[発行日:2008.03.31] vol.39 コラム 杉村 光俊氏 トンボに関する話題 あれこれ、「谷津田で青春賞」茂原樟陽高校 

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
┃ 
┃     QQ     【スクールビオトープ メールマガジン】
┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃
┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃        vol.39
┃     ┃
┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室
┃     ┃

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2008.3.31 ━★

※文字フォントは、MSゴシックの等幅フォントで最適に表示されます。
※登録・解除は下記のページよりお願い致します。
https://www2.tombow.gr.jp/merumaga/eco.php

――――――――――――――――――――――――――――――――――


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。桜の開花情報が毎日天気
予報で聞かれるようになりました。
 いよいよ、春本番。新入生を迎えるまであと少しです。
今回は、杉村さんのコラムと学校2校のビオトープ活動取材報告です。
いつもより、少しボリューム増ですが、最後までお付き合いください。


   もくじ 【1】トンボに関する話題 あれこれ
              杉村 光俊氏


       【2】学校ビオトープコンクール日本生態系協会 
          会長賞 神谷小学校の教育
           

       【3】田園自然再生活動コンクール
          「谷津田で青春賞」茂原樟陽高校 農業土木部
      

       【4】ホームページにトンボエコフォーラム新設
          

       

◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


        【1】トンボに関する話題 あれこれ
               杉村 光俊氏

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇


成虫越冬できない赤トンボが長寿日本記録を更新。これが最近のトンボ王国
で一番のトピックスです。これまでの日本記録は福井県と兵庫県で記録され
た、共にキトンボ♂の1月22日でしたが、今年1月23日にトンボ王国で同じく
キトンボ♂の生存が確認され、日本記録を更新しました。記録が何日伸びた
のか、その要因は、などについては来る4月20日発行予定の、社団法人・トン
ボと自然を考える会会報「トンボと文化」に詳しく書かせて頂く予定です。

 次に、昨秋完成した学習用DVDの反響を少々。日本全国から多くのご支
援を頂き、これまでに四万十市内の小・中学校を皮切りとして県内外の教育
機関や、そこで教鞭を執られている本会会員の方々などに200枚以上プレゼン
トさせて頂きました。市内外の小学校から感想文も届けられていて、その一
部は「トンボと文化」で紹介させて頂きました。概ね好評で、こちらの狙い
通りトンボならではの多様な産卵行動が特に感動をもって迎えられているよ
うです。「名前を沢山覚えられて嬉しかった」、「トンボのことをもっと知
りたい」、「トンボを大切にしたい」といった文章が踊っていました。中に
は「トンボは意外と奥の深い昆虫だと思った」、「トンボもなかなか侮れな
い」など、ユニークな感想もありました。ただ、「採ってみたい」が皆無な
のは、どう捉えたらいいのでしょうか。なお、会では引き続き各地の学校に
このDVDを贈る活動を進めています。詳しくは「トンボと自然を考える
会」事務局まで。

次に、新しく誕生した2つのトンボ・ビオトープの現況です。初めに足摺岬
のビオトープから。2006年11月に水入れをして早々の昨年5月には、
アキアカネを始め数種の赤トンボの羽化が観察できました。中でも2006
年に主要な生息地が埋め立てられ、高知県内での生息が危ぶまれるタイリク
アカネが多数羽化してきたことは嬉しい驚きでした。6月には、この地を代
表するトンボのミナミヤンマが摂食飛翔する姿も見られました。
夏にはギンヤンマやショウジョウトンボなど、止水環境の乏しい同岬ではほ
とんど見ることができなくなっていた種類も次々とやってきました。
秋には同岬で未記録だったコノシメトンボ、なぜか激減していたネキトンボ
も多数訪れ、華麗な連結産卵を見せてくれました。一方、温暖化で分布域を
北上させている台湾型ベニトンボが連続的に飛来、6月4日には早々と産卵
行動が観察されたばかりか、近くの小学生を集めて12月上旬に実施した観
察会では2頭の幼虫まで見つかりました。

