[発行日:2007.05.23] vol.26 ビオトープ訪問紀 日本人の細やかさは生態系の豊かさが作っている 他1件

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┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2007.5.23 ━★

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もくじ 【1】ビオトープ訪問紀
       日本人の細やかさは生態系の豊かさが作っている
                
    【2】第6回 森の聞き書き甲子園募集について



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    【1】ビオトープ訪問紀
       日本人の細やかさは生態系の豊かさが作っている

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5月の初め、当メルマガでコラムをお願いしています「トンボと自然を考え
る会」杉村光俊常務理事を高知県四万十市のトンボ公園に訪ねました。現在
進行中の仕事や環境教育についてのお話を伺いました。

◆トンボのハイビジョン映像製作中
現在、トンボの生態を克明に描いたハイビジョンDVDを製作中です。ほぼ
撮影、原稿書きが終わり、後は編集、ナレーションをつける段階
ということです。
複数の種類のトンボの産卵から孵化、幼虫時代、脱皮、羽化そして、未熟期
から成熟期に至り、交尾するまでの一生を描いたものとなっています。音声
もできるだけ自然の音を中心に使い、効果音などは必要な場面にのみ加えて
いるとの事で、夏の完成予定です。50分ほどの長さになりそうとの事で
す、授業に持って来いの教材となるはずです。
完成したらこのメールマガジンにて、皆様にお知らせします。

◆自然体験をもっと子供達に オムニバス思考の世代を危惧
そもそも、このDVDを残そうと考えたのは、最近の子供達が幼い頃に自然
体験をする機会が乏しく、自然の豊かな環境自体の価値が分からなくなって
いる世代であること。また、そんな子供が成長すると豊かな環境には興味を
示さない親になる可能性があることを危惧したからと、杉村さんは言われま
した。

毎年ここには、小学校から、高校までの生徒達が自然体験学習で来るが、初
めに魚釣りをしていた者が、友人が蝶を捕まえるとそちらに行き、自分達が
今まで使っていた竿やバケツの存在を完全に忘れて、置き去りにしてしま
う。これが一人や二人ではなく、かなりの数の生徒が忘れてきてしまう。こ
れが現代の若者の脳の特性、オムニバス思考と杉村さんは捉えています。こ
れはデジタル機器に囲まれた現代の子供達のある種の生活習慣かもしれませ
ん。

少しでも、生に近い映像を子供達に見てもらって、自然に興味を持つように
なって欲しい。そのためにハイビジョンで撮影をしており、見れば興味が湧
き、昆虫採集をしたくなり、昆虫採集をすれば標本が欲しくなりと良い意味
での循環を期待されています。

トンボの絵を描くときの参考にも役立つのではないかと期待されます。トン
ボの絵を図鑑で見て描くだけではだめで、できるだけ、本物がいるところや
行動を観察して描くことで、良い経験ができ、良い絵が描けるといっておら
れました。
トンボの絵を描くことも自然体験のひとつの入り口で トンボという生物の
概念を子供の中に入れてやるためには、図鑑では無理、本物と触れ合うこと
が大切だと。

◆自然体験や観察で身につく力
自然を体験することで子供達は『思考の連続性を知らず知らずのうちに身に
着ける』そうです。
たとえば、魚釣りをするにしても、魚の習性を考慮したこちらの動きや、待
ち伏せの仕方など、想像力を働かせたシミュレーションが大切になってく
る。これが無いと魚は捕まらない。それから、気配を消して、油断させる間
合い(忍耐)を図り、一気に集中して(判断力、行動力)捕まえる。しか
し、現代のようにデジタルでモノを捉えると思考の連続性がなくなる。

また、生態系の豊かさは人の心も豊かにする。日本のお蔭様とは 植物の種
類が多く、木陰で色々な植物や動物が育ち多様性を保っていることから転じ
た言葉。生物の多様性=心の豊かさを育てる。新潟の地震では被災者が応援
に掛けつけた人に逆に物資を分け与えて、かえって応援者が助けられたとい
う話があります。

川は感情、山・森は理性。日本人は世界で一番細やか。街角ではおばさんが
近所の植物を見ても子供と同じように声を掛けている。これからは感性が世
界を救うのだと。杉村さんは自然の豊かさ、恵みを強調されていました。

四万十学遊館には多くの昆虫類の標本も展示してあります。その標本を見な
がら面白いお話を聞きました。

◆ 同一地域に生息するものは容姿や色、性質が似てくる。
インドに住むクジャクアゲハはインドクジャクの色に似た、同じような色を
している。ドアフグーラミーという熱帯魚はメタリックな青みどりの色でイ
ンドの曼荼羅に描かれた壁画に似ている。
ブラジルでは、熱帯魚のネオンテトラの色はモルフェ蝶の翅の色に似てお
り、この色彩はリオのカーニバルの衣装にもよくみられる。 

性格もまた、自然環境に大きく影響を受ける。アメリカに17年セミという
17年に1回しか地上に現れないセミがいる。これは、天敵に対する抵抗で
ある。襲われないためには地上に姿を見せない。アメリカ大陸に棲む生物は
攻撃性が高い。自然が厳しいからであろう。アメリカのこれまでのイラクに
対する政策など戦争が基本のスタンスは攻撃性ということで似ている。

