[発行日:2009.07.31] vol.57 アキアカネを呼ぶビオトープづくり 兵庫たつの市 他1件

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┃     QQ     【スクールビオトープ メールマガジン】
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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2009.7. 31 ━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
各地の学校で夏休みに入りましたが、まだ、梅雨明けをしているところが
少ないです。西日本を中心に局地的な豪雨が発生し、各地で大きな被害が
発生しています。被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復興をお祈りします。




   もくじ【1】コラム「生物多様性と管理」 C.W.ニコル氏
      
      【2】アキアカネを呼ぶビオトープづくり
         兵庫県 たつの市立小宅小学校
   
      【3】大袋東小学校 マイバッグで 生き物を守る
          
         
      


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        【1】コラム「生物多様性と管理」
           C.W.ニコル氏
        (C.W.ニコルアファンの森財団理事長)  

  
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生物多様性と管理

もし人間が、私達は優れていて、他の異なる生きものの命をコントロール
する権利があると考えているならば、野生生物と環境の管理はけっして出
来ないだろう。
私達は自然界における生物多様性を完全に理解していない。もちろん、人
間の文化の多様性についても同じだが。実は多様性はすべての生物にとっ
て生き残るためのキーなのだ。多様性は(存在の)可能性を意味する。

しかし、人間の行為によって重大な破壊を受けた自然を回復しようと実験
をしたり、改良を試みたりすることは意味がないとはいえない。
我々の財団は、森の再生事業の一環としてある土地を手に入れた。そこは、
第二次世界大戦の間に鉄を取るため大規模に掘り返され、戦後は畑として
利用するために木々が伐採された土地だった。

これらの行為が生んだ一つの結果として、地下水の水位が上がり、地表近
くまで滲みだして、殆ど濁っていた。そこに生えている木々は細長くひょ
ろひょろして、病的だった。
私達は土地を測量し、水が循環する水路と小さな池を道に沿って480m
ほど掘った。
この水路は7mの勾配を持っているので、小さい連続の滝も作った。
滝は心地よい水しぶきの音とともに酸素を水に供給する。
しだいに葦が茂り、他の水生植物が生えてきた。それらは水を清め、水生
昆虫に隠れ家を提供する。土手が作られ、水面が低くなった。

私達は数種の実のなる木を主に植えた。それらは花をつけ、虫たちを惹き
つけ、鳥達にドングリや実を与える。
3年が経過し、喜ぶべきことに、22種類のヤゴと沢山の水生昆虫たちと
一緒にカエル、イモリ、サンショウウオも棲み着いた。
木々は良好に成長した。私達人間にとっての御褒美は「タラの芽」だ。木
々が若いので、沢山の太陽光が地面にさしこみ、3年間豊富にいただいた。

このようにして、「自然の多様性」を意識した水路は創られた。どのよう
に私達がそれらを管理するかについては、どれだけ自然と私達が共存し、
協力しようとしているかを理解することにかかっている。

ああ、しかし私はまだ非力な人間だという事実を受け入れられないでいる。
わたしの馬鹿な頭の中で、何とかしてコントロールすべきあるいはできる
のではないか?とふと考えてしまうことがある。
自然を良く観察し、その声に耳を傾けるべきだ。コントロールすべきは自
然ではなく私達人間自身なのだから。それ以外に正しい道はない。

アファンの森の様子はこちらからどうぞ
        http://www.afan.or.jp/



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        【2】アキアカネを呼ぶビオトープづくり
           兵庫県 たつの市立小宅小学校
          
  
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< 新3年生の取り組みはじまる >
4月号でご紹介したマイバッグ赤トンボを増やそうと活動を始めた兵庫県
たつの市立小宅小学校。前年度の3年生が町にアキアカネが来るようにと
生息地を守ろうと配布したマイバッグの製作キット。
今年度の3年生は一歩進めてビオトープづくりに挑戦です。新年度になっ
て訪問したのは7月初旬。

今年1月に校内にある小さな池に生えていたサンカクイを刈り取って春か
らのトンボの産卵とヤゴの羽化に備えたのですが、また池の水面全をサン
カクイが覆っていました。
丁度ギンヤンマなど羽化期に入るので観察ができるように池の一角にアキ
アカネを増やそう会の方々の手で網囲いが作られていました。