 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.3.27/1.pdf

もう1ヶ所の日高村渋川地区は、ミナミヤンマ県内最大の生息地として全国
の愛好家によく知られています。かつては渓流沿いに広がる棚田が餌場とな
ってミナミヤンマを始め多くのトンボを育んできましたが、近年は放置田の
増加などでトンボ類の減少が深刻化していました。そこで地元の人たちが放
置田の一角をトンボ・ビオトープとして整備、同時に生物の生息が困難にな
るほどの日照不足を招いていた渓流沿いの雑木を伐採してくれました。果た
して、今年2月に行った調査ではアサヒナカワトンボを始め、ヤマサナエ、
コシボソヤンマなど、驚くほど沢山のヤゴの生息が確認できました。シーズ
ンの到来が今から楽しみです。
なお、足摺、渋川両ビオトープ共、トンボ王国産カキツバタやヒメコウホネ
などが水辺に彩りを添えており、内、渋川の方は本年3月から来年2月まで
の期間、高知全県を会場として開催される「人、花、土佐出合い博」の一会
場にもなるそうです。
 最後に、お知らせを一つ。昨年末より、数人のメンバーと一緒に今年6月
刊行予定で中国・四国地方のトンボ図鑑制作に取り組んでいます。詳細は次
回で。



◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


      【2】学校ビオトープコンクール日本生態系協会
         会長賞受賞 神谷小学校の教育


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇


2005年に茨城県牛久市の市立神谷小学校に染谷校長が赴任。環境教育に
力を入れる方針を打ち出されました。それを機会に専門家を外部講師として
招いた総合学習が本格的にスタートしました。
指導にあたったのは前年から授業を行っていた飯島氏を初めとするNPO法
人アサザ基金のメンバー。この春卒業した6年生が4年生になった年の事で
す。

学校にあったビオトープを使い、ヤゴやメダカなどの体のつくり、暮らし、
棲みかを学び始めました。年間で7〜8回の授業を重ね、プールとビオトー
プの池にいるヤゴの比較も行い、環境の違いでやってくるトンボも異なるこ
となど学びました。その時にトンボの羽化を見たこともあって子ども達のに
関心は大変高まりました。

プールにやってきた生き物はどこから来たのかを調査するために、現在は市
の土地となっている、学校の横の荒れた休耕田など霞ヶ浦へ続く水の道を歩
いたそうです。そこでわかったのは、池だと思っていたところが実は昔、谷
津田であったこと。水路は近所の結束川から小野川を経て霞ヶ浦に繋がって
いることなど。
今は牛久沼とも分断されているが以前は繋がっていたようだということも分
りました。この谷津田は20年前までは実際に米作りをしていたとのこと
で、トンボやメダカ、カエルの視点から見た生き物の道をつなぐ提案を総合
学習の発表会で市長に対して行いました。

5年生の総合学習では「町づくり」をテーマに歴史1、福祉1、自然2の班
に分かれてそれぞれが提案できるように学んでいきました。すぐ近くに老人
ホームがあり、そこに住む方々に話を聞いたりもして、休耕田の再生計画な
どを練りました。最終的に歴史、福祉、自然の3つのテーマが繋がるように
まとめ直して、児童が運営するパネルディスカッションとして発表しまし
た。
その時に、保護者、市の教育長、話をしてくれた近所の方々、また元の谷津
田の持ち主で稲作りを行っていた方も参加され、児童の生き物の道作りの提
案を聞いてくれました。もともと赤い鉄分が多い土で収量も少なく、耕作放
棄せざるを得なかった背景も知る事ができました。

4年生の頃は池の改修の提案にとどまっていたものが、カワセミの営巣がで
きるように山を作り、池の横に田んぼを作ることやその田んぼや池とコンク
リートで固められた水路をつなぎ、生き物の通れる道を作ることまで含めた
提案に変わっていったのです。市の土地だけに許可がないとコンクリートを
一部取り除き池、田んぼとつなぐことは出来ないので申請書を自分達で書く
というところまで進展。総合学習の目的が果たされた研究発表となりまし
た。
提案に基づき2007年1−2月に工事を行いました。ニホンアカガエルの
産卵に間に合うかどうか心配だったそうですが掘った池にはすぐに水が溜ま
り、アカガエルが無事に産卵をしました。

