[発行日:2011.05.31] vol.79 桜川中2年生 里山と自分の関わりを考える、笹刈りは楽しいけど、笹のクラフトは大変

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
┃ 
┃     QQ     【スクールビオトープ メールマガジン】
┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃
┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃        vol.79
┃     ┃
┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
┃     ┃

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2011.5.31━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
東日本大震災から2ヶ月半が過ぎました。被災者の方々には心よりお見舞
い申し上げます。なくなられた方々のご冥福をお祈りします。

5月の末となり、既に田植えの済んだところ、まだこれからのところと地
域により差があるようです。植物の成長期を迎え、トンボでは昨年に引き
続き、和棉3種類の種を撒きました。多くの種が発芽、今後畑へ移して、
成長を見守る予定です。 昨年は19株ほどしか成長しませんでしたが今
年はかなりの綿花が収穫できるのではないかと期待しています。

自然の恵みによって衣食住を賄っていることを植物の栽培を通して感じる
事が出来ます。

今回は、次世代の中学生に自然の恵みと衣食住の関係を伝える中学校の里
山授業の模様を2部に分けて紹介します。




   もくじ【1】桜川中2年生 里山と自分の関わりを考える

           
      【2】笹刈りは楽しいけど、笹のクラフトは大変
     



◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


     【1】桜川中2年生 里山と自分の関わりを考える
      
            
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇



昨年11月号で紹介した東京 板橋区桜川中学校の総合学習、「里山授業」
2年生となり、後半の2回を受講、5月の初めと月末に行なわれた授業の
模様を紹介します。


5月初めの授業は人の手が加わることが里山のいきもののつながりにどの
ような影響を与えてきたかを知るために、「衣・食・住・エネルギー」
について今昔の比較をしてみました。

トンボ学生服としては「衣」の昔と今を紹介しながら生き物のつながりを
考えてもらうきっかけにしました。

板橋区に住む中学生なので見た事がある生き物の数は地方に住む同年代の
生徒と比べて非常に少ないという事実があります。
そのために生き物のつながり 食べる食べられる関係はある程度誘導しな
がら自分達で考えてもらう手法が必要です。

昔、里山で利用していた様々な材料で身につけるものについての紹介です。
稲藁を叩き、編んでつくった履物は草履、雨の日のレインコート蓑や笠も
田んぼ、畑、草地からの恵みを材料として使ったもの。

では、田んぼや畑にはどんな生き物が居ただろうか?そこに住む生き物の
カードを渡し、みんなで 場所ごとにつながりを考えてもらいました。

中には、この虫嫌いだから、使わないという女子生徒もいて、食物連鎖が
つながらないなどのハプニングも。
それでも、森、川、田んぼ、畑などに住む生き物の関わりがおおよそ見え
て来ました。材料の背景が分かったところで草履や蓑、笠になるまでの工
程を考えて見ました。江戸時代の暮らしで考えたのでエネルギーは自然の
ものしかありません。みんな人間の手でやっていたことがわかります。

次に今の服を考えてみようと制服や体操服に使われる石油からできた化学
繊維ポリエステルについて原料調達から製品になるまでの工程を考えまし
た。 原油採掘、運搬、精製、重合、ペレット製造、原綿製造、紡績、織
布、染色、裁断、縫製など殆ど機械に頼って居る事がわかります。糸まで
の工程毎の現物も合わせて確認しました。

化学繊維と藁ではかけ離れすぎているので、おまけに「綿」素材の解説。
収穫量を一定に保つのに、化学肥料や除草剤、殺虫剤を使用している事実
を伝え、生き物の連鎖について少し考えてもらいました。

綿の種を珍しく感じた生徒2名が育ててみたいとの申し出、種を渡しまし
た。育て方の資料も先生を通じてフォロー、大きく育つか楽しみです。先
生の感想は結構手がかかるのですね。買うことに慣れてしまった私達から
すれば、野菜にしろ綿にしろ自分で育てることはつくづく大変と感じる今
の生活です。

その他、食、住、エネルギーについても別の指導者がそれぞれの工夫で説
明、それでも茅葺の屋根を見た事がない生徒もいて「住」は結構苦労した
様子です。竈を使う家も都会ではなく、薪や炭ももキャンプでの体験くら
い。里山の価値を今の中学生に伝える難しさを感じた授業でもありました。

