[発行日:2007.11.30] vol.35 小学生がゲーム体験から考える自然の大切さ 杉並区立高井戸第四小学校 他1件
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┃ ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2007.11.30 ━★
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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。明日から師走です。
今月は私が11月に参加した環境教育を中心におおくりします。
もくじ 【1】NPO法人 アサザ基金 向山 玲衣氏
わくわく子どもの池プロジェクト 始動!
〜NPO法人アサザ基金とNECリースの協同事業〜
【2】小学生がゲーム体験から考える自然の大切さ2
杉並区立高井戸第四小学校授業の紹介
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【1】NPO法人 アサザ基金 向山 玲衣氏
わくわく子どもの池プロジェクト 始動!
〜NPO法人アサザ基金とNECリースの協同事業〜
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現在、アサザ基金ではNECリース株式会社殿と協働で「わくわく子どもの池プ
ロジェクト」を行っています。霞ヶ浦・北浦アサザプロジェクトの子どもた
ちが行なってきた「生きものとお話」し、「生きものと暮らすまちづくり」
を提案、実践していく学習プログラムを、東京の子どもたちとも行なえるこ
とになったのです!『“100年後にトキが舞う霞ヶ浦“を目指して活動してい
る霞ヶ浦の子どもたちと協力し、見えない”生きものの道“を東京までつな
ごう!”100年後にトキが舞う日本“を実現させよう!』というのが子どもた
ちと共有している夢です。
NECリース株式会社は、リース事業が循環型社会の実現につながるという企業
理念の元に、情報関連機器を中心としたリース事業を展開されており、環境
経営度調査金融部門(日本経済新聞社主催)において、第一位に選ばれた実
績をお持ちです。このプロジェクトでは、未来を担う子ども達に環境意識を
高めるきっかけ作りをサポートすることを目的に、生きものとの共生を自ら
学び、考え、社会に働きかけていく環境教育プログラムを子どもたちに提供
しておられます。
○荒川区立尾久西小学校の事例
10月4日、荒川区立尾久西小学校でビオトープ造成が行なわれました。これま
で、「生きものとお話しよう!」に始まり、学校周辺の生きもののすみか
や、学校周辺で見られる生きものを調べてきました。そして、学校にもっと
たくさんの生きものを呼ぶために、生きものの体のつくりやくらしに沿った
すみかづくりをみんなで考えてきました。そしてとうとう造成当日。これま
での学習の中心は飼育観察委員会の子どもたちでしたが、当日は全ての学年
が入れ代わり立ち代わり、手伝いに来てくれました。みんなこの日を本当に
楽しみにしてくれていたそうです。シートをひいて、その上に土を入れるバ
ケツリレー、みんなで地団太を踏んで(笑)土を良く踏み固めます。NECリー
ス株式会社の社員ボランティアさんが10名、子どもたちの作業を支援してく
れます。
そしてドキドキする時間到来。霞ヶ浦流域では、ビオトープに水を張ったと
たんにトンボがやってきてくれるのですが、市街地に囲まれるこの学校では
果たして・・・。みんなが考えたすみかに、生きものは来てくれるかな?し
かし、荒川と隅田川、そして尾久の原公園など水辺に恵まれた尾久西小学校
では、そんな心配は不要でした。ビオトープの完成を待たずに、ウスバキト
ンボ、アキアカネ、ノシメトンボが次々と産卵していきます。水位が上がる
のを見つめていた子どもたちから、歓声が上がります。生きものとお話(観
察)して、すみかや暮らしを学び、それに適した環境を考えて、かたちにす
る、という実験は大成功!子どもたちの“生きものとお話する”取組が、実
を結んだ瞬間です。生きものとお話することができれば、これからもビオト
ープの変化を見守り、生きものが暮らしやすいよう自分で考えて、手を入れ
ていくことができます。その後、ビオトープは“カッパ池”と命名されまし
た。
尾久西小の水草は、鹿嶋市立豊津小学校の4年生が、自校のビオトープと、目
の前にある北浦(霞ヶ浦の一部)の植生帯から採取して、送ってくれたもの
です。例年、4年生がアサザプロジェトに参加し、学校ビオトープの水草を使
