[発行日:2007.12.28] vol.36 笹刈りで学ぶ 里山の生態系保全 都立南平高校、森林のCO2吸収実習 清心女子高校 他2件 

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┃     QQ     【スクールビオトープ メールマガジン】
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┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2007.12.28 ━★


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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。いよいよ2007年最後の
メールマガジンとなりました。今年1年ご愛読いただきまして、有難うござい
ました。
今月は私が12月に参加した里山保全の体験記を中心におおくりします。



   もくじ 【1】笹刈りで学ぶ 里山の生態系保全
           東京都立南平高校 1年生の環境学習


       【2】スーパーサイエンスハイスクールで学ぶ
           森林のCO2吸収実習 清心女子高校


       【3】炭焼き体験で学ぶ里山のくらし
           共存の森で活動する大学生達


       【4】書籍紹介 赤とんぼの謎







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      【1】笹刈りで学ぶ 里山の生態系保全
         東京都立南平高校 1年生の環境学習


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10月度のメールマガジンで紹介した都立南平高校の里山保全体験授業。い
よいよ、本番を迎えました。学校に隣接した多摩動物公園内の丘陵地でアズ
マネザザの刈り取りを体験しました。
12月20日21日の両日7クラスを4つに分け、午前、午後組で2時間ず
つの体験授業実施。普段接することのない森の笹の伐採作業は生徒にとって
も殆どが初めての経験であり、興味を持って取り組んでもらえたと感じまし
た。指導は樹木環境ネットワーク協会事務局とグリーセイバーの方々。生ま
れて初めて身につけるヘルメットのつけ方を教えてもらい、腰に鋏と鋸を通
した紐を巻き、軍手をしていざ出陣。

アズマネザサを刈ることで、春になり、新たに芽吹く植物を誘導し、結果生
物多様性を期待していること。笹を刈るときは、斜めに切らずに、地面と平
行に地面に近いところで伐る事。この林にはカラスザンショウがあり、握る
ととげが刺さり、怪我するので注意。鋸を引くときは、足を切らないように
足の位置に注意する。鋸は手元から刃先まで使い、引くときに力を入れる。
鋏は刃先でなく根元でまわすようにして伐ると楽に切れるなど道具の使い方
や細かい諸注意を受け作業開始。
急な斜面のため、男女ともに、苦労しながらの笹刈りでした。
ある程度笹がたまると今度は荒縄でのくくり方の説明。しっかり笹を足で押
さえて、縛る。などふだんではまず、体験しない事を教わりました。
作業終了後、使った鋏、鋸の手入れを行い任務完了。

途中で鋏を落とす生徒、ちょっとした怪我をした生徒2名などありました
が、小春日和の日差しの中200名の生徒達はそれぞれに体験をしてくれま
した。生徒に感想を聞くと楽しかった、笹刈りは面白いとの声。また、やっ
てみたい?には イエスの答えは残念ながら聞けませんでした。10月末の
事前学習と今回の体験がもう少し繋がればまた違ったかもと反省です。

クラスにより、作業の進み方や取り組みなど幾分差があり、説明の仕方や、
コーチングの仕方でモラールのアップダウンが生じることを経験できたのは
指導者として貴重な体験でした。

2日間での作業のあと刈り取られた斜面を見るとそこに笹が一面に生い茂っ
ていたとは思えないくらいきれいになっていました。
来年の春が楽しみな多摩動物公園 トキの森でした。
関連の写真です。

 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.12.27/2/index.htm


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      【2】スーパーサイエンスハイスクールで学ぶ
         森林のCO2吸収実習 清心女子高校


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去る11月下旬、岡山の地方新聞に「自然林はCO2吸収2倍」清心女子高研究
発表会 蒜山で人工林と調査 と書いた記事が掲載されました。
女子高の生徒が山に入り、CO2の測定を実施、しかもヒノキの人工林より自
然林がCO2の吸収量が多いという2重に嬉しい記事でしたので早速
取材に伺いました。

取材に応じてくださったのは、生命科学コースを指導される秋山先生と1、
2年生の代表の生徒さん1名ずつ。実は同校は文部省のスーパーサイエンス
ハイスクールの指定を受け(理系離れを防ぎ、新しい授業などを行い理系大
学進学者を増やす試み)その一環としてCO2の吸収量の実習、研究を2年にわ
たって実施しているのでした。

昨年3月には、インドネシアのボルネオ島で環境学習と英語の学習を行い植
物、昆虫の多様性について理解を深めていました。インドネシアでの森林破
壊は激しく、その原因は洗剤の原料となるパームヤシの植林とか、私たちの
暮らしが自然破壊をしていることを間近に感じる話です。

昨年夏、鳥取大学の演習林でヒノキのCO2吸収量を計測することが、今回の研
究発表のスタートです。4つのグループに別れ1aの区画内にあるヒノキの樹
高、胸高直径(130cmの高さ)、年輪を計測し、立木材積表に基づき材積
をもとめ、これに枝根係数、容積密度、炭素含有率を乗じて炭素量を求めさ
らに、44/12倍してCO2の吸収量を求めます。林野庁の計算方式と同じも
のです。4グループの平均をとり、値を出したそうで1aあたりヒノキは13
8kg/年でした。

