[発行日:2009.06.30] vol.56 桜川中学校 里山体験授業2、大袋東小 水辺の授業

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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2009.6.30 ━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
暦の上では夏至から小暑になろうとしています。暑くてむしむしした時期
を迎えます。旧暦では今年は閏5月が入り、夏が長くなるということです。

わたしの住む岡山南部では、田植えの時期が遅く、やっと田んぼに水をは
りこれから田植えというところもあります。田んぼに水がはられると色ん
な生きものがたちまち集まってきます。カエルはもちろんのことトンボ、
ツバメ、カラス等々朝横を歩くだけでもこれらの生き物が見られます。
水辺環境における生物多様性をついつい感じてしまいます。

弊社も生物多様性についてもっと学ぼうとJBIB(企業の生物多様性
イニシアティブ)のネットワーク会員として勉強を始める事にしました。



   もくじ【1】桜川中学校 里山体験授業 第2回目報告
      
      【2】大袋東小学校 水辺の授業始まる
    − 生きものに聞く自然再生評価 −
      
          
         
      


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        【1】桜川中学校 里山体験授業 第2回目報告

  
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桜川中学校 第2回里山体験学習 

5月の里山体験授業に引き続き、6月はその振り返りと共に森の中の生物の
つながりについて学びました。今回もNPO法人樹木環境ネットワーク協会の
環境授業サポーターの方々14名が生徒達を指導します。

< 生態系について学ぶ >
まず初めに、植物の光合成と生態系について、同協会の大垣専務理事より講
義がありました。植物が生きていくために必要な4つの要素「空気」、「土
壌」、「水」、「太陽光」のつながりの説明です。そして植物を生産者とし
てスタートする
食物連鎖と分解の過程へと話を進め、生物と自然界のつながりで出来たしく
みが「生態系」と結びました。

< グループワーク ライオンの森を思い出す >
講義の後はグループワーク。1ヶ月前に行った多摩動物公園ライオンの森で
観察した植物や動物痕などを思い出し、写真を見て同定していきます。
植物26種、動物21種、動物はダニ、アリからミミズ、ヤスデなどの土壌
生物さらにはノウサギ、アオゲラ、ジムグリなど森に棲む爬虫類、鳥類、哺
乳類など様々なものがあります。
当初の予想では、半分は分らないのではないかと考えていたのですが、特徴
を聞いたりした生き物について生徒達は結構知っていて殆どの名前を挙げる
事ができました。とはいえ、ムカデとヤスデの足のつき方が違うのは見分け
難かったようです。ただ、自分自身の中学生時代と比べるはるかな知識量で
はないかと驚いてしまいます。森の生物が彼らにとっては興味が深くなった
ということでしょうか?

< 生態系のつながりを考える >
自分達で識別できた動物、植物を使ってその生息場所の地図を作るのが次の
学習です。これまでのノートを見ながら結構素早く生息場所を決定する事が
出来ました。中には、殆どの生物が分ったけど地図への貼り込みが出来ずに
やむなく、生物の数を減らした班もあったくらいでした。

< 生きものの物語を考える >
その次に、16班個々にライオンの森に住む生きもの生態について物語を考
えてもらいました。アオゲラ、モグラ、ムカデ、ノウサギ、アリ、ヘビ、ミ
ミズ、ウグイスと2班ずつ同じ動物が主人公です。
棲家、食う食われる食物連鎖の関係、天敵、排泄物の行方や死んだ後の分解
などについて、自分達で考えたり、サポーターの援助を受けたりしながら、
短時間のうちにそれぞれの関係を実線や破線などでつないでストーリーを組
み立てました。

< 私はモグラです >
私が担当した班はモグラの生態について。ライオンの森では生徒たちはモグ
ラの穴は見たものの、モグラ自体は観ていませんし、詳しい話も聞いていま
せんので用意した写真を元に質問形式でその生態を説明して行きました。
地中で生活するのに適したモグラの体のつくりや行動は実に合理的です。モ
グラは意外ときれい好きで、穴の中ではトイレと寝床は分けていることや排
泄物にはナガエノスギタケが生えること、コナラなどブナの木の根が伸びて
くることがあるなど特徴的なことを説明しました。
また、モグラには結構天敵が多く、カラスやタヌキ、オオタカなどが常にね
っていることや死体にはハエの卵が産み付けられたりして、様々な生物、バ
クテリアに分解されて最後は土に戻ることなどモグラと森のかかわりについ
て色々と説明をしました。短時間で見たことのない生き物の物語を作るのは
結構難しかったと思いますが、一生懸命取り組んでくれました。

< 発表者が決まらない >
仕上げは発表です。班の発表者2名が決まらず、みんなで押し付け合い、最
後はジャンケンの勝負へ。それでもなんとか準備して無事発表。森の中で
は、生徒達は結構集中力を発揮するのですが、体育館となると集中させるの
にひと苦労。先生方の苦労の一端が分りました。2年生になり、反抗期にさし
かかってきたとのことですが、皆それぞれに何かをつかんでくれたのではな
いかと期待します。

