[発行日:2007.04.27] vol.25 日本の森は私たちが守る 第5回森の聞き書き甲子園フォーラム開催 他2件

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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2007.4.27 ━★

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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。4月は、天候が暖かかった
り、寒かったりと3月と同じような気候でした。遅めの菜種梅雨がほぼ終わ
ったようです。いよいよ新緑の薫る季節の到来です。今月は、学校、学生の
話題を中心にお届けします。

もくじ 【1】ビオトープ訪問紀
       発展するビオトープ教育 全国へそして世界へ
                
    【2】日本の森は私たちが守る 
       第5回森の聞き書き甲子園フォーラム開催

    【3】全国学校ビオトープコンクール申し込みのお知らせ
       締め切りは6月30日 







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     【1】発展するビオトープ教育 全国へそして世界へ

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2003.9月小誌の第2号で紹介させていただいた茨城県石岡市の石岡小
学校、3年半ぶりに訪問してその後のビオトープを使った教育についてお
聞きしました。
お話を伺ったのは前回と同じ吉沼育子教諭。3年半の間の児童の成長につ
いて語ってくださいました。
吉沼先生が4年生を受け持った2003年から3年間は持ち上がりで6年
生まで担当。昨年2006年度は再び6年生を受け持ち、その学年でもま
たビオトープを使った総合教育を実践されました。

同小学校では、地域・自然・人を生かした環境学習を4年生で実施し、 
5年生は稲作 6年生はふるさとの再発見を実施。4年生での学びを5−
6年生の家庭科で繰り返し生かす、カリキュラムを編成されています。そ
して、学校の中だけの教育にとどまらずに常に地域との関わりを意識し、
積極的に関わる教育を行っておられます。

ビオトープを使った学習のバックには2つの支援があります。1つは前校
長のバックアップや他の先生方とのタイアップ。もう1つは、地元のNP
O法人アサザ基金の環境授業を含む強力なバックアップ。地元にとどまら
ず、他県との交流の場を提供してくれています。
今年度も石岡小学校では、3.4,5,6の4学年で総合学習のテーマと
関わるビオトープ教育が行われ、アサザ基金は環境授業を4,5年生対象に
実施します。

アサザ基金の活動は霞ヶ浦の総合的な環境改善を行うもので、行政や市民、
企業とも連携しています。霞ヶ浦周辺の170あまりの小中学校で学校ビ
オトープ作りを指導サポートし、それらを使った授業も行っています。ま
た、各学校で育てられたアサザの苗は子供達によって霞ヶ浦へ植え付けら
れます。アサザは霞ヶ浦の水の浄化に役立っています。

以下、2003.4月−2007.3月までのビオトープを使った石岡小学
校の授業や活動の紹介です。
「明るく、素直な子供は多いが、進んで課題を見つけたり、挨拶や返事を
したり、人とのコミュニケーションを苦手とする子供が見られる。」と児
童を分析、その力を高める教育が行われています。ねらいは、
・児童が身近な地域の自然に働きかけ、人の話を聞くことで多くの発見を
して、自ら課題を見つけ、考えを練り上げることができるようになる。
・自ら解決したことは自身を持って表現でき、前向きに行動できるように
なる。
・多くの人とのかかわりで、挨拶、返事、会話の大切さそして、会話の大
切さが分かってコミュニケーション力が身につき、人や自然に対する感
謝や思いやる心が育てる。 
   
そして、それを実践するために以下のように指導されました。  
@自分の目で、観察。その後、自然博物館職員との自然観察。専門家の話
を一方的に聞くのでなく、自分の考えも含めて質問する。
Aアサザ基金との協力。 ビオトープを作った経緯、絶滅危惧種の話、生
態系の話、浄化問題の解説。さらに霞ヶ浦につなげる思いを聞き、近く
の恋瀬川、霞ヶ浦へと学びを広げる。
B鹿島鉄道石岡駅でのビオトープ作り。有志を募って実行、学校ビオトー
プの生き物を放流。(鹿島鉄道はこの3月で廃止となりました。)
C恋瀬川・霞ヶ浦の見学と水生植物の植え付け
D電車に乗って、アサザ群生地の見学
E学校内にビオトープセンサーの設置。アサザ−NECのプロジェクトで
開発したエコセンサーを学校に設置、パソコンとつなげ10分後とに気
温、水温、湿度、風向きなどを計測。

