[発行日:2010.07.28] vol.69 コラム 「産業と自然」C.W.ニコル氏 里山授業「環境の違いは生きものの違いを知る」ほか

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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2010.7.28 ━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
今月の前半から半ばにかけての雨は各地で被害をもたらし、大変なもの
でした。トラックが10台近くも土砂に流され横転している様をみるに
つけ、自然の力の大きさに驚くと共に人間の無力さも感じてしまいます。
被害にあわれた方々の一日も早い復興と亡くなられた方々のご冥福をお
祈りします。

いよいいよ夏休みに入り、児童生徒にとっては、普段より多く自然に接
する機会が増えると思われます。この機会を利用して自然への理解を高
めて欲しいものです。

今月は、弊社の環境活動のアドバイザーをお願いしている。C.W.ニコ
ル氏に企業と自然の関わりについて原稿を書いていただきました。
日常接する自然はつい見逃しがちですが、大人も夏の季節を楽しむべく、
身の回りの自然と意識して触れあうことで、新しい発見があるのではな
いでしょうか?

中学校での里山授業、高校のビオトープ活動取材や持続可能な社会づく
りにむけた研修の取材などの機会がありました。
一度に紹介できませんので、次回とあわせてご紹介します。


   もくじ      
           
      【1】コラム 「産業と自然」 C.W.ニコル氏
            

      【2】ビオトープは人と未来をつなぐ生きた教室
           東海市立 船島小学校
         その3(最終回)フナビオ総会と今後について


      【3】里山授業「環境の違いは生きものの違いを知る」
           板橋区立 赤塚第3中学校


      【4】オーガニックコットンに挑戦 綿の花が咲きました




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      【1】コラム 「産業と自然」 C.W.ニコル氏 
                 
            
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産業と自然  そして、潟gンボの皆さんへ
人類はいつも自然に影響を与えてきました。 私達は動物、魚などすべて
の生き物の命をいただいて生きてきました。しかしながら 私達は、大地
を踏みにじり、木を切り倒し、植物を引き抜き、廃棄物や排泄物を捨てて
きました。

産業革命によって大都市が出来上がる頃までは、自然も私たちが作った傷
をどうにか癒すことが出来ていました。 しかし、現在、人類がこの地球
に加えている破壊のレベルは空前であり、無数の生物が消え失せています。
この事実を じっくり考えないなら、地球の生命は私達が恐れているような
運命にあるでしょう。

私達は環境破壊に関して何が出来るのか? 私は、故意に、または偶然であ
ることにかかわらず、残念ながら人間の発明する才能、知識、および考え
方がそのような汚染、気候変動、乱獲などを引き起こしたように思います。
破壊された環境を復元し蘇えらせるためには、考えるために立ち止まり、
私達人間に備わっている想像力を発揮し、正しくその力を使わなければな
りません。

潟gンボをはじめとする企業は社会に重大な影響力を持っています。(私
はそれをあなた方は皆、誇りに思っていると思います)。 そして、あらゆ
る企業は、考え、想像する能力や学び実験する能力を持っている個人で構
成されています。
オーガニック・コットンを使用し、再生材料を使用することで廃棄物を防
ぐと言う重要なステップにあなた方が取り組んでいるということもその理
由です。

あなた方は他に何ができますか? 中国での植林? さて、それがあなたを転
換させることであればお薦めします。しかし、私は、それ以上に大切なこ
とがあると思います。

私は、皆さんに自然の中で、いくらかでも静かで楽しい時間を過ごしてほ
しいのです。ただ流れている小川を見つめる、小さなキャンプファイアの
前でゆっくりお茶を飲む、または、海を見渡しながら小魚をあぶる、木の
下に座って本を読む、またはあなたの足の周りの地面を忙しく歩き回る小
さなアリをただ見て欲しいのです。そして、豊かな感性を取り戻して欲し
いのです。

自然はいつも答えを捜し求める人間の心の力を解き放ちます。 私は、あな
たがコンピュータでいつも新しいもの、欲しいものを見つけられるとは思
っていません。 発明や改良する能力は、それぞれの個人の心の中にあるの
です。
部外者の私のこの考えを好意的に評価してくれ、環境に配慮する会社の一
員であるトンボの皆さんは、すべてにおいて幸運だと思います。 

