[発行日:2011.03.30] vol.77 いのちのつながりの大切さを伝える その2、未来の森づくり 里山の変化は生き物の変化

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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━発行日:2011.3.30━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。

このたびの東日本大震災で犠牲になられたかたがたに心より哀悼の意を表
します。被災されたみなさんが一日も早く日常を取り戻されるようお祈り
し上げます。

入学式を控えた全国の生徒さん達に、制服をお届けしようと社員一同日々
遅くまでがんばっている今日この頃です。
宮城県では、4月後半の入学式となった学校もあり、厳しい現実の中にも
新たな希望を胸に入学される新1年生にエールを送るべく、最後のお一人
まで制服をお届けする事が私たちの使命と考え取り組んでまいります。

前回予告した「森の聞き書き甲子園フォーラム」は震災の影響で中止とな
り報告ができなくなりました。今回は2つの話題提供です。




   もくじ【1】いのちのつながりの大切さを伝える その2
         

  
      【2】未来の森づくり 里山の変化は生き物の変化
         



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     【1】いのちのつながりの大切さを伝える その2
      
            
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< 都市公園でビオトープでの自然体験活動 >
台東区環境ふれあい館で主に子どもを対象に環境全般でインタープリター
をされている具志堅 葉子氏が2年間の体験を通して話されました。

前回ご紹介した講演の模様です
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_EQF18I.pdf

台東区は都会の真ん中に位置して、100年前から既に都会なので、地元
のおじいさんに聞いても都会の生活のことしか分からない。

12月にミニ門松づくりのイベントを実施。募集15人に対して100人
の応募があり、追加講座を実施するくらいの人気。一方、小刀を使った竹
細工講座には7人、ビオトープの木道作りには申込みはゼロという状況。
身近な動物といえば上野動物園の生きもの、植物は園芸種が中心という自
然と触れ合う機会が少ない所に立地。

2年前にできた公園の一角にあるビオトープで、自分達で管理しながら体験
する「ビオトープ調査隊」を毎月1回実施。これまでに、クロメダカの放流、
シロザの草抜き、アサザ植え付けやクチボソ放流、秋の虫探しなどを行なっ
てきた。 現在登録している児童は60人で、常連は10人ほど。中には、
リーダーとして育つ子もいる。

もともと池などなかったところに池が出来たので、近所の人が悪気なくいろ
いろな生きものを持ち込む。初めは大きな金魚が2匹入れられていた。
ビオトープの意味合いを告知し、生きものは入れないようにお願いし、魚類
以外は自然と生きものが入ってくるようにしている。
そうしたら、都会という立地かドブネズミ2匹が穴を掘って棲みついた。
今後どのようになるのか、見守っている。

地域に住む方々は、祖父母の時代から自然と触れ合ってないので、親の年代
も草の間引き方も知らない人が多い。。いのちのあるものに対しての畏敬の
念は少なく雑草は雑草という感覚。
しかし、観察や活動を通してはじめて、自然との直接的な触れ合いを経験し、
親も子も自然に対する関心が高まって来る。
 
< 2年間の経験から感じたこと >
環境問題がなくならない理由の一つに、自然と乖離した消費者視点しかない
都会居住者達の増加が挙げられると思う。天候不順でも通常と変わらぬ野菜
の品質を求めるし、季節に関係なく果物を要求することの不自然さに気づい
ていない。

12月にイチゴを食べることがどれだけ環境負荷を与えているのか。気づく
きっかけすらない。石油資源の代わりにバイオマス燃料を作る畑では、生態
系の破壊があることを考えようとしない。
都会に住む人間の意識を変えていかないと根本的な環境問題の解決にならな
い。都会のビオトープは気づきのきっかけを与えてくれるスペースだ。

< シイタケ菌のコマうちを体験 >
講演の後は、里山ビオトープへ出かけました。下草刈をしたことで、キンラ
ンなど数種のランが戻ってきたり、山の中腹に土嚢で池を作り常時流れを確
保して、3つの沈砂池を造り、ホタル再生のためにカワニナが放されていた
り、トンボが産卵したり生息できる場所が整備されていました。

