[発行日:2008.08.07] vol.45 へイケボタルは人つなぎ、人を育てる
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こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。暦の上では立秋となりまし
た。北京オリンピックがいよいよ明日から始まります。
7月は蛍に関する番組などが放送されていました。当環境事業企画室も蛍の鑑
賞会の取材に行ってまいりました。お盆も過ぎるといよいよ蛍の話題も色あ
せてしまいますので早めにお送りします。
もくじ 【1】へイケボタルは人つなぎ、人を育てる
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【1】ヘイケボタルは人つなぎ、人を育てる
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5月号でご紹介した船橋芝山高校の「芝山湿地」、
今回は地域とのつながりをテーマとして行なわれた同校科学研究部が主催し
た蛍の観察会の模様をご紹介します。
http://www.tombow.gr.jp/Biotope_melmaga/08.8.18/1.pdf
< 外部を招いての交流 >
これまで、学校関係者や極く近くの住民との間で行なわれてきた蛍の鑑賞会
でしたが、今年から、同部は広く地域との交流を進める方針を打ち出しまし
た。そして、この蛍の鑑賞会が5月の里山シンポジウムに続いて、外部を招
いての2回目の活動となりました。
< 今年最後の蛍の鑑賞会 >
同日までに、学内関係者を対象に既に3回開催された、今夏の蛍の鑑賞会。
この日が今年最後の鑑賞の夕べとなりました。
薄暮の玄関前に参加者が集まり始めたのが午後7時過ぎ、受付を済ませ、蛍
の観察の舞台となる「芝山湿地」の紹介パンフや蛍の他に棲む生物の紹介な
どに目を通して開始時刻までの時を過ごしました。
手馴れた様子の科学研究部のメンバーより、防虫スプレーを受け取り、体に
噴霧。定刻の午後7時30分には、地元の方々を中心に30名ほどが集合し
ました。
< 鑑賞会の参加メンバー >
顧問の佐野先生が、芝山湿地の簡単な由来とともに参加者を紹介。参加者は
地元の団地老人会のくすのき会、芝山十町会、開かれた学校づくり委員会、
そして、県庁からの参加もあり賑やかな顔ぶれです。校長先生も参加、その
ほか地元の新聞の女性記者も取材に訪れました。
< 芝山湿地とヘイケボタル >
観察の前に、佐野先生と科学研究部より 芝山湿地での蛍観察についての事
前説明が行なわれました。
芝山湿地は1999年以前は荒地となっていて、それをエコアップしようと
整備。ヘイケボタルは絶滅していなかったので2004年までの数年の間
幼虫を外部から入れて育てて来ました。
< 地元が救い、見守る芝山湿地 >
芝山湿地が現在の姿になれた背景には、船橋市が整備した斜面林からの、湧
水の流れ込みがあります。そのことによって湿地が維持されています。元
は、芝山十町会がマンション建設計画に反対したからこそ残ったものである
という経緯も語られました。自然再生には人の力が必要です。
また、湿地に隣接するご家庭が協力してくれてカーテンを閉め、湿地に明か
りが届かないようにしてくれるために蛍の交尾が可能となっている事の説明
もありました。
< 貴重なヘイケボタル >
現在の芝山湿地では毎年30匹〜40匹のヘイケボタルを見ることができま
す。7〜8月にかけて交尾し、1ヶ月ほどで孵化した卵は巻貝を食べて大き
くなり、翌年の5〜6月にかけて土の中で繭を作り羽化します。ここに棲む
ヘイケボタルは 千葉県野生生物レッドデータブックのカテゴリーCにラン
クされています。
オスとメスの見分け方も説明がありました。腹部の節が2つ光るのはオス、
1つ光るのがメス。オスは交尾相手を求めて飛び回り、メスはおとなしく葉
陰に隠れている事が多いそうです。
< 科学研究部員のアテンド >
いよいよ懐中電灯を持って出発です。みんなでグラウンドへ降り、さらに階
段を下って湿地につく頃にはとっぷりと日が暮れています。
安全に配慮して懐中電灯で案内してくれる科学研究部員が心強く感じられま
す。
湿地の手前からは真っ暗な状態。部員がコーナーに立って明かりを照らして
くれます。
湿地に降りると、ぽつっ、ぽつっと蛍の光が見えます。風が少しあるせい
か、飛んでいるものは殆ど居ません。子孫を残すためには、やはりの条件を
選ぶのでしょう。
< 蛍の鑑賞 >
緑っぽい光が葦の葉の根元や木道の間に見えます。参加者の中には数十年ぶ
りに蛍を見た方が居て、ついつい喚声があがります。
蛍といえば、いつもの静けさと違うせいか、早い光の点滅で警戒信号を発し
ていました。もともと関東の蛍は関西に比べて点滅の速度がゆっくりしてい
るために、警戒点滅との差が顕著に現れます。
蛍にすれば、自分の家に現れて、突然巨大な生物が、声を出しながらうろう
ろするのですから警戒しないわけがありません。
蛍が飛び交うまでには至りませんでしたが、うまく捕まえた人も居ます。
手のひらの上で安心したのか、他の蛍も近づいてきました。腹部の光る節を
観て、やっぱりメスだと確認も出来、有意義な観察ができたようです。
< 蛍の数は? >
蛍の数はと言うと、湿地の田んぼの周り半径3mくらいの空間に10数匹は
数える事ができました。科学研究部員の説明どおり、湿地全体ではおそらく
30匹以上の蛍は優に居たのではないかと思われます。
< 60年ぶりの蛍 >
観察を終え、アンケート記入して、数人の方が感想を述べられました。
「実に60数年ぶりに蛍を見た。」とか「近くに住むものとして草刈なども
手伝いたい。」「是非来年も継続し、もっと多くの人が見れるようにして欲
しい」との声が聞かれました。
< 蛍が演出する 人のコミュニケーション >
一番多かったのは、「夏休みにも拘らず、アテンドしてくれて有難う」と感
謝の声です。高校生が地元の人たちと交流することで新しいコミュニケーシ
ョンが生まれる気配が感じられました。
進学校だけにともすれば、自分たちのための勉強中心になりそうなこの時期
に、年代を超えて外部と交流できる経験ができたことは彼らにとって貴重な
経験になったと思われます。
自然再生をすることで、生き物が帰って来て、そこに人が集まり、
また新しいつながりができる。ヘイケボタルだけでなく、地域の生き物は人
つなぎ、人を育ててくれます。
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