授業の模様
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_RlZaNZ.pdf



◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


      【2】笹刈りは楽しいけど、笹のクラフトは大変
          
  
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇



前回の授業から3週間を経過して、今シリーズ最後の授業を多摩動物公園
の里山再生フィールドで行ないました。

4クラスを2つにわけ、里山の自然観察と笹刈り、それに刈った笹を利用
したクラフト笹の葉コースターづくりを前半に行なうグループ、動物園に
居る昆虫、鳥類、哺乳類の体のつくりや習性などを前半に観察するグルー
プで授業を実施しました。

里山体験グループも笹刈りを初めに行なうクラスと自然観察から先に行な
うクラスに分かれ、順番に体験しました。

笹刈りは、昨年12月にも一度体験していますが、笹の先を尖らせずにカ
ットするよう注意して取り掛かりました。明け方までの雨で地面や笹が濡
れているためか、中腰での作業をする生徒が多く、しゃがむと楽になると
言うアドバイスも汚れや濡れを嫌がる生徒には余計なおせっかいでした。

それでもだんだん慣れてくるとしゃがみこんで一生懸命にハサミで笹をカ
ットしました。作業前と比べると明らかに地表が見え、成果が確認できま
す。これまでの先輩達の笹刈り作業の成果と合わせて林床に光が当たるよ
うになりました。この作業が自然観察と比べると生徒は楽しいような印象
でした。

笹刈りの様子です
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_49B1Ub.pdf

自然観察は、笹刈りをした跡に出現したキンラン、ササバギンラン、エビ
ネ、丁度花が咲いているサイハイランなどのランの観察と笹刈りの意義の
話を聞いたり、どんぐりの実生や鳥が運んだ種子から発芽したコナラやム
ラサキシキブ、マンリョウなどの植物を見ました。

そのほか、落ち葉をかき集めて腐葉土を作る場所でカブトムシの幼虫探し
を行ないました。モグラが多く好んで幼虫を食べるので、1匹がやっと見
つかっただけでした。引率の先生も生と見せようと一生懸命でしたが残念
な結果です。

里山の燃料として貴重なコナラは萌芽更新で切り株から新しい木が生える
こと、伐った材を利用してシイタケ菌を植え付けることを学びました。
2年前に先輩達がコマ打ちした原木からいくつかシイタケが生えていまし
た。食べ物としてのキノコにあまり反応がなかったのは残念です。

森の色を数える、森の音を聴くというネイチャーゲームにもチャレンジ、
目を閉じ耳を澄ませて鳥の囀り、風の音などを聴きました。緑に濃淡や色
相の違いを見分けるなど普段とは違う感覚を意識して自然とのふれあいを
体験しました。

自然観察ネイチャーゲームの様子
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_LPaUUx.pdf

生徒全員が一番苦労したのは笹の葉を使ったコースター作り。8枚の笹を
前後左右交互に編んで行くのですが、裏面がぎざぎざしてすべりが悪いの
で接着テープで固定しても思うようになりません。50分以上かかり最後
に好きな色のフェルトに貼り付けマイコースターが完成しました。
クラフトは苦手とあきらめた生徒もいたようです。

動物園の生き物観察は予め指定されたタヌキ、鹿、タガメ、フクロウなど
3種類ずつの生き物の行動や習性、体のつくりを自分で描いたり解説版を
グループでチェック、最後に先生、サポーターにチェックしてもらい学び
を深めました。

笹のクラフト、動物観察の様子
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_CHESUT.pdf

中学生にとっては、結構ハードなスケジュールだったと思いますが、それ
ぞれに気づき、学びが有ったのではないかと思います。個々に作成される
報告書(これまでは里山新聞)が楽しみです。

持続可能なライフスタイル里山の暮らしについて都合4回の授業を経験し
た2年生達。これまで1,2年生で8回の授業が4回に減りましたがこの
経験が何らかの形で彼らの心の中に刻まれ、生かされること期待します。


前のデータを表示

後のデータを表示

バックナンバートップへ