さらに、体験したことを生かし、互いの考えや意見を話せる場を持ち、繰
り返すことで自信をつけさせる事を狙って、以下のことも実施。
F中間報告会・発表会の実施。
Gディベートの充実「どっちの霞ヶ浦ショー」実施。霞ヶ浦はこれからき
れいになるか、ならないか、今のままかを各自根拠を持って意見発表。
Hエコ・ニコサミット2003への参加 国連大学で全国から来た6年生
に混じって発表・討論。(西友主催)
I鳥取県に招かれ、環境フォーラムにおいて取り組みの発表。
Jアサザ基金が指導する秋田県の潟上市に招待され、同市の小学生とのパ
ネルディスカッションに参加。その後損保ジャパン環境財団の援助で秋
田の小学生を招き、霞ヶ浦で交流。(アサザは秋田では花が咲かないの
で、是非見せてあげたいとの子供達のたっての願いが実現。)
K世界学生サミット 2007年3月6大陸の学生が、アサザプロジェク
トの活動を見学、そのプログラムの一環として児童と学生達の交流会を
実施。世界の学生達がその環境意識の高さに驚きました。

子供達の環境意識の高さを表すエピソード。秋田でのパネルディスカッシ
ョンでのこと。「今の地球、霞ヶ浦を汚したのは大人たちだ、大人たちは、
やがて死んでいなくなる。私達は霞ヶ浦を汚さない、私達が大人になれば
霞ヶ浦はきれいになる。」と4年生の時から暖めていた思いを発表、「こ
れだけはどうしても言って卒業したかった」と女子児童。これには、会場
の大人も頷き、反省したとの事です。

ビオトープを使った授業の成果として吉沼先生は以下のことを言われてい
ます。
1.身近な学校ビオトープと触れ合ことで生き物を愛でる心、大切にする
心が育った。
2.課題を見つけ、解決していこうとする意欲が生まれた。
3.グループでの課題解決、地域の人、その道の達人、専門家との交流を
通して、挨拶や質問の仕方、言葉遣いの大切さ、さらには思いやり、
さまざまな生き方があること、憧れ、たくさんの人から支えられて生き
ていることを自覚できた。
4.個に応じたアドバイスの結果、児童は最後まであきらめずに、解決に向
けて努力し、達成の喜びを感じた。
5.石岡駅のビオトープづくりを通して、一人の力は小さいが協力すること
で人や環境のために役立つことができることを知った。

ビオトープを通した教育で、子供達が素晴らしい力を身につけ、育っていっ
てくれる事を体感した取材でした。新任の校長先生も、ビオトープ教育には
熱心な方、今後さらに発展していくと思われます。



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     【2】日本の森は私たちが守る 
     第5回森の聞き書き甲子園フォーラム開催

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春の甲子園が開催されている3月25日、26日 東京では、もうひとつ
の甲子園が開催されました。今年で5回目を迎えた森の聞き書き甲子園は、
江戸東京博物館ホールで発表会、その後、高尾の森わくわくビレッジで意
見交換・発表会、翌日森づくりの体験が行われました。当社も応募チラシ
配布の協力企業として参加しています。今年は初めて、ほぼ全員の参加者
が集まりました。

この甲子園は、毎年全国100名の高校生が、森とともに生き続けて来た
名人100人を訪ね、その仕事について、名人の言葉を聞き書きしてレポ
ートを提出するものです。8月に3泊4日のプロの作家による指導を受け
た後、木を伐る、器を作る、きのこを栽培するなどさまざまな森の職業の
名人の方に会い取材をします。そして、年末までに報告書をまとめあげま
す。

第1部 挨拶、表彰式と優秀作品インタビュー
辻 林野庁長官の挨拶で始まり「一つ一つの作品が力作だった。全国で美
しい森づくりを展開しているが、今日を契機としてさらに、励んでいきた
い。」と話されました。その後、森の名人の認証と高校生代表に終了書授
与がなされました。

