[発行日:2010.02.26] vol.64 霞ヶ浦のアサザは危機的状況、学校ビオトープコンクール発表会報告ほか

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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2010.2.26 ━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
2月14日に旧暦の元旦を迎えました。中国では春節と呼び盛大な行事が
催されたようです。東アジアにおける旧暦は農業を中心とした生活の知恵
から生み出されたもの、明治5年までは長い間この旧暦を使って私達の先
祖は暮していました。自然と調和した暮し方が旧暦とともにありました。
今では、殆どの人が知らなくなった旧暦ですが、自然と調和した暮らしこ
そがこれからも命をつなぐ方法であると伝えていきたいものです。

今月は、2回の出前授業で小、中学校にお伺いしました。お金でいろんな
ものが手に入る時代の若い人たちに自分の手や指を動かして、モノを作る
事に挑戦してもらいました。制服の残り布と接着テープでマイバッグを作
っていただきました。 普段使わない指の動きは結構難しかったようです。
自分が体と脳をフルに動かして作る事の喜びはまた、持続可能な暮し方の
一つでもあるように感じます。

今回は、いのちをつなぐために行なわれている活動2件とお報せ1件を
ご紹介します。


   もくじ【1】霞ヶ浦のアサザは危機的状況
         NPO法人アサザ基金 状況報告
        
           
      【2】学校ビオトープコンクール発表会報告
        
         
      【3】森の聞き書き甲子園フォーラム開催ご案内
               

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         【1】霞ヶ浦のアサザは危機的状況
            NPO法人アサザ基金 状況報告
      
            
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湖岸に住む1万人を超える学生が育て、毎年植えつけてきたアサザ。18
万人を超える市民が流域で多様な取り組みを続けてきた霞ヶ浦再生事業。

11月号でアサザが危機的な状況にあることをお報せしました。今回は、
その原因の一つとなっている「水位上昇管理」についての検討会の模様を
傍聴されたNPO法人アサザ基金 飯島代表の報告の形でお報せします。

「霞ヶ浦の生態系に壊滅的な影響を与える冬期水位上昇管理の中止を求め
る申し入れ書」を1月に霞ヶ浦河川事務所長に提出後の会議です。
年度末に毎年開催される霞ケ浦湖岸植生帯の緊急保全対策評価検討会が2
月22日に東京で開催されました。
    
委員は以下のとおりです。
座長 池田駿介 東京工業大学教授
委員 佐藤慎二 東京大学教授
   角野康郎 神戸大学教授
   佐々木 寧 埼玉大学教授
   花里孝幸 信州大学山地水環境教育研究センター長
オブザーバー
   桜井善雄 信州大学名誉教授
   鷲谷いづみ 東京大学教授

以下報告ならびに飯島氏のコメントです。

第11回評価検討会で話し合われた主な内容   2010.2.22
●評価検討会の中でアサザが危機的状況であるという認識は示されなかっ
 た。
●アサザが減少している事を資料が示しているが、なぜアサザが減少して
 いる のか、その原因を突き止めるための調査手法について言及がない。
 減少を止めるための方策についての議論が行われていない。
●国交省が以前設置した保全検討会ではアサザの減少要因として水位上昇
 を明記しているが、この評価検討会ではその結果に立ち返っていない。
 ただ単に定期調査を行い、報告しているだけという感が強い。

< 今日の委員会でのやり取りの一部 >

アサザの減少と水位に関しての言及は一切避けられた。
ただ、水位に関しては、以下の部分のみ(しかし、アサザに関しては無し)
・河川事務所から報告の説明を受けて・・・(説明時に減少していると明
言していない)

鷲谷委員;春先に発芽する植物はその時期に地面が露出しているなどの必要
がある。湖岸の形状が重要。だが、水位試験運用によって3月まで水浸しで
あり、(殆どの)水草にとっては厳しい環境となっている。妙技の鼻で調査
をしているが水位が高くて、植物種数が減少している。火入れが出来ないと
いう状況が発生している。

河川事務所長;水位については春先の水需要に備える必要がある。工夫しな
がら運用している。水位を上げなければいけないという規則がある。

鷲谷委員;不可逆的変化のないように運用して欲しい。妙技の鼻の植生が一
番重要。

池谷座長;(水位実績資料を見ながら)年々、水位が高い日が増えてきてい
る。利水との折り合いもあるだろうが。

河川事務所長;よりよい水需要との折り合いを検討しています。

昨日開催された検討会では、アサザ基金が再三要望をしたり申し入れたりし
たことについて全く報告もなく、委員の発言もありませんでした。
現場の声を無視した行政や研究者の姿勢に憤りを感じています。