< 新しい候補地でビオトープづくり >
羽化の後には新たに産卵するトンボがいるので光る水面を作っていただ
くように余分なサンカクイの撤去をお願いしました。
この池とは別に、2週間後にアキアカネを呼ぶための本格的なビオトープ
づくりを新たな場所で行なう予定で、担当の石堂先生と打合せを行いまし
た。現在、サツマイモを作っている川沿いの畑がその候補地です。

この川はハグロトンボが飛び交う水のきれいなところであり、よく見ると
畑の法面の中腹に流れる側溝にはなんとカワニナが沢山いるのです。
現在は日陰がないのですが、うまくするとオニヤンマがやってくる可能性
もあります。近くにはゲンジボタルも棲んでいるそうで、幼虫を連れて来
ると育ちそうです。そのためには植栽を考える必要があります。

< アキアカネを増やそう会とトンボ授業 >
今学期に入って児童達は、地元のトンボの研究家三木さんからトンボの授
業を受けていました。昨年、児童達は三木さんらアキアカネ増やそう会の
導のもとアキアカネを追っかけて、夏は鉢伏高原へ調査に出かけ、秋には、
市の北部の宍粟市の田んぼでアキアカネを捕獲したのでした。
そして、産卵をたつの市の地元の田んぼビオトープで行なっていました。

アキアカネはいつ頃羽化して、夏はどのように過ごすのか、秋はまた、里
へ降りてくることを学び、自分達でアキアカネを呼び戻せるようになりた
いと児童達は担当の石堂先生と胸を躍らせています。

< ビオトープ着工 >
7月13日の昼休みから畑の土堀が始まりました。どんな大きさの池を作
るのかを児童に私から説明をして作業開始。180cm×360cm
のあまり大きくない土地が池に変わります。スコップとバケツを手にした
児童でしだが、思いのほか人数が多く、中には道具がなく、草叢にいる生
きものの観察に夢中になる児童もいました。キリギリスにキアゲハの幼虫
など色々な生き物が見つかりました。

元々田んぼとして使っていた土地なので土は肥えていて結構ミミズがでて
きました。しかし、やはり子ども達には硬く手ごわい土です。思ったより
硬いので水で柔らかくしてから再度掘ると石堂先生。夏休みまで残り数日
だったので、思うようにはかどらず8月までかかるかもしれません。

水の抜け具合によってはブルーシートもいらなくなるかもしれません。
そこを突き棒で固めていくと水漏れも防げる可能性もでてきます。
アキアカネが里へ戻るまでにはまだ、日があるので、これから先生方と相
談しながら、アキアカネが喜ぶ池作りに挑戦です。
   
< 心配事 >
進行状況は後日また報告します。残念なことは、昨年たつの市で産卵した
アキアカネのヤゴがうまく育っていないのか成虫を確認できていないとの
こと。また、昨年アキアカネを発見した宍粟市の田んぼが今年は減反政策
の影響で休耕田になるとのこと。宍粟市の状況がきがかりな夏です。

アキアカネを呼ぶビオトープづくり
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_lnk/5-20090731184006-1_1.pdf




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      【3】大袋東小学校 マイバッグで 生き物を守る
         
  
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先月ご紹介した、大袋東小学校のビオトープの環境授業ですが、今回は、
弊社が実施している環境出前授業の模様をご紹介します。同校で授業を行
なうのは、かれこれ5回目。
これまではペットボトルリサイクルや制服のリサイクルの話、買ったもの
は長く使おうと話をしてきましたが、今回は児童が自ら作る工作に挑戦で
す。しかし、単なる工作では環境授業の意味がありません。

< なぜマイバッグをつくるのか >
川に捨てられたゴミが流れていって、川の底に沈んだり、海に流れたりで
そこに棲む生活環境を脅かすだけでなく、時には誤食飲によりいのちまで
落とすこと。川のゴミはレジ袋が多く、レジ袋をマイバッグに作ることで
生きもの達の命を守る事ができるかもしれないと授業ではまず伝えました。

< バッグのデザインにも工夫が >
今回の授業は大袋東小学校エコフェスティバルの中の1コマの授業です。
弊社のほかにも色々な会社や団体、先生の授業があり、5コマを生徒達は
1年生から6年生までの縦割りグループで回ります。しかも1コマは30
分いかに短い時間で丈夫なマイバッグを作るかについて工夫をしました。