その後、作家・インタビュアーの阿川 佐和子氏、聞き書きの事前合宿指
導もされている作家 塩野米松氏の進行で代表4組のインタビューがあり
ました。抜粋で1組紹介します。

優秀作品インタビュー
樵:浅見(あざみ)和夫氏 高校生:筑波大学附属坂戸高校2年
安藤 愛  この安藤さんは、産経新聞スカラーシップでも優秀賞を受賞。
当日褒美で中国旅行に出発予定だったが「聞き書き甲子園」の参加を選ん
だという生徒。如何にこちらが魅力的であるかが分かります。

名人自己紹介 きこり 若い時は職業の紹介をすると笑われた。大学を卒
業してきこりになった。この仕事を始めた時、埼玉県では5人くらいだっ
た。林業始めて9代目、きこりで5代目になる。
当時の林業とは役に立たない広葉樹を切って金になる木を植えることだっ
た。はじめは岐阜の郡上で修行、徒弟に近い形で就職することができたの
は良かった。先祖に切らずの伝兵衛という人がいて、今の森が残った。戦
後の売れる時期も無理して切らなかったのは先祖の教えのおかげ。
間伐は50年、100年、150年の木でも行う。現在植えている木は、
スギが主。120年くらいが一番古い木だ。
挿し木(クローン苗)は見事に育つが、雪で見事にすぐ倒れる、普通は苗
床で育てる。それは、雪に強い。土地にあった木を育てることが大切だ。
安藤:総合学科農業関係に所属している。教科書に書いていないことが分
かった。木を切ることが森を破壊すると思っていたら、木を切って森を管
理することを知った。大学も農業関係に進みたい。技術を習得して将来は
海外で暮らせたらよいと思っている。

高校生達がこれからも森にかかわるきっかけを確固たるものにするために、
講演もありました。

第2部 講演 「森を通して見えるもの」 浜田久美子氏 
現在、森林執筆家ですがもともとは、精神科のカウンセラーの同氏。大学
院で登校拒否になったが森との出会いで癒され、その後森へ恩返しがした
いと現在の仕事に携わっています。

あるときキャンプに夫と行った。340年ほどの樹齢のスギ、なんか木に
呼ばれる気がした。見て、触り、抱きついたら気持ちが良かった。それ以
来、木を見ると抱きつくようになった。
マンションに戻ると気持ちが悪くなる。週末になると木に抱きつく。木が
バッテリーみたいだった。数ヶ月たったら、スコンと気が晴れた。気持ち
の悪さを取り払ってくれたのが木だった。
木に恩返しをしたいと思った。どうしたらよいか? と考えている時、山仕
事は難しくない、素人でも学べば楽しくできる。という先生2人に会い、
山仕事の塾に入った。

現在の日本は、里山の暮らしを忘れ、木を使わない生活をしている。燃料
として、薪や炭を使わない生活。1960年代に変っていった。広葉樹を
切って針葉樹を植えたことで生活が一変した。
日常の生活で木の炎を見ることを日本人は失った。日本の山を変えた。山
の緑色は変っていないが、中身や姿は変わっていった。
日本の国土の67%が山だがそこに、住んでいる人は数%、その人が管理
している。
森の聞き書き甲子園は、若い人たちが森のことが分かるようになり、大変
良いことだ。これまで、山のことが分かる人々が林業関係以外は少なく理
解者が広がらなかった。

TVでは、世界の森林伐採のことが報道され、木を切ってはいけないとい
う印象を与えてしまう。日本の山を残すために良いことは、これから日本
の木を使うことだ。良い状態でかつ賢く使うことが大切。「そういえばあ
の時、取材で話があった」ということを覚えていて欲しい。口コミでアチ
コチに伝えていって欲しい。

第3部卒業生の活動
1.森の聞き書き甲子園  映像化プロジェクト
3組の映像化プロジェクトを実施。映像によって名人の仕事を記録。代表
一組の発表。第2回聞き書き甲子園に参加し、聞き書き取材を行った前川
洋平、江部 弘樹2名が長野県のヘギ板職人、小林鶴三さんを取材。