黒姫にて
C・Wニコル
5月30日 2010




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      【2】ビオトープは人と未来をつなぐ生きた教室
           東海市立 船島小学校
       その3(最終回)フナビオ総会と今後について
                 
            
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最終回の第3回目は、ビオトープの維持・管理などの基本案を立案、検討
実行する「フナビオ会」とこれからのビオトープ運営についてご紹介しま
す。

<フナビオ会とは>
同会は、学校の児童、教師、OB 、地域の方、ビオトープの専門家が集う
「ビオトープの創作・運営母体」です。児童達の『こんなビオトープがあ
ったら良い』の思いを実現するためにこのフナビオ会のメンバーが、学習
し、意見交換を重ね、ビオトープを造成し、維持管理を今日まで行なって
きました。
年1回の総会開催と毎月1回の定例活動日により、ビオトープ維持管理活
動が運営されています。


<フナビオ会 総会>
取材に伺った5月22日、生物多様性の日にあわせて開催。授業後、児童
の代表、校長先生はじめ地域の方含めて60名ほどのメンバーが集まりま
した。

1年間の活動報告がなされ、全国学校ビオトープコンクールで「国土交通
大臣賞」を受賞した旨の報告がありました。1年前の総会では、日本一の
ビオトープを目指そうと顧問の1級ビオトープ施工管理士の方の講演を聞
いたり、しました。どのようにビオトープを紹介するかについても議論を
重ねました。

しかし、現状のビオトープに様々な課題があると校長先生より紹介があり
ました。
・外来種の駆除は継続的に行なわないといけない。
・ビオトープにやって来ることを期待した、メダカ、ホタルは魚道整備し
 たがまだ来ない。など

ビオトープ創生前に「昭和50年代のこの地域の自然を取り戻す」という
コンセプトをフナビオ会で確立しているのでぶれずに対策が進みました。
この学校のビオトープ運営の特徴がここにあるようです。


<総会でも勉強>
総会の中で、初期の頃からビオトープのアドバイスを続けてこられた、顧
問が、これからのビオトープづくりについて講演をされ、その冒頭では、
テスト形式で、ビオトープに関する5つの質問を勉強しました。このよう
にビオトープに関する知識を高める、共有するということが、次のステッ
プにつながっていきます。
外来種の問題、人間が立ち入らないコアゾーンと観察などをするバッファ
ーゾーンのあり方など基本を確認することの重要性を再認識しました。
地域の自然の一部が学校の中にもある 一つの理想的なビオトープのあり
方を学んだ取材でした。

フナビオ総会の模様はこちらからどうぞ 
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_JBBPqS.pdf


 
 
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    【3】里山授業「環境の違いは生きものの違いを知る」
           板橋区立 赤塚第3中学校
                 
            
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これまでに東京板橋区の中学校で行なっている「里山体験授業」。
今回は、同じ区内の赤塚第3中学校に舞台を移して、NPO法人樹木環境ネッ
トワーク協会のメンバーと共に里山授業に参加しました。

6月にフィールド授業を「多摩動物公園」で、7月は学校に戻って、6月
体験をしたことを元に「環境の違いによってそこに棲む生きものが違う」
ことを学習しました。

< 6月の授業内容 >
4月に1年生になったばかりの中学生達260名が板橋区から、日野市の
多摩動物公園まで1時間以上かけてやってきました。6クラスを半分に分
けて、サルのしぐさを観察と初夏の里山を交互に体験してもらいました。

「五感で初夏の森を感じよう」という体験プログラムでは、「フィールド
ビンゴ」という森を感じるヒントを手にして、12人ほどのグループに分
かれて、サポーターの案内のもと様々な体験をしました。
森のにおい、食べられるもの、ノウサギの糞、アオゲラの巣の跡など16
のチェック項目に挑戦しました。

初めて、森の中に入るという生徒が多く、ヘビイチゴを味わったり、山椒
の臭いを嗅いだり、手のひらにノウサギの糞やカブトムシの幼虫を掌に乗
せたりということがとても新鮮だったようです。

