[発行日:2007.03.30] vol.24 コラム 杉村 光俊氏 森の変化はトンボの変化、やはり、田んぼは素晴らしいビオトープ 他1件
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日: 2007.3.30 ━★
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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。桜が、各地で咲き始めてい
るようです。3月は、天候が暖かかったり、寒かったりと気象庁も開花予報
に大変苦労したようです。明らかに気候の変化や温暖化を感じる最近です。
最近聞いた話ですが、こんなことご存知でしょうか?
スーパー、コンビニのレジ袋。これを1枚生産するには、トイレの電気を1
時間の点け放しと同等のエネルギーコストがかかっている。
これは意外とびっくりですね。
レジ袋は日本全国で毎年300億枚以上使われていて、ドラム缶換算300
万本、発生するCO2は132万トン。レジ袋を使わないとかなりの環境貢
献になります。ペットボトルはこのレジ袋の3倍ものエネルギーがかかって
いるそうです。原油60CCがペットボトルに使われています。現在の石油
埋蔵確認量は富士山をひっくり返した柄杓にすると約
0.8杯。石油をできるだけ使わない生活を再度取り戻すことが重要ではな
いでしょうか?
自然エネルギーや森など再生可能なエネルギーの利用と同時に私たちの地球
環境についての意識を高め、消費行動を変えることが必要です。
4月から容器包装リサイクル法が改正され、個人でもマイバッグを持ってい
こうという動きがさらに活性化されます。マイバッグを持ちましょう。とい
うアピールでした。
今回は、トンボなどの生物と自然環境の関わりについての内容をお届けしま
す。
もくじ 【1】杉村 光俊氏
森の変化はトンボの変化
【2】ビオトープ訪問紀
やはり、田んぼは素晴らしいビオトープ
【3】全国トンボサミット開催のお知らせ
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【1】森の変化はトンボの変化
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今回は編集部たってのご依頼で、森とトンボのお話しを。
さて、四国西南部で最も大切にされている森の好例として、足摺岬がありま
す。真冬でも鬱蒼とした照葉樹の森は数多の小渓流を育み、周辺の小規模な
水田地帯を潤してきました。決して多様とはいえない水環境の中で、四国特
産種シコクトゲオトンボを始めカワトンボ、ヤマサナエ、オニヤンマ、コヤ
マトンボ、シオカラトンボ、マユタテアカネなど、これまでに30種を越え
るトンボが記録されています。とりわけ4枚の翅にくっきりとした黒条を持
つミナミヤンマのメスは足摺岬0シンボライズするトンボとして愛好家の心
を捉えて離しません。
ところが近年、ミナミヤンマを始め多くのトンボが急速に減少してきまし
た。ミヤマカワトンボやカトリヤンマに至ってはほぼ絶滅状態で、シオカラ
トンボさえめったにみることができなくなっています。ただ少数派ですが、
増加したトンボもいます。先述のシコクトゲオや、日本最大のトンボ、オニ
ヤンマなど。もちろん森が伐採されたりといった、大きな自然破壊があった
のではありません。というよりむしろ、トンボ類の保護に関して言えば必要
以上に森を大切にしていると言っても過言ではないでしょう。
では足摺岬のトンボ達に一体何が起きたのでしょうか?結論は、いくつかの
理由で谷周辺の木々を茂るに任せてしまったから。木々が大きくなって渓流
への日照を遮るようになると、藻類が育たなくなります。
続いてこれを食料としているカゲロウの幼虫やヌマエビなどが減少、さらに
これらを捕食するトンボの幼虫やクロヨシノボリ等の魚類も住めなくなって
しまうと言う訳です。
かつてトンボを始めとする水性昆虫が豊富だった頃、足摺岬の渓流周辺には
これらを食糧として子育てするサンコウチョウなど小鳥の姿も多くみられま
したが、今ではそれらも減っていることは言うまでもありません。加えて大
木は地中の水をよく吸収するため、渓流の水量まで減少させてしまいます。
一方、森の周辺は木々の蒸散作用によって高湿度となるため、そのような環
境を好むシコクトゲオトンボにとってはどんどん環境が好転しています。ま
た水量と河川内の日照が多かった頃には河床に不要な泥が堆積することなく
サラサラとした砂地の川でしたが、現在では落ち葉などが腐敗して生じた泥
が川底のあちこちに厚く積っています。それがオジロサナエやミナミヤンマ
に代わりヤマサナエやオニヤンマが増加した大きな原因です。