2.共存の森活動紹介
森の聞き書きの卒業生達が森を守る活動を展開。 関東:千葉鶴舞の森、
関西:滋賀県大津市 龍谷の森、東北:山形源流の森。これから新しく新
潟で活動が始まる北陸の森 5月から活動をはじめ、ブナの植林、下草刈
を実施予定です。北陸の人に参加してもらいたいので北陸の森と名づけた
との事です。

初日後半、参加しての感想を14グループに分かれて卒業生が進行役とな
ってまとめ、発表しました。
@ 名人と出会って感じたこと、学んだこと(抜粋)
・昔話を聞くことで、誰にも優しくする態度と心に触れた。名人の気遣い
が嬉しかった。
・自然と人間のバランスの大切さ 共存の大切さを学んだ。
・自然への感謝を学んだ。
・名人は人生経験豊富:自然と人間を同様に考えている。
・経験の長さが仕事への誇りになっている。
・名人は木のことを肌で感じてよく知っている。知識量もすごい。

A森や木、職人さんの仕事と出会って学んだこと(抜粋)
・モノを大切にする心を学んだ 森林は人の手が入ることで 
継続することができる。
・地球の生態系が壊されているのに見ているだけでよいのか、  
深刻化する問題に向き合う必要がある。
・自然を大切にする、自然をなめてはいけない。
・自然は仕事仲間と同時に遊び仲間 
・名人の技術を受け継ぐことは森を守ること

B聞き書きに参加してこれからやりたいこと(抜粋)
・名人の話を聞くことが大切だと分かった、他の名人にあって話を聞きた
い。
・聞き書き甲子園を続けていきたい。OBOGとの出会いが良かった。
・樹木医になりたい。 
・森や山のボランティアや森の仕事を実際に体験したい。
・ゴミ拾いで山をきれいにしたい。自分達で森をきれいにするように活動
したい。

翌日は、辰巳の森緑道公園にてタブノキの播種作業と中央防波堤内埋立地
での間伐とクロマツの植樹を体験。その後間伐・植林した場所についての
「海の森構想」の説明を聞き、新たな思いを胸に各自帰途につきました。

森の聞き書き甲子園 2007年度の募集がもうすぐスタートします。
5月中旬より申し込み受付が始まり7月2日が締め切りです。
来年もどんな話が聞けるか、どんな高校生と出会えるか楽しみです。


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    【3】全国学校ビオトープコンクール申し込みのお知らせ
       締め切りは6月30日
      
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今年で第5回目を迎える全国学校ビオトープコンクールですが、2年に1
回の開催なので始まって10年を迎えることになります。
今回は、幼稚園・保育所部門、小中学校部門、高校以上部門に分けて募集
されています。今回も弊社は協賛いたします。
今回のサブテーマは、「目がかがやいているね、ビオトープ」です。
主催の財団法人日本生態系協会では、今回の開催に当たって以下のような
ことを考えておられます。
子供の犯罪やいじめ、自殺問題など現代の子供達は、心が病み、社会性を
失い、目の輝きを失いつつあります。学校ビオトープは自然体験や環境学
習の画期的な教材であるとともに、子供達の心も育てます。ビオトープ作
りに参加することで子供達はつくりあげる喜びや達成感を味わいます。日
々の生活の中で自然と触れ合うことで心の安らぎを得ます。人と交流する
ことの面白さ、重要さを学びます。そして、さまざまな人が集い、学校ビ
オトープからまちの自然へと視点が広がることで人と人、人と自然が共存
するまちづくり、ひとづくりの拠点にもなります。
目が輝く子供や大人たちが全国に増えることを目指し開催してきました。 
 
応募は学校以外にも、活動に関わりのある団体からもできます。PTA,
環境NGO、町内会、企業など地域のグループ・団体からも応募ができます。
行政機関による応募も可能との事です。ただし、表彰は学校に対して行われ
ます。
文部科学大臣賞、環境大臣賞、国土交通大臣賞、ドイツ大使館賞、財団法
人日本生態系協会会長賞の上位5賞のほか、金、銀、銅賞が準備されてい
ます。これまでに上位5賞の入賞校の応募はできません。

応募についての詳細は下記をご覧ください。
 http://www.ecosys.or.jp/eco-japan/




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