って北浦に生きもののすみか作りをしています。これまでの活動を写真でま
とめ、生きものの道をつないでいこうという、メッセージを送ってくれまし
た。
尾久西小学校ビオトープ作り風景
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.11.30/onishi.html
○墨田区立二葉小学校の事例
二葉小学校では4年生の総合的な学習の時間を頂いて活動してきたので、より
深く学習を展開してきました。プールのヤゴ救出の際に良くヤゴを観察し、
生きものの体のつくり、くらし・すみかの関係を理解、近くの公園での生物
調査も行なっています。このため、vol.33でご紹介頂いたような大人顔負け
のディスカッションも行なえる力が育っています。学校の敷地内には土の地
面がないために、既存の観察池(コンクリート製で深さが一様で、横に細長
いかたち)を、生きものの視点で改造していくことになりました。追加すべ
き要素を提案する子どもたちは、すっかりメダカやトンボになりきっていま
す。
11月15日。NECリースの社員ボランティア10名が支援しながら、狭い観察池に
3クラスが入れ代わり立ち代り、土を運び入れ、水草を植え、を行ないまし
た。あっという間に造成は終わってしまいましたが、どの子どもたちも一生
懸命。使用した水草は、アサザプロジェクト参加校である石岡市立石岡小学
校へ事前にお手紙を送って、お願いしていたものです。事前にわたしたちが
石岡小学校を訪れ、子どもたちと学校ビオトープ(ぴょんぴょん池と呼ばれ
ています)から水草を採集しました。子どもたちに二葉小の様子を紹介して
も、“敷地内に土の地面がない学校”が全くイメージできない様子。でも、
生きものと暮らすことを目指してがんばっている東京の子どもたちのため
に、水草を丁寧に採取して、手紙も一人一人書いてくれました。ビオトープ
に他の生きものを入れたり、取ったりしてはいけないこと、ぴょんぴょん池
は生きものがいろいろいて、そのおかげで水が透明になっているので、ここ
で実験してわかったことを霞ヶ浦の自然再生に活かしたいことなどが書か
れ、「一緒にがんばろう!」と書かれていました。造成の最後は、墨田区の
メダカを放流。まだ水は濁っていますが、明日には底まで透明な水の中に泳
ぐ姿が見られるよ、と二葉小の子どもたちに伝えました。今後も総合学習の
支援に、お邪魔する予定です。
茨城の児童も、東京の児童と「生きものの道づくり」をとおして、互いに交
流することで、自分たちのまちの良さを再発見してくれたのではないかと感
じています。今回の子どもたちが今後、身近な課題に取組む際には、東京の
模倣に走ることなく、まち(地域)の良さを見つけ、活かしていく、そんな
地域づくりの担い手になってくれればと期待しています。
二葉小学校ビオトープ作り風景
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.11.31/futaba.html
○最後に
都心で感じるのは、やはり人間活動の大きさです。わたしも子ども時代を
似たようなところで過ごしましたが、それが当たり前だと思っていました。
生きものと一緒に住めないことに抵抗を感じていたのは、4年生くらいまで。
その後、それが当たり前で、どうしようもないことだと思うようになるの
に、残念ながらそれほど時間はかかりませんでした。
そんなことを振り返りながら、頭に浮かんできたのは、公害のことでした。
宇井純氏の「公害原論」を評して、柳田邦男氏がこう述べています。「人間
と社会を見るにあたって一番大事なことは『事象の重大性に気づく感性』で
あり、『本質を見抜く考える力』であり、『全容を捉える思考の枠組み』で
ある。」
公害の甚大な被害から学ぶのは、人間は偉大な存在に“ありがたく生かされ
ている”のではなく、“生きている”、“生きていく”ということです。そ
れは、生きものからも学ぶことができます。地球規模で環境が劣化している
現代において、大人が子どもたちに伝えなくてはいけないのは、現状を変え
るために働きかけていく方法ではないでしょうか。そのためには社会とも交
わらなくてはなりません。可能性を見出し、小さなことでも粘り強く、展望
を持って足元のできることから始めていくこと。そのときに、柳田氏の述べ
る三つの力は必要不可欠であると感じます。わたし自身も上記の三つの力を
身につけなくてはなりませんが、子どもたちに伝え、支援していくことが、
大人の役目だと改めて感じました。今後もそれを忘れずに続けていきたい。
それが、今回、東京の子どもたちに出会って、教えられたことでした。