つまり豊かな森が全ての生物にとって必ずしも有益なものとはならず、どの
ような生態系を守るのかという視点に立って管理することも忘れてはならな
いと思います。加えて、足摺岬では減反による放置田も増加、シオカラトン
ボを始めとする止水性のトンボまで激減しています。
そんな足摺岬にこのほど、トンボビオトープが完成しました。植栽したカキ
ツバタなどの水生植物は全てトンボ王国産です。
「トンボと自然を考える会」と地元の人達との合作とも言えるトンボ池の傍
にはミナミヤンマの一大生息地もあり、止水性トンボの生息地としてだけで
はなく、ミナミヤンマにとってもいい餌場となる筈です。
「トンボと自然を考える会」は四万十市のトンボ王国を核として、各地のト
ンボ生息地保全や再生にも力を入れています。そんな活動を支えて下さるサ
ポーター(会員)も随時募集しています。
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.3.27/oodo.jpg
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【2】ビオトープ訪問紀
やはり、田んぼは素晴らしいビオトープ
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2004年11月のスクールビオトープ メールマガジン VOL.9で紹
介した埼玉県寄居町にあるむさしの里山研究が管理するビオトープ。今回2
年半ぶりに訪問しました。同会では休耕田を中心としたビオトープを3箇所
作って、管理しておられますが、その変化についてお伺いしてきました。
前回の訪問とは別の2つのトンボ池を案内いただきました。
1つは、ビオトープとは何かを知らせるためのモデルとして作ったトンボ池
です。18年前から使わなくなった谷津田を借りて、トンボが棲める環境を
作っていました。横を流れる小川に6〜7年前までは蛍が棲み、アカガエル
も多くいてトンボも多かったのですが、今は居なくなりました。そして、い
わゆる湿性遷移が進んでいます。田んぼが埋まり、ヨシなどが生えてきてい
て、既に明るい日差しを好む陽樹も生えてきています。現在では、年2回ほ
どの草刈を行う程度で、維持管理までなかなか手が回りません。
「上流の環境には特に変化はなく、対岸に笹が茂ったくらいなのに田んぼは
乾き、生き物はいなくなった、小川は相変わらず流れているが。水田で稲を
つくり続けることで保たれる生物の多様性をいまさらながら強く感じる」と
おっしゃったのが印象的です。
人手がなく、壊れた木の歩道の整備もなかなかできないとか、「補修のため
に積んだ材木が盗まれたり、放っておくとゴミの不法投棄をされたりするの
で、見つけたらすぐに撤去するのでなんとかきれいな状態だが、トンボ池と
しての機能はもうなく、湿性遷移を見るのに良い事例という程度のものにな
ってしまっている」とのことです。
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/07.3.27/tanbo.jpg
2つめは、周囲に桑畑がある谷津田の休耕田。手入れをしながらトンボ池と
して機能を果たしているビオトープです。
10aの休耕田に4つほどのトンボ池を掘り、上流から水がつながるようにし
ています。
「ここも、蛍がかつていたが今は生息しない。前述のビオトープと同じく周
りの環境変化は無いように思うが、全体水の量が減ってきていると感じる」
との事でした。
今ある4つの池では、少しずつ棲む生物が違っていました。アカガエルのお
たまじゃくしがまったくいない池、結構いる池、沢山いる池と分かれてお
り、「水深や日当たり、など微気候が違うことが微妙に影響している」と新
井さんの説明。
「調査記録を取っていないので感覚的にしか分からないが、アカガエルの個
体数自体も減ってきている。以前は池にはすべて密集したおたまじゃくしが
この季節は見られた。また、ここは面白いことに、アメリカザリガニの数が
一定していて他のビオトープのように増えすぎない特徴がある、これが鳥の
影響かどうかはわからないが。」
できるだけ多様な空間作りを行うために、池が埋まるとまた次の池を掘って
いるということです。
日々観察を続けながら、生物の多様性を保つようにビオトープの管理を実施
されている同会の活動には、頭が下がります。
2つのビオトープを見て痛感したのは、だんだんと土地が乾いてきていると
いうこと。それに伴って生き物の種類、個体数ともに変化が生じ、多様性が
損なわれてきているということです。
アルゴア氏の「不都合な真実」の中にあった地球規模での乾燥地帯の増加、
日本でも水耕が減る中でだんだんと土地が乾いているのでしょうか?
