[発行日:2009.10.30] vol.60 小宅小学校ビオトープ工事、菜の花で人と地域と未来をつなぐ他

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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2009.10.30 ━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
まもなく11月を迎えます。殆どの地域が稲刈りは済んで、冬支度へ向っ
ている今日この頃だと思います。
私の住む瀬戸内海に近い岡山県玉野市もほぼ稲刈りは終了してますが、そ
れでもまだという農家もあります。

ツバメもいつの間にかいなくなり、彼岸花も枯れ、今は色々なドングリが
落ち始めたという頃です。まだ冬鳥は見かけません。

日本は南北に長く、季節感の差はこの時節が一番出るのかもしれません。
アキアカネも産卵を済ませたようです。

先日は安房鴨川で和棉の摘み取りと糸作りを体験しました。農業と衣服作
りが結びついていた頃の古くて新しい経験でした。棉にも種子が出来て
来年にむけ新しい命がそれぞれに芽吹く準備をはじめています。



   もくじ【1】アキアカネを呼び戻そう 小宅小学校のビオトープ作り 
           < ビオトープ工事編 >

           
      【2】菜の花で人と地域と未来をつなぐ
          岡山県立興陽高等学校 


      【3】とんぼに関する新刊紹介
          田んぼの生きものたち  新井 裕氏    
                  
      


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    【1】アキアカネを呼び戻そう 小宅小学校のビオトープ作り 
        < ビオトープ工事編 >
          
  
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7月号でご紹介した たつの市 小宅小学校のビオトープの基礎がほぼ完
成しました。7月の着工以来3カ月半かかりました。
途中夏休みがあったり、2学期は行事が多かったりと、3年生の児童達が
関わる機会は多くなかったのですが、中心となった石堂先生のがんばりの
お蔭で完成です。弊社も設計、施工のアドバイスと土木工事などのお手伝
いをしました。

工事の概要ですが、7月から9月にかけては、候補地の穴掘りと土手作り
に費やしました。「カンカン照りの時は、固くて中々掘り進めず苦労しま
した」と指導された3年生の担任でリーダーの石堂先生。

< 児童が池、水路堀り、地固め >
9月中に90%ほど掘って、工事を一気に進めたのは10月6日でした。
ほぼ掘りあがった池に取水口を取り付け、池の底に凹凸をつけ、さらに底
や、法面をしっかり固めて水が漏れないようにします。
当初は、ブルーシートを敷く予定でしたが、もともと田んぼであったこと
からそれなら掘った後で踏み固めようとチャンレジしました。

丁度、小雨が降る日だったので、掘り返しやすく池の凹凸、法面の踏み固
めはうまく進行しました。児童1クラスが1時間掘ったり、埋めたり、固
めたりを交代でがんばってくれました。きちんと取材班もいてその様子を
カメラに収めていました。

< メンテナンスフリーの取水方法がポイント >
工事で一番問題だったのは取水をどのようにするかという点でした。
すぐそばに、ハグロトンボの飛び交う山根川があり、当初そこからポンプ
で水を上げる予定でした。しかし、この池には日がさんさんと当たり、溜
め水では夏の温度上昇が激しいと予想され、ポンプでの取水は不定期でし