< まとめ >
各班の発表をさらにホワイドボードを使い、一表にまとめていきました。
8種の動物と森のつながりが様々な線で結ばれる事で、その関わりが分かる
図になるはずでしたが、やや表が小さかったせいか、すっきりとした図には
ならず、「生きものの関わりが複雑である」ということが分かる程度のもの
となりました。次回は11月、少し間が空きますが成長した姿を見るのが楽
しみです。

授業の様子はこちらからどうぞ

里山体験学習ふりかえり
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_lnk/5-20090630211302-1_1.pdf




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        【2】大袋東小学校 水辺の授業始まる
       − 生きものに聞く自然再生評価 −
          
  
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大袋東小学校 水辺の授業始まる 「生きものに聞く自然再生の評価」

< 工事で変わるビオトープの環境 >
これまで数回ご紹介している 大袋東小学校のビオトープを使った環境授業
5年生が、毎年「ならばやし」ビオトープの管理をしていますが、今年今ま
でと少し様子が変わります。7月から体育館の耐震工事が始まることになり、
体育館に隣接したビオトープの一部の木が伐採され、工事が完了するまでの
間暫くビオトープに立ち入ることができなくなるのです。

そこで、今年はこれまで違った学習をしようと4月初旬に5年生の先生方と
打合せを行い、水辺を中心にしたビオトープの再生をし、そこに住む生き物
の種数の変化によって再生の効果がどうであったかを数値で検証しようとい
う授業を進めることとなりました。

< ビオトープ活動テーマを考える >
学校ビオトープをどのようなビオトープとして維持するのかが重要です。
昔、里山として使われていた大袋東小学校の「ならばやしビオトープ」。
今では地域の自然を残すひとつの生態系として存在していますが、やはり地
元に昔からいた生き物が棲めるビオトープとして児童が認識し、どのように
すれば在来種が棲める環境になるのかを1年間の学習を通して体験してもら
うことになりました。

< ビオトープの自然再生の評価をいきものに聞く >
昨年までコスモ石油の助成金を使い、ビオトープの回収、生き物調査の方法
を学習してきましたが、今年は地元の助成金を使い、専門家を招いて学習を
進めることにしました。自然再生評価を生きのもの種数の変化で捉える考え
方 「kikyo」(帰郷)を提唱されている吉田 寛さん(公会計研究所、千葉
商科大学大学院教授)と人と自然の研究所(代表 野口理佐子さん)のグルー
プで指導に当たります。人と自然の研究所のメンバーはC.W.ニコル・アファ
ンの森でも自然再生による生きものの評価を実施しています。

吉田教授の提唱するkikyoの考え方と実証結果はこちらからどうぞ

kikyo BioCity文
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_lnk/5-20090630211302-2_1.pdf




こちらは 音声付の説明です。 
http://www.catallaxy.jp/IPSA_New/kikyo1.html

< 授業はじまる >
大袋東小には2つ池があります。今年は、池を中心とした水辺環境の整備を
行い、生き物の変化を見守ります。
指導の中心となるのは、人と自然の研究所の客員研究員の三森氏。4回シリ
ーズで行ないます。第1回目は5月14日にスタートしました。
・水辺の生きものをよく知ろうということで、メダカを題材にした授業をし
ました。からだのつくり、くらし、すみかのことを知ることでメダカの気持
ちがわかるようになり、メダカを池につれてくるとしたらどのようにしたら
良いかを子供たちに理解してもらうためです。

メダカの絵を描いて、どんな形をしているのか、なぜそんな形なのかを質問
しながら解説していきます。どんな食べ物を食べるのか?だから口はこのよ
うな形になっていると一つづつ、児童が分かり易く且つ興味が持てるように
会話をしながら授業を進めました。

< フィールドで発見 アメリカザリガニ >
第2回目は実際に「生きものの身になって池を見る」で6月1日に行なわれ
ました。まずは池の中の生き物を生け捕りします。そして、そこに棲む生物
にとって住みやすい環境になっているかを確認します。

当日池で見つけられたものは、アメリカザリガニ、これが一番多い。他にア
メンボウ、ミズムシなど細かい水生昆虫が見つかりました。

見つけられなかったものはヤゴ、ボウフラ、アカムシ。なんと魚類は一匹も
いませんでした。教室に戻り、意見交換をしました。児童の中からザリガニ
はなんでも食べてしまうので排除すべきの声が上がりました。

このあとどのように改修するかは児童の間で話し合い先生の指導の下、決め
て行きますが、在来種でないアメリカザリガニの巣窟のようになっている池
をどのようにしていくか。在来種が集まる(魚は連れて来る)池にするため
には相当な労力が要りそうです。

< ザリガニの駆除開始 >
この日の午後はスタッフ中心にカイボリをしてザリガニを除去する作業を展
開しました。繁殖力のすごいザリガニですからすべてを除去するのは大変難
しいことです。工事が始まるまでの期間が勝負です。次回、その後の進展に
ついてご報告します。
2回目の授業の模様はこちらです。

水辺の環境授業
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_lnk/5-20090630211302-3_1.pdf


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