今年になり、1年生が自然林のCO2 吸収の調査、計算を行いました。
今年は自然林での調査のため、まずは森林に生える樹木の見分け方から教わ
りました。29種の樹木を見分けられるようにテストも受け、蚊に悩まさら
れながら、調査を頑張ったとの事です。樹種ごとに計算を行い合計します。
結果自然林の年間CO2吸収量は279kg/aとなりました。これにより、多く
のCO2吸収をする自然林の重要性がよく判ったとのことです。開発で森が減
り、地球環境保護のためにも森林を守らないといけないと思ったという素晴
らしい成果が得られました。

今回は調査が中心で下草刈、間伐など森林を育てる活動はしなかったとの事
ですが、生物多様性、地球温暖化防止ということを感じる高校生が増えたこ
とは嬉しい限りです。この研究のほかにも同校はサンショウウオの研究など
幅広く取り組んでおられます。

社会の動向として、今後、日本全体でカーボンオフセットと同時に生物多様
性に取り組まなくてはならなくなるため、今回のような体験をした生徒が貴
重な人材として活躍してくれるのではと期待が募ります。
関連の写真です。

 http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.12.27/3/index.htm


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      【3】炭焼き体験で学ぶ里山のくらし
         共存の森で活動する大学生達


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千葉県市原市の鶴舞創造の森で 共存の森活動を続ける「森の聞き書き甲子
園」の卒業生達。大学3年生も終わりに近づき、12月8日にこれまでの活
動の仕上げとして炭焼きにチャレンジしました。

昨年11月、地元の方より炭焼きに関する話を聞き、炭焼きをしたいと計画
して、この11月、12月で2回にわたり体験をしました。
当日は暖かで風もない絶好の日。先月焼いた炭の窯出しからスタートして、
2回目の炭焼きの火入れをするところまで体験しました。

窯をふさいだ泥をはがし、石を除けて炭を出す準備。ポイントは口封じの
泥。次の炭焼きで水を加えて再利用するので、窯の傍の穴に入れます。
石を取ると手前の炭は既に燃えていて、白くなっていました。
炭を出し、並べてみると約300kgの炭が出現。窯の中央にあるものは良く焼
けており、地元の炭焼き名人古関さんから見ても上出来の評価。参加した大
学生達も自分達が並べた炭が形になったことにかなり満足感を覚えた様子で
した。

13人で300kgの炭を出すのに約2時間を費やしました。自然とともに
生きるためのエネルギーは確かに効率が悪いという実感も。
炭も直接地面に触れたものは、焼けずに木のまま残っており、そこは切り落
として、分別し、裁断して箱入れです。

原木の窯入れの前に、細竹を切ったものを窯の下側に敷き、下地づくり。こ
の竹をしっかり並べておかないと、蒸し焼きにした際に炭が焼けずに木のま
ま残ります。次に炭の原木を並べる作業。奥から木を縦に並べ、窯にあたる
外側の部分は細い木を立てかけます。木が垂直になるように隙間を空けずに
並べます。太いほうを上に向けて、下には細いほうを持ってきて火が良く回
るようにするのがノウハウ。
炭となる材はシラカシ、ナラなどが主。クリなどは炭になってもすぐに火が
つき燃えてしまうのであまり良い炭はできないとのこと。

里山に色々な樹種があるのは、食物を得るための木、家や家具を作るのに使
う木、炭にする木、薪として燃料として使う木などそれぞれに適した木があ
るから。竹もまた大切な燃料です。

窯の上方を埋めるために、細木を横にして天井まで敷き詰める作業を繰り返
して準備は完了。最後に石と粘土で口を作り、途中で空気が抜けないように
しっかり泥で石の隙間をふさぎます。竹や新聞を火種にして、細い木や薪を
燃やして火入れを行いました。この後は2昼夜半で炭ができるとのことで
す。

薪が燃え、燃え盛る炎。まさに、木が酸素を得て燃焼し、これまでと違うエ
ネルギーに変わっていくと言う神秘さを改めて感じました。

この日体験しなかった工程が多くあります。この300Kgの炭を作るための
原木や燃料木材の切り出し、運搬、大きさ別の分類、乾燥。さらに出来た炭
の保管のための筵いれと運搬など。天候も考慮しながら活動していた昔を思
うと、化石燃料へシフトしていったエネルギーの変遷が理解できるようでも
ありました。
ただ、炭焼きを若い時期(小学生年代)に体験することは自然の中に自分が
あることを意識する良い機会だと感じた今回の取材でした。
関連の写真です。

  http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.12.27/1/index.htm


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       【4】書籍紹介 赤とんぼの謎


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第27号のメールマガジンでご紹介したトンボ市民サミットでアカトンボの
調査を説明されたむさしの里山研究会の新井 裕氏。このたび、「赤とんぼ
の謎」というタイトルの本を出版されましたのでご紹介します。
出版社はどうぶつ社 定価¥1,500 

  第1章   日本人と赤とんぼ
  第2章   アキアカネの不思議な旅
  第3章   海を渡るウスバキトンボ
  第4章   赤とんぼの謎を追う  と言う構成になっています。

生態学的な研究はもとより、赤とんぼに関する生活・文化的考察やご自身で
の調査と幅広い人脈に支えられたデータに基づく考察など奥が深いものとな
っています。かといって肩が凝るほど理屈っぽくもなく、すんなり赤とんぼ
の謎がわかります。
とくになぜ赤とんぼは高地へ移動するかについての話は興味津々。
是非、一度お読みになってください。本の表紙の画像です。

  http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.12.27/akatonbo.jpg



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