活動の中心となっているのは奈良学園中高 科学部生物班ですが、その他の
部活動の生徒も関わっています。
これから整備をしなければいけないところも多いそうですが、人が手を入れ
ることによって生物の多様性が保たれることが良くわかりました。

2年前までは鬱蒼としていた斜面も下草刈を行い、今では、原木シイタケの
栽培地となっています。中学1年生には一人1本のホダギ、早いものは秋の
菌の植え付け後半年ほどでシイタケが出来つつありました。

これからは地域の方々との交流も計画されており、学校ビオトープは人と
人との出会いの場としても活用が期待されます。




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    【2】未来の森づくり 「里山の変化は生き物の変化」
          
  
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前回ご紹介した 岡山県真庭市で始まった弊社との未来の森づくり協定
トンボの棲める環境を広げることも未来の森づくりの一つと考え、当社と
して何が出来るのかを知るために地元の方々にお話を伺いました。

岡山県真庭市は県北部の中央に位置し、北は鳥取県と境を接し南北50
km、東西20kmほどの広がりで県内自治体最大の面積を有します。
そして、面積の80%は森林で覆われています。
平成17年に9町村が合併し、現在の真庭市となりました。今回は同市の
北部津黒地区の方々にお話を伺いました。

今と昔の違いは?
一言で言うと「昔と比べて木が増えた」

生き物の数や種類は?
減った。田んぼ、草地、川 あちこちで動物・植物ともに減った。

一番の原因は?
木を使わなくなったことではないか。

ということで詳しくお話を伺いました。

< 土地利用について >
昔は、田んぼ、畑、採草地、山という土地利用をしていた。
採草地は、農耕の力であった牛・馬の餌場であり、堆肥づくりの場であり、
屋根を葺く茅場であった。
土地の60%近くは採草地であり、広大な面積でそこには多くの昆虫が見
られた。そして、茅場の草を使い10〜15年の間隔で家の屋根を葺き換
えしていた。

採草地の横の谷間にはスギを植え、次にヒノキ、尾根にはアカマツを植えて
利用していた。薪炭木のコナラも40年で伐採し、木の更新をしていた。

< 植林とその後 >
拡大造林でヒノキやスギが多く植えられた。田んぼだったところにスギを植
え、スギがあったところにヒノキ、マツを植えていた所にもヒノキを植えた。
昭和40年代くらいまでは木を使っていたが、その後は使わないまま。
木は大きくなり、暗い森となった。

< 山・草地の変化 >
コナラも60年生を超えた、30〜40年生程度で伐らないと再生しない。
アカマツもマツクイムシにやられはじめた。あと10年ほどすると全滅する
のではないか。原因の一つに土地が肥えた影響があるように思う。
山では、アカバチ(キイロスズメバチ)が減った。
採草地でも草刈をしないので木が生えている。かつてどこにでも見られたオ
キナグサも減っている。

< 日の射す場所、水の変化 >
枝谷と呼ばれる狭い谷あいで畳二畳程の畳田という田んぼを作っていて、か
つてはトンボが見られたが、今はそこには木が生えていてトンボはいない。
枝谷の水が減り、森のせせらぎの水量が減った。

川べりでは、木が大きくなって日が当たらないから、石に苔が生えている。
カワゲラが減り、そこに棲むアマゴの数も減った。
かつては、地域全体を住民みんなで自然に管理していた。今は放ったらかし。

お話を伺うことで、自然を利用する生活が、結果的に生物多様性につながり
生き物との共生をしていたことが浮き彫りになりました。単純に池を掘り、
トンボの棲める環境を整備するということは一過性の事業であり、根本的な
解決にならない事が認識出来ました。

地域の土地利用そのものがビオトープ維持活動であったのです。多くの人の
力、関心、活用ノウハウの連動がトンボ、生き物復活の鍵であるようです。


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