50年前までは、この里山から、燃料、食料、薬などを手に入れていたと
話してもなかなかピンと来ません。50年間放置された里山は笹が一面に
茂り、生きものの種類も少ないが、手入れした里山は林床に光が届き、サ
イハイランなど数種のランが生えたり、クヌギを使ってシイタケを栽培で
きるなど 今見える生物を通して、理解を深めてもらいました。

初めての森は、大変気持ちが良く楽しかったという感想が多く、普段自然
に接する事が少ない生徒達にとってはとても貴重な経験となったようです。

< 7月授業の組み立て >
体験したことをいかし、里山保全と自然の復元の関わりを理解してもらう
ために、前回のサポーターが集まり具体策を検討。
手入れをする、しないの森の環境の差をそこに棲む生物達を通して復習し
てもらうことにしました。併せて、それぞれの環境に棲む生物で生態系ピ
ラミッドを作ってもらい、環境変化による生物の差を比較してもらうこと
で、違いを考えてもらうことにしました。一方的なすりこみはしないよう
に注意しました。


<7月の授業内容 >
1月後の7月中旬に、学校で2回目の授業。
6月体験したプログラムを画像で振り返り、地球上の植物の成長と動物の
関わりを、光合成、食物連鎖、生態系ピラミッドの図を使い説明。

1クラスを2グループに分け、生きものカードをグループごとに配り、用
意した里山の環境の図に生きものを貼りこみ、環境の違いで棲む生物の違
いを観てもらうグループと里山の環境ごとに生物ピラミッドを作ってもら
うグループを作り、学習してもらいました。

手入れした里山、放置された里山、学校に近い水辺荒川の川原の3つの環
境でチャレンジです。

< 授業の成果 >
生徒達は、6月の体験授業の後に、学んだことを一人づつ、まとめをして
いました。体験したことに加えて、インターネットで調べた知識を加えて
「里山新聞」としてまとめていました。

7月の授業では、生態系ピラミッドを作ってもらうために用意したボール
紙をサイコロに組み立て、テープで止めて立方体を作るのに思った以上に
時間がかかり、十分な解説と振り返りが説明ができない班もでました。

生態系ピラミッドの理解は中学1年生ではやはり難しかったようです。
ただ、頂点に存在する人間はそれを支える生き物がいなくなることで自分
達も存在できなくなる。ピラミッドの一番上から転がり落ちてしまう事は
ショックだったようです。言葉より感覚で捉えてくれた点では、成功だっ
たようです。 これで2回シリーズの授業は終了しましたが、これまで自
然やまわりの環境と自分を関係として捕らえることの無かった生徒達が新
しい機会に触れ、経験をしたことは有意義であったと考えます。

他の学校でもこのような体験型の授業が増え、理屈だけでなく、実際の現
場から学ぶことの大切さを伝えて行きたいと感じた授業でもありました。
関係者の皆様に感謝します。

授業の模様はこちらからどうぞ
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_JHQ0Ie.pdf




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    【4】オーガニックコットンに挑戦 綿の花が咲きました

                         
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5月1日に撒いた綿が花をつけ始めました。200粒が19株になってい
ますが、生き残った苗はだんだんと大きくなっています。
成長には差があり、高さ40cm〜10cmほどまで様々です。

実のつきを良くするために油粕をこれまで2回ほど施肥しています。

7月22日に大島綿で最初の花が咲き始め、今では成長の早い株が殆ど花
をつけています。この調子で行けば10月後半から綿がいよいよ収穫出来
そうです。8月にかけてさらに花が咲き、多くの水が必要なので、朝晩の
水遣りを欠かさず行なっています。

農業と工業の接点としての綿花栽培。農薬の問題、児童労働の問題、海外
からの輸入に頼る現状など、栽培を通して初めてわかることが沢山あります。

学生服の衿についている白いカラー。今はポリエステルですが、始まりは
綿花と樟脳で作られたセルロイドでした。昭和10年代の中ごろから採用
されたとあります。テレビや液晶画面に貼るフィルムとして今でも綿花が
原料として使われています。ここからも農業と工業の接点を知る事ができ
ました。

花の様子はこちらからどうぞ
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_gSNiIV.pdf


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