[発行日:2008.05.31] vol.41 船橋芝山高校 芝山湿地の不思議な魅力、大袋東小学校 いきもの調査はじまる 

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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2008.5.31 ━★



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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。小満を迎え、まもなく衣替
えの季節となりました。6月は入梅し、芒種(ぼうしゅ)夏至と節気も進ん
で行きます。生き物がすくすくと育つこの季節草花の日々の変化には驚かさ
れるものがあります。今号は2つの話題をお送りします。



   もくじ 【1】船橋芝山高校 芝山湿地の不思議な魅力
 


       【2】大袋東小学校 いきもの調査はじまる

           

          

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       【1】船橋芝山高校 芝山湿地の不思議な魅力


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<船橋芝山高校での里山シンポジウム>
さる5月10日、これまでに数回ご紹介した船橋芝山高校で生物多様性ちば
県戦略の実践シンポジウム「里山シンポジウム教育と里山の分科会」が開催
されました。堂本千葉県知事、地域の方、芝山湿地を整備した前担当の先生
方の出席もあり、その生い立ちとともに芝山湿地の重要さを理解したシンポ
ジウムでした。

<堂本知事も参加>
堂本千葉県知事は18年前から生物多様性に関わっておられ、その重要性を
広く伝えられ、10年前の「温暖化に追われる生き物達」今年は「温暖化と
生物多様性」を牧野 富太郎博士以後、初の植物界での文化功労者となった
岩槻邦男先生と共著で出版されています。
近著では、船橋芝山高校ビオトープ「芝山湿地」を取り上げられています。

シンポジウムの中で、一番大事なことは都会の中でどうやって自然を保全し
ていくのかが大事。都市に自然が少ない中で、学校の中に 昔の生態系を残
し、生徒や先生が何代にもわたって築き、また地域の方々の理解に支えられ
てきた芝山湿地は大変な価値がある。と発言されました。

<千葉県 学校ビオトープづくりの予算化>
県内のこの学校にも「芝山湿地を作りたい」と今年度から予算化され、すで
に県下の小中高校からの応募を待っている段階です。
誰が自然環境を守るのか?それは、大臣ではない。一人一人が気づいて行動
することが大事。今日はゆっくり芝山湿地を学んで欲しい。と挨拶され次の
公務へ向かわれました。

<生徒によるプレゼンテーション>
2月の全国学校ビオトープコンクールで金賞を受賞した同校。科学研究同好
会の(活躍が認められて最近部に昇格しました)メンバーが大会と同じ内容
をパワーポイントで説明してくれました。

湿地を整備したことで、見られるようになった千葉県の絶滅危惧種ヒメアカ
ネ、アオヤンマ、ニホントカゲなど一覧にした調査報告、授業での田んぼの
活用、付近の住民の方を呼んでのホタル観察の夕べ。
今年は傍にある老人福祉施設の方との交流予定やオニヤンマ、オオシオカラ
トンボの生態の研究(回転体にとびこむ謎に挑戦)など、これまで・これか
らを分り易く説明してくれました。

生徒の発表の後に、芝山湿地の変遷の補足を実際に取り組まれた南波先生、
福士先生がなさいました。

芝山湿地整備状況の変化や湿地の活用状況の画像です
   http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.6.2/2.pdf

<芝山湿地の整備経緯>
学校創立以来、葦原として放置されていた湿地。学校ができる前は葦原とい
っても建設残土がある利用価値のないところだった。
しかし、斜面林からくる湧水が貴重だった。これを守り、自然の状態で見ら
れるようにしたいと考え、99年から2名加え、用務員、生徒、他校の先生
に加わってもらって、葦を刈り、土の中のガラス瓶、金属など色々な建設廃
材・瓦礫を撤去する地道な作業を進めた。ここまで来るのに何年かかるか分
らなかった。今、田んぼになっている所は当時裸足で入るなど考えられなか
った。