その点日本は、四季の移ろいなどがあり、穏やか。「今」を我慢すると必ず
明日が来る。季節はめぐる。日本の生態系に棲む生き物は危ない時には「逃
げる習性を持っている臆病者の生態」恐怖を感じる因子が日本の国土にはあ
る。だからトンボが取りにくい。

ヨーロッパではトンボの種類は少なく、日本の1/4〜1/5くらい。セミ
は1種類でアブラゼミのような声らしくうるさい音にしか聞こえないとの
事、日本にはせみの種類も多く、さまざまな鳴き声があります。中でもヒグ
ラシの声を聞せると外人も驚く。生物の種類が多いと生態系も豊かになり、
せみの声を聞き分ける日本人の細やかさはこの生態系、生物の多様性からき
ているのではないかといわれていました。分別(ふんべつ)があるから細や
かになっていくのだろうと想像した次第です。


◆地球の乾燥とトンボについて
3月号で、むさしの里山研究会の新井さんの調査でごく近くの生態系は変っ
ていないのに全体的にかえるやトンボの個体数が減っていることを書きまし
たが、杉村さんは次のように感じておられます。

「湿度が影響しているのではないか 結構トンボは湿度に敏感である」「ア
キアカネは湿度が嫌いのなので乾いたところへ行く。谷の奥にはいない。温
暖化といわれているがそれは暖かくなるだけでなく、乾燥してきているので
はないか?これまで乾いたところのトンボといわれているエゾアカネ、マン
シュウアカネが日本へ来ている。ある意味に本自体での稲作文化の衰退と共
に日本全体が乾いてきている。
その他にも事例は見られ、ツマグロヒョウモンは町に住んでいたがあまりに
乾燥するので、現在では山に入っている。
湿度はトンボには、生死に関わる重大な問題で、翅の強度に即影響してく
る。乾くと翅が折れたり傷つきやすく、湿りすぎると翅が重くなる。
生きている化石と呼ばれるムカシトンボは温度や湿度の変化に結構強く、
13℃の低い温度でも、湿度が60%でも産卵を平気でする。トンボは植物が
一番元気な時に産卵をするそうです。

モートンイトトンボ(雌グリーン、雄オレンジ)は四国では徳島とこのトン
ボ公園でしか見られない貴重な種類。芹が生える流水域で草刈をして一定の
湿度で無いと棲めない。湿りすぎず、乾きすぎずが大切。
稲作があることで一定だった自然が変っていって、棲めなくなっている。

だいたいトンボは湿度60%未満で活動する。ムカシトンボは50%未満、
ヤンマは湿度で反応夕方高く昇る。トラフトンボ、ミナミヤンマは湿度高く
ても良い。ベッコウトンボは乾いたところはだめ、翅のキチン化が始まる。
(硬くなっていきます。)
ホバリングは若いトンボにしかできない。硬くなった翅ではホバリングはで
きない。

鳥インフルエンザは寒暖でなく、湿度の問題で起こると考える。田んぼはし
っとりと国土をさせる。そのことが日本では鳥インフルエンザを大流行させ
ずに水際で止めているのではないか

ここ、四万十市には生き物と関わり、体験学習できる場所がたくさんありま
す。かつおのタタキづくり、天然塩づくり、竹炭づくり、野草料理、ホエー
ルウォッチング、カヌー体験、シルクロードの装飾品にもなっている斜紋岩
探しなど。若い世代に是非豊富な体験をしにきて欲しい。と日焼けした顔で
おっしゃっていました。




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      【2】第6回 森の聞き書き甲子園募集について
      
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前回4月号で第5回森の聞き書き甲子園フォーラムの模様をご紹介しました
が、もう来年の発表会に向け、新年度の参加者の募集が始まります。
皆様のお近くの高校生に是非、ご紹介ください。
参加者は、日本人の昔からの伝統的な仕事、技術を目にするだけでなく、名
人の世代を超えた話の中から、高校生達は、生き方、自然との接し方また、
礼儀などさまざまなことを学びます。

そして、これから自分が進みたい方向や人生に対する考え方など家族や友人
達とは違う視点での話より、数多くのヒントを得るようです。
これからも森と関わっていたい、森に関わる仕事をしてみたいという感想を
持つ生徒の多さにはびっくりします。

OB・OGたちが、聞き書きの合宿からサポートに参加してくれ、フォーラ
ムの企画・運営も行うなど、自ら考え、行動する人間に変わっていく姿は傍
目から見ていても、嬉しくもあり、たのもしさも感じます。
参加資格は高校生のみ。7月2日必着で申し込み用紙と参加動機を書いた作
文の提出が必要です。

応募についての詳細は下記をご覧ください。
 http://www.foxfire-japan.com/

自然の豊かさに気づき、守り育てる新しい力を発掘しようではありませんか

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┃   発行者: 株式会社トンボ  環境事業企画室
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