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世界的な気象学者 真鍋淑郎先生は、気候変動について以下の事を言ってお
られます。 (2006.12.9国際環境シンポジウムより)
前世紀に比べて1975年から2005年までの30年に気温は0.7度上
がっている。陸の上で温度が上がっている、北に行くほど温度が高くなって
いる。地球の大部分の地域が上がっている。
温暖化が起こる前は雨が降るほうが、蒸発より多かった。
今は、貿易風の影響があり、赤道に向かって水蒸気が増えている。そして熱
帯降雨帯に雨が降る。それから、温帯低気圧が 中緯度から高緯度に蒸気を
運ぶので高緯度地方で雨が降る。
温度が上がると水蒸気を含む許容量が増える。したがって、熱帯や高緯度地
区でも水蒸気量が増え、雨が増える。亜熱帯は蒸発量が増えて、乾く方向に
行く。砂漠地区はさらに乾く、亜熱帯の水蒸気が 熱帯と高緯度地区に行く
のだと。
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霞ヶ浦につながる、休耕田となって荒れ果てていた谷津田を、3年がかりで
復興した事例があります。NPO法人アサザ基金のメンバーとNEC社員が
一緒になって復興しました。今は酒米ができるまでになりました。笹刈りや
間伐などを行い、田んぼの復興と同時に生き物達も帰ってきました。
地球規模では乾く方向にあるのかもしれませんが、まだまだ、谷津田を復興
することで生物の多様性が保たれるのではないでしょうか。
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課題は、どうやって谷津田を復興する人たちが集まれるか、都会の人も含め
て、自然と出会うきっかけをどのように作れるか? そして継続できるか?
という事です。個人や家族単位の参加も重要ですし、多くの人を動員できる
企業の力もまた、重要です。霞ヶ浦の谷津田復興には、遠方から来るNEC
社員が多いとか、さらにここに参加した子供達は、だんだんと生き生きして
きたそうです。
自然との出会い、自然の素晴らしさ、いのちの大切さの実感が田んぼにはあ
るのでしょう。
その入り口としての学校ビオトープの持つ役割を再認識すると同時に
実際の自然と触れ合うためのきっかけづくりのむずかしさを感じた今回の取
材でした。
将来的には、学校教育で小学校から、高校まで継続的に取り組める自然体験
プログラムの整備ができると良いという気がしています。
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【3】全国トンボサミット開催のお知らせ
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「第18回全国トンボ市民サミット赤とんぼ大会」が来る
5月12日 土曜日に東京、江東区で開催されます。
受付時間が9:30−10:00 10:00より開会式がスタートです。
このサミットは来年度から3年計画で全国アカトンボ調査を実施するにあた
り、その説明会と広報を兼ねています。江東区と全国トンボ市民サミットの
共催です。会場は東陽町にある江東区文化センター大ホールです。
会場の地図は下記より確認ください。
http://www.kcf.or.jp/009map/bunka_map.html
秋津島と呼ばれていた頃の日本人の心 自然と共に暮らし、その豊かさを感
じる心を赤とんぼを見て取り戻そうという気持ちが根底に流れています。
午前は開会式、主催者挨拶。主旨説明につづき、江東区、横浜市の状況報
告、午後3分科会を開催するとの事です。
分科会は
(1)アキアカネのマ−キングによる個体数調査について
(2)学校プ−ルでのヤゴ救出による環境学習と赤とんぼ調査について
(3)赤とんぼをめぐる方言や言い伝えなどの調査についてが予定されています。
皆様、是非ご参加ください。
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┃ 発行者: 株式会社トンボ 環境事業企画室
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