原因は温暖化、ヒートアイランド現象ですが、
これ以外の理由が見つかり、「都市の緑化事業」のために九州からクスノキ
を運び、その根についていた土にクマゼミの幼虫がついていました。
11年前からクマゼミ発生、クスノキの移植と時期が重なるとのこと。
江戸川区 で抜け殻 7年かかることから 根についていたと断定。せみの
行動範囲は数100mだから、あまりにも早すぎる東進です。
生態系の視点から見れば、絶対にしてはいけな、あってはならないことが、
平気で行われており、商業主義の暴挙があることを知りました。
大阪では、クマゼミが光ファイバーケーブルに産卵し、断線する事態が
発生しているそうです。
2.アカトンボ激減
原因が特定できていないそうですが、1990年代半ばから減りはじめまし
た。理由としては、
?水田環境変化 乾田化 稲の吸水力高めるための水の引き上げ
?新農薬の普及 苗床に水分浸透するタイプの農薬により、甲殻類が
減り、水生昆虫減り、魚類も減った。藻類は増加し、食物連鎖のバランスが
変わり異変が起きている。と石川県立大学 上田教授は言っておられます。
このほか、湿った土を好むニイニイゼミが土の乾燥により生活できなく
なり減っているとの報告です。
日本の原風景は昭和30年代まで、それまでは各地の生態系は土地由来
で個々の生物がすむ環境が守られていました。今は状況がまったく違
います。道路工事で法面に植物を植えるときには、現在ほとんどが外来
種であると業者から話を聞いたことがあります。そのわけは、その種が
一番安く手に入りやすいから、食料だけでなく、緑化植物さえも輸入さ
れ、私たちが知らないうちにどんどん増えていると言う事実。
同番組の後半では生態系復活の事例として、東京立川市 昭和記念公園
で地元植物の自然の回復力を使い復活させた事例報告や、このメルマガ
に寄稿をいただいている霞ヶ浦で湖の土、植物を利用しながら、自然再
生に取組むアサザプロジェクトの活動が紹介されていましたが、ディレ
クターが突然変わったらしく中途半端な紹介と終わり方でした。番組の
中盤まではきちんとした調査を行い、後半の盛り上がりを期待したので
すが・・・
身近なものの変化が一番恐ろしいそれは、変化のスピードが速すぎるか
ら、これは人間の健康が脅かされることにつながると番組では警告して
います。
それだけに、地元にある生態系を残し、学校でも在来種によるビオトー
プ作りが不可欠であり、地域の方々にも、在来種の大切さを伝えていく
必要があると痛感した放送でした。
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