湿地に接する付近の住宅の方に「自然便り」を持って行きながら理解を深め
ていただくようにした。

この「里山生態園芝山湿地」は宅地や学校が開発される前の谷津田としての
再生を目指した。しかし、昔居たメダカ、ヘイケボタルはすでに、いなくな
っており、戻ってくることはありえないので人為的に持ち込んだ。整備後に
キンラン、アマドコロなどが帰ってきた。

<地元の方の影の支え>
このあと、付近の方々から衝撃的な話が聞けました。学校や宅地ができる前
はまさに谷戸であり、稲作が営まれていた、山の斜面からは湧水が豊富であ
った。今の芝山湿地にある斜面は、マンション建築の計画が進んでいた場所
だった。ここは林からの湧水が豊富で自然豊かな土地だから、残して欲しい
と住民運動をして市に予算をとって貰い、トラストしてもらった経緯があ
る。ここからの湧水は飯山満川を流れ、最終は三番瀬にまでたどり着く。

見えない絆がつながり、今日の芝山湿地となり、そしてここの活動のすばら
しさが、ビオトープ補助予算という形で千葉県内に広がろうとしています。

<学校ビオトープを継続するために>
付近の方の理解だけでは、学校のビオトープは続かない、教師、生徒は入れ
替わってしまう。それだけに地域の方々との直接、間接の交流がこれから必
要になる。
教師単独で進めて潰れた事例は数多くある。どのような連携がとれるか?教
師が自分で抱え込むと出来ない。外に向かって連携がする事が必要。
ビオトープがあると多様なつながりが生まれるが、つながりがないと閉じて
しまう。と未来に向かっての意見交換もなされました。
企業の支援や連携もまた必要なのではないでしょうか?
 
ビオトープコンクールの金賞と特別賞の差はどこだったか?の質問に佐野先
生からは、学校全体の取り組みがあり、プレゼンテーションに劇もある小学
校は有利だったとの感想も出ました。しかし、発表会の直後にメンバーから
次は最上級賞をねらうという頼もしい発言がありました。

<海外からの評価>
コンクールの翌日に同校を訪問したドイツからのゲスト、ギーゼラコッホ氏
からは「オニヤンマのヤゴ、オスのニホンアカガエルなど審査員全員がこの
湿地を見たらきっと環境大臣賞を取っていただろう」との発言があったとの
ことです。

芝山湿地に備わる力 命を育み、結びつける、伝播させていく不思議な魅力
を感じた日でありました。



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        【2】大袋東小学校 いきもの調査はじまる


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<大袋東小いきもの調査>
今年2月の全国学校ビオトープコンクールで環境大臣賞を受賞した大袋東小
学校。同校のビオトープを使った授業は今年も引き続き行われます。同校で
は毎年5年生が中心となってビオトープを使った総合学習に取り組み、今年
は「ビオトープ改修」から新たに「生き物調べ」にテーマを移して取り組み
ます。

<助成金事業として先生方の指導>
コスモ石油エコカード基金 学校環境教育支援プロジェクトの助成金事業と
して行われる指導は、社団法人日本環境教育フォーラムから指導を任された
?自然教育研究センターが行います。
昨年は児童対象の生き物調べでしたが今年のテーマは先生向けの指導です。
子どもを日々指導する先生方の能力アップを如何にしていただくかなので
す。


<5班に分かれて生き物調べ>
この日は初めての生き物調べ、児童は、樹木、草花、鳥、昆虫、水辺の調査
班に分かれて、順番に「ならばやしビオトープ」へやって来ました。 もち
ろん先生も一緒です。ビオトープを改修したことでどのような生き物が見ら
れるか、その生き物を観察、同定するにはどのような点を注意したら良いか
について班ごとに5名の講師陣が専門分野の指導をしてくれました。

今回は、5つの授業模様を簡単にご紹介します。
調査指導の模様(画像)です。
 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.6.2/1.pdf