昨日11月29日 墨田区の小学校が集う連合学芸会が開催され、二葉小
の4年生たちも学校の代表として参加。
「本当の宝物は in 二葉」と言う劇を演じました。
世界宝物コンクールで各国の宝物を審査、表彰するという劇ですが、「にせ
ものの月の水」「宝石が国の宝」「空飛ぶ魔法の絨毯」などは落選。「もっ
たいないのこころ」(3R:リデュース、リユース、リサイクル)と「いのち
の水」が当選。それに最後に登場した墨田区代表が学校の近くに住む「ベニ
イトトンボ」を絶滅危惧種として紹介し表彰されました。
そこへ、これまで環境授業をしてくれた小学生扮する アサザ基金 飯島さ
んが登場し、ビオトープを作って生き物の道をつなげてくれたと表彰状を贈
りました。(実際にも飯島さんが同小学校に表彰状を贈ってくれたのです
が)劇中でも飯島さんに教わったこと、「生き物と話しをするには 体のつ
くり、すみか、くらし が大切だ」ということを発表してくれました。他の
小学校の児童にどこまで伝わったかは分りませんが、少なくとも二葉小 4
年生たちは ビオトープの大切さがわかり、そしてその大切さを広げていこ
うとする気持ちが感じられました。
ビオトープを通じて、子ども達から教えられた発表会でした。
(株)トンボ 小桐
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【2】小学生がゲーム体験から考える自然の大切さ2
杉並区立高井戸第四小学校授業の紹介
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前号でご紹介したプロジェクトワイルドによる環境教育ですが、今回は
小学校3年生65名を対象に行ったアクティビティの紹介です。
今年4月から、平成19年度1年間で19回実施する体験学習シリーズ「生
き物さがし」の第10回目の授業にプロジェクトワイルドの体験ゲーム型授
業の講師の一人として参加しました。
授業はこれまでに、ヤゴ救出作戦や春、夏観察した生き物のカルタ作り、校
庭の生き物観察、トンボの産卵のための環境作り、自分達が住む町の自然探
しなどを体験しています。今回は、自分達が野生の生き物になって、生き物
へのつながりと理解を体験する授業です。
この日は、午後13:30−15:10までの授業です。
「つながり発見生息地」「オーディア」「瞬間冷凍動物」の3つのアクティ
ビティを実施しました。
初めの、つながり発見は、水、えさ、棲家、すきま(生活空間)の4つに子
ども達を分け、各グループからひとりずつできてきて4人でひとつのグループ
を作り、その輪の数を増やし、その後はどんどん輪をつないで大きくしてい
きます。大きい円になったらみんなを右に向かせ、つま先と前の人のかかと
が当たるくらいまで輪を狭め、最後はみんなでしゃがんで後ろの人のひざに
座るというゲーム。残念ながら、全員が腰掛けて、輪ができるまでには至り
ませんでしたが。つながりということは少しできた様子です。
2番目は、前回ご紹介した 鹿と生活要素(水、餌、棲家)のゲーム。鹿が
欲しがる要素と準備された要素の出会いで鹿の数が決まるゲームですが、前
提をキチンと理解していないせいか、1匹の鹿に対して要素が2つもくっつ
くなんてことも起きて、鹿の数の変動が不正確になったこともありました。
ルールはある意味自然の掟ということをもっと子ども達に伝えなければなら
なかったという反省もあります。
最後の瞬間冷凍動物は、野うさぎが穴から出て、餌場まで行って餌を食べ
る。それをきつねが捕まええるとゲーム。
えさを3個食べないと死ぬウサギ(1回に1個)、ウサギを2匹食べないと
キツネは死ぬ。途中の穴に逃げ込んだり、つかまりそうになってフリーズ
(身を硬くした)ら捕まらないと言う自然の掟で開始。
児童を半分にわけ、きつね5匹、うさぎ22匹で始めたゲーム最終的には、
キツネは2匹、野うさぎは5−8匹しか生き残りません。自然の厳しさまで
は、十分伝えられなかったのですが、インタビューすると「動物の気持ちが
分った」とか、「捕まらないためのコツが分った」などの意見が出ました。
これまで外から見ていた野生動物を自分が野生動物になったつもりで発言で
きたことは生き物を見る目が広がりよかったと思います。最後に先生が、今
日はゲームだから何度も生き返ったけど、実際では一度死ぬと皆土に返って
しまうということを念を押して言われ、ゲームで育った世代なのだというこ
とを改めて感じたものです。
自然観察から得えられることと同時に自分が考えて気づくことの大切さをこ
のゲームは教えてくれています。
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