6年生になり、5月に田植えをするとどこからかメダカも入って来たとの
事。8月にはアサザ基金が指導する秋田の八郎湖の小学生と交流を行い、1
0月には潮来市に彼らを招き、地域を越えたビオトープつながりの交流が出
来ました。
そして仕上げとなった11月の総合学習の発表会そして、2月の全国学校ビ
オトープコンクール発表会へと繋がったのでした。

学校としてはこれからの学年も継続的にビオトープを使用した総合学習がで
きるようにと地域の方々も巻き込んだコミュニティを創設し、OBにも関わ
ってもらえるようにこれから動くとのことです。
先生は4年ほどで変わるので、地域を知り、生態系のことを知り、授業を知
る人を増やして行きたいとの考え。
ただ、生き物は帰ってきたが、鉄分の多い土や水に油が混じるなどの事が起
きていて、水質、土壌の検査がまだのため、残念ながら 自分達で作った米を
食べではいないとのこと。周囲の環境調査がこれからのビオトープ活用に必
要という課題も残っている神谷小隣のビオトープです。


  http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.3.27/2.pdf



◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


     【3】田園自然再生活動コンクール
       「谷津田で青春賞」茂原樟陽高校 農業土木部

      
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
     

前回にひき続いて田園自然再生活動コンクール優秀校の紹介です。
5年前から、学校から約10km離れた場所で、地域の人と一緒に30年以
上放置された谷津田を道作り、篠竹伐採からはじめ、ヨシガマを除去し、見
事に田園として再生。無農薬で米作りを行っています。

田園自然再生活動コンクールでその素晴らしい活動報告がOB2名と現役高
校生からありました。今回学校と谷津田を訪問し、農業土木部顧問渡辺先生
と2年部長小高君、1年副部長八木君にお話を伺いました。

2003年から始まったこの事業に関わるのは高校生と地主だけでなく、卒
業生も支援しており、地域の理解ある人々もオーナー制度による米作りを体
験しています。現在はGNP120という市民グループが結成され、谷津田
の管理作業を行っています。また、地域の農家の人もこの米作りの方法に興
味を持ち、見学後保全活動にも協力しています。
さらに、地元小学4年生の農作業体験(田植え、稲刈り、自然観察会)など
にも繋がっており、地域とのコミュニケーションの輪が広がっています。茂
原樟陽高校の3年生の授業としても使われていますが、今後はさらに広げた
い意向もあります。

この3月に3年生が卒業し、2名だけになるのですが、部長の小高君と副部
長の八木君は新入生の加入に期待を膨らませています。今回、田園自然再生
コンクールで賞を獲得したことは新入生にとっての大きな動機付けになるで
しょう。

<インタビュー内容>
・一宮町に田んぼを持った経緯は? 耕作放棄された谷津の状況を調査して
いたら、30年間放置された谷津を新たに購入して、稲作を始め ようとす
る地域の方と出合った。自分達農業土木部も田園の再生をしようと考えよう
としていたので両者の考えが一致して始めた。 
         
・どのようにして復元していった? まずは、田んぼに着くまでの農道拡
幅、篠竹刈りを行い砂利を敷き、人や軽トラックが通れる道づくりから始ま
った。それからスロープ形成し、田んぼに入れるように、次に、農業水路の
修復にかかり、3つの小落差溝を設置した。そこから放棄水田の開墾に着
手。天地返しし、葦の根を浮かせる。これが根気の要る仕事だった。そし
て、ため池の造成を行い観察用に木道設置もした。  
実験的な田んぼにする意味合いで畦も考えて作った。

・どんな米を作っているのか? 単に米を作るのではなく、米ぬか、ぼかし
を稲刈り後に投入し、冬季湛水も行いイトミミズによる土壌の米ぬか分解や
ニホンアカガエルの食物連鎖や生活を利用し、結果除草の手間の少ない米作
りを行っている。そして調査・仮説・実験・検証というステップで確認しな
がら学習を進めている。