<鳥の調査方法の指導>
初めにやって来たのは「鳥」のグループ。 鳥の観察に欠かせない双眼鏡の
使い方を学びます。絶対にしてはいけない「太陽を見ないこと」は初めに教
えられます。
それから鳥を観察するときのポイント ?鳥の大きさ:スズメ、カラス、ハ
トなどよく目にする鳥は大きさのモノサシとして使うことが出来る。?色
柄、模様 ?声:啼き声 例えばツツピィ、ツツピィと啼くのはシジュウカ
ラ、同じカラスでもハシブトカラスとハシボソカラスは啼き方や啼き声が違
うことを教わりました。

<樹木の調査方法の指導>
2番目は「樹木」のグループ ビオトープに巻尺を敷いて、エリア区分をし
て、枡を切ります。そして木の番号をつけることで間違わないで樹木を見分
けることができると学びました。アカメガシワの若い葉が見られ、「擦って
ごらん」といわれ、擦ると赤みが取れて緑に変わったのに子ども達はびっく
り、日焼け止めの役割をしていることを学びます。
120cmの高さで幹の大きさを測ることも教えてもらいました。もちろん
調査記録のとり方も学びます。詳しい特徴の見分け方はこれからの授業で学
んでいきます。

<チャドクガの発生・駆除>
休憩時間にビオトープ指導担当の寺田先生が鋏を持ってビオトープにやって
来られました。チャドクガの幼虫が発生したとのことで、薬散布をしない同
校のビオトープ。一つ一つ丁寧に虫のついた枝葉を除去されています。抜け
殻にも毒があり風で飛んで皮膚に触れると痒くなるので普段子ども達の遊び
場となっているならばやしだけに細かな手入れをされています。

<昆虫の調査方法の指導>
昆虫班は 初めに3m以上も伸びる捕虫網を見てびっくり。どんなところに
虫がいるか?アブラムシがいるとそれを好物にしているテントウムシが見ら
れる。アブラムシは巻いた葉の中で見られることや虫食いの有る葉っぱは虫
のいる可能性が高いので裏も見てみよう。クヌギの樹液にはクワガタが良く
集まる。香りの強いサンショウの木はヒラタアブやいろんな幼虫が好んで葉
を食べる、蝶は明るい開けた場所でよく見られるなど沢山のことを教わりま
した。

<草花の調査方法の指導>
草花班は 見分ける方法として ?花が咲いている ?実がついている ?
どんな色なのか ?どんな形なのか ?茎や葉の手触り ?におい ?大き
さ などのポイントを教わりました。実際に手に取って
みたのはヨモギ、ノビルなど香りの強いものや食べられる植物ギシギシ
など、そのほかにも歩き回っていろんな草花を見ました。

<水辺の調査方法の指導>
水辺班は池の水調査と生き物調査です。初めに、水質調べ。濁り・色・臭い
を観て、薬を使ってPHやBOD(生物化学的酸素要求量)調査、透視度計を使っ
て、どんな水かを調べる方法を学びました。水温気温の記述はもちろんで
す。
それからいよいよ水の中に入っての生物調査 今回は講師のみ中に入りまし
た、ミズスマシ、サカマキ貝(親、卵)、ギンヤンマのヤゴが見つかりまし
た、さらにはどこから来たのか アメリカザリガニが5匹ほども見つかりま
した。流れもなく、注水植物も生えていないので落ち葉が底に溜まり易い池
なので結構濁っています。落ち葉は隠れ家になって良い反面濁りの原因にも
なるのでときどき取ると良いことも教わりました。  

校長先生も児童、先生がどんな勉強をしているのかとやって来られました。
2時限の中でしたが、観察ノートの使い方について学んだ班もあります。
大袋東小のビオトープの授業は観察だけには終わりません。自分達が改修し
たビオトープにどれだけ地域の自然が戻ってきたかについても学習を進める
とのことです。





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