昨日配布された議事録では、昨年3月に開催された検討会では、「大船津の
アサザ(北浦最大の群落)の減少要因は何か分かっているのか」という委
員の質問に対して霞ヶ浦河川事務所が「減少要因は現時点では不明である」
と答えていますが、今回の検討会の報告では、この一年間で「減少要因」に
ついて全く調査が行われていないことも明らかになりました。

さらに、そのことに関しても、委員の研究者らから一言も無いという状況で
す。水位上昇の影響を認めつつも、委員からはアサザの保全をどうするのか
といった意見も無く、ただ消滅していくアサザの状況を確認するだけという
異常な評価検討会となっています。

評価検討会では河川事務所から「水位を上げることは規則で決まっている」
といった発言がありましたが、これは事実ではありません。管理目標水位
が設定されますが予め数値があるわけではありません。水位運用規則に関し
ては、「操作については、湖岸の動植物等霞ヶ浦の環境保全に十分配慮する」
(平成8年建設大臣)と明記していますので、現在の制度にも違反する行為
が行われているものと考えています。
これらの不正をただし、何とか水位上昇をやめさせたいと思います。
                  
以上のように、子ども達や市民によって再生したアサザなどの植生帯が激減
していることには踏み込んだ議論はなく、「一番大事なのは妙技の鼻の植生」
ということです。湖全体を見ようとせず部分的な議論で上手にお茶を濁され
た感じです。
行政や研究者の無責任さにただあきれているわけにはいきません。何とかし
て、危機を回避していきたいと思います。霞ヶ浦を絶望の湖にしないために、
皆様の応援をよろしくお願いします。

                       アサザ基金  飯島 博 



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       【2】学校ビオトープコンクール発表会報告

  
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さる2月13日東京で全国学校ビオトープコンクール2009発表会が開
催されました。会場には前回に引き続き秋篠宮ご夫妻も参列されました。
会場では 上位5賞受賞校の発表が行なわれた後、前回の上位5賞4校が
その後の活動を報告しました。

開始以来6回目12年が経過した同コンクールですが、様々な流れを感じ
る事が出来ました。

1.当初は小学校中心であったビオトープ活動が、幼稚園・保育所から高校
  以上まで広がりを見せている。

2.ビオトープについて専門的な知識を持った方(先生が資格取得などを
  したケースなどもある)が関わり、学校の中だけでなく、地域との連
  携が広まっている。

3.上位5賞は継続的に運用されると共にさらにビオトープを使った次の
  ステップへ進んでいる。(後で詳しく説明します)

4.上位5賞を受賞した学校は、前回金賞、銀賞などを受賞した学校が多
  く、先生方のやる気もさることながら、児童、生徒がきちんとビオト
  ープと授業で関わるしくみが出来ている。

5.作って終わりでなく、ふれあい、観察、維持管理、発展などがきちん
  と関係者に認識され、ビオトープが学校、幼稚園の教育の基軸となる
  学校が増えてきているなどです。

以下簡単に上位5賞の取り組み概要をご紹介します。写真のボリュームが
多いので、今回と次回に分けてご紹介します。

文部科学大臣賞 三田市立武庫小学校(兵庫県)今回紹介
環境大臣賞   岡崎市立秦梨小学校(愛知県)今回紹介
国土交通大臣賞 東海市立船島小学校(愛知県)今回紹介

画像と一緒にこちらをご覧下さい。座席からの撮影のため映像が見難い点
をお詫びします。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_5f4Gn8.pdf

ドイツ大使館賞 福岡市立壱岐保育所(福岡県)次回紹介
財)日本生態系協会会長賞 千葉県立船橋芝山高校(千葉県)次回紹介
前回環境大臣賞受賞 越谷市立 大袋東小学校 次回紹介

過去の受賞校の活動報告はどれも素晴らしく、特に地域の他校ビオトープと
連携してビオトープ活動を客観的に評価しようとしていると言う発表をした
大袋東小の取り組みの方向をご紹介します。船橋芝山高校、大袋東小ともに
このメルマガで活動をしている学校です。



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      【3】森の聞き書き甲子園フォーラム開催ご案内
      
            
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100人の高校生が、長年「森」の仕事に携わった名手・名人を訪ね、その
仕事、人生を名手・名人の言葉で記録する森の聞き書き甲子園。今年は、海
の仕事に携わる名人5名が加わり、105名での聞き書きを行ないました。
既に、聞き書きのレポートは提出されています。

 3月28日 12:45開演 東京 江戸東京博物館ホールにて
       12:10開場 
 第8回森の聞き書き甲 子園フォーラムが開催され、全国から高校生が集
 結、名手名人とのエピソードなどを語ってくれます。

フォーラムは無料、申込みすれば誰でも参加できます。申込みはこちらよりどうぞ
http://www.kyouzon.org/event/event.html
TEL:03-5366-0788  NPO法人 共存の森ネットワーク事務局


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