・田んぼとイトミミズの関係について?  肥培管理の指標となるイトミミ
ズの数で土の豊かさが分る。
環境を知る生物としては指標種として計測し易い。1反(1/10ha)あた
り、300万匹居ると多いといわれている。6月では1反当り1000万匹
はいる。良い有機質の田んぼには、2000万匹はいる。

・小学生との交流は?田植え、稲刈り、自然観察会 田んぼの近くの小学校
4年生を行っている。子ども達は自然の生き物と身近に触れてないので、昆
虫に興味を持つ。谷津なので周辺には虫が沢山居る。保護者の方がミミズ調
査はいやがる。

・米の取り扱いは? 取れた米は自分達で分けているが30、50kg。
今後店頭で販売予定あり。名称は検討中。  
                             
・実際に農業土木部で活動して面白いところは?
小高君:米を作る事が面白い。無農薬、冬季湛水と乾田の差がイトミミズの
生息数の差になり、雑草の生え方が変わってくるところなど。米ぬかで作る
還元層(トロトロ層)は人間が入るとやわらかいが、稲はしっかり根を張る
事できる。
八木君:自然の中の活動なので初めて泥まみれになって新鮮で面白い。カマ
で伐る、カマを磨くなどの技術も覚えた。米作りの実感。収穫の喜びはとく
に、同時に米作りは時間がかかるものだとも実感した。 

・悩みは? 学校から遠いので先生や先輩に乗せてもらわないといけない
点。(学校から南に10km 九十九里浜の南端に位置し、平野から房総丘
陵が始まったところ)それだけに準備をしっかりしておかないと行けない。
夏の日よけの確保。直射日光が強くさえぎるものがない点。

・泥を触ることで感じることはないか?
砂と違い、粒子が細かいのでこれまで気にもしなかったのにその差が分って
きた。どろどろなのに根を張って苗が育つ不思議さ。掘ってみると層がある
のが分る。手入れがあるから土が乾かず生きている。気温、湿度で変わる。
人の手が入るとやわらかいさくど層ができる、水との混じりあいで土は生き
ている。植物も命を貰っておいしい米ができる。

最近の田んぼでは、ニホンアカガエルが282の卵塊を生み、それを狙って
ノスリなどもやってきている。昨日はセグロセキレイが来ていた。イトミミ
ズという餌が豊富にあるから。と解説してくださった渡辺先生。

初めて訪れた田んぼですが、ここにいるとなんとも満たされた気持ちにな
り、もっと居たいと思わせる場所でした。やはり命が育つところだけに、特
別な場の力があるのではないかと感じた御堂谷津でした。

 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.3.27/3.pdf
 


◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


      【4】ホームページにトンボエコフォーラム新設


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
     

環境学習・授業に関心がある、また、実際にたずさわっておられる学校の先
生やNPO法人会員の方々の情報交換の場の提供を目的として
「トンボ・エコフォーラム」がオープンしました。

ぜひ、一度のぞいてみてください。そして、皆様の活動やご意見など投稿お
願いします。

  http://www2.tombow.gr.jp/eco_project/eco_forum/index.html 

また、4月からはトンボをテーマとした環境学習ページ 「トンボ授業」が
スタートします。アサザ基金 飯島氏監修、写真提供トンボと自然を考える
会 杉村氏にご協力をいただきます。
コンテンツは
・トンボとおはなしできるようになろう ・ヤゴ授業 ・トンボ授業 
・みんなで学校ビオトープを作ろう、遊ぼう 
・トンボの道 生き物の道をつなごう などご期待ください。




★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
┃ 
┃  【スクールビオトープ メールマガジン】

┃   発行者: 株式会社トンボ  環境事業企画室      
┃        〒700-0985岡山市厚生町2-2-9
┃        Tel:086-232-0368 Fax:086-225-6680
┃        [東京分室]
┃        〒136-0071 東京都江東区亀戸2-34-4
┃        Tel:03-5626-2257 Fax:03-5626-2268

┃   □ URL:http://www.tombow.gr.jp/eco_project/

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★


前のデータを表示

後のデータを表示

バックナンバートップへ