社内では、技術部商品設計課はじめ、生産部の社員にデザイン、仕様など
色々とアドバイスを貰い、5個の試作を作り、縫わずに両面テープと布の
ガムテープで接着する、持ち手と袋本体が一体型のタイプのデザインを考
え付きました。

< 隠れたテーマも >
今回のテーマは「制服の残り布で作る縫わないマイバッグ」隠れたテーマ
は上級生と下級生の2人が1組になって協力してやることです。
布地の裁断は事前に6年生にやってもらう条件で、型紙や素材を先に送り
ました。その数130名分、色や柄も様々です。前日の最終確認で学校に
伺うとなんと先生方が一生懸命はさみを持ってカット中。
6年生には裁断は難しかったとの事です。聞いてみると今の図工は昔のよ
うに基本を教えず、好きに描き、好きに作る指導なので、はさみの使い方、
糊の貼り方など基本をきちんとできていない児童が多いそうです。 

< 試作は好評 >
翌日の本番を控え担当の先生2名が自分で指導するのに実際1個作ってみる
と、早速マイバッグづくりが始まりました。大人だから115分では
できるのではないかと思ったのですが、20分ほどかかりました。
両面テープの貼り付けがちょっと手ごわいようです。慣れると10分以内
で作れます。

自分で作ったマイバッグに先生はご満悦「今日は何を買ってこのバッグに
入れようか」という発言。「大人の自分がこれだけウキウキするのだから
きっと子ども達はもっと喜ぶだろう」の言葉に一安心。

< 助っ人登場 >
最も気を使ったのは、柄選びにも時間をかけず、しかも柄の不満が出ない
ようにすること。柄も20柄ほどあり、目移りするので、できるだけ近く
の児童同士は同じ柄にするかなど事前配給制にしました。
本番当日、クラス34名を3人で指導するのは大変と気が重かったのです
が、当日になってPTAのお母さん方が8名サポートしてくださることが判
明。ラッキーと思いつつも、一度リハーサルが必要と感じ、授業開始20
分前から「一度自分で創ってみてください。」と時間を気にしながら製作
して頂きました。

バッグ完成前に児童達がやってきたので、途中止めの人もいました。やや
不安を持ちつつ、第1回目の授業に臨みました。
一度に35名以上の児童達に指導することの大変さがわかったのはこの直
後でした。全部で3回実施しました。 

< 授業開始 >
まずガムテープを手で裂くのですが、これがなかなか難しいみたい。両面
テープを貼るのも2人で協力してやると早いといってもどうやったら早く
できるかを説明してもわからない様子。
それでもPTAのお母さん、先生が懸命な指導でなんとか20分過ぎた頃にぼち
ぼち出来上がってきました。上級生が下級生を手伝うこと自体が難しいの
だと昨日の先生の言葉の意味がわかったのです。

それでも25分過ぎた頃には結構出来上がりました。 出来上がった瞬間
の児童の嬉しそうで得意そうな顔。ふだんゲームなどボタンを押すくらい
しか使わない指が違う動きをして、その結果バッグができたことが児
童にとっては初めてで大変うれしかったのだと思います。

< 完成までがんばった上級生 >
上級生で途中までしか出来なかった児童が昼休みに続きを作りに来てくれ
ました。その数20名ほど。一斉下校するため、昼休みしか時間がとれな
いと真剣な表情でした。
完成すると、低学年だけでなく、上級生まで嬉しそうな顔をして帰りまし
た。こちらまで嬉しくなる想いでした。
片づけをしていたら「最後の授業のグループの児童が『5箇所授業を受け
たけど、この授業が一番楽しかった』と言っていましたよ」と先生から
聞き、本当に嬉しい想いでした。
皆さん方の助けで実現できた「縫わないで作るマイバッグ」本当に感謝
でいっぱいです。

< 授業の予約入る >
嬉しいことに、兵庫県たつの市の2つの小学校で2学期に、このマイバッ
グを作る授業が決定しました。その数300名が対象。
レジ袋削減だけでなく、赤トンボ(アキアカネ)の棲める環境を守ろうと
いうものです。これからも残布を生かした活動で生きものの棲める環境の
保全に少しでも行いたいと思います。

大袋東小学校 マイバッグで 生き物を守る
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_lnk/5-20090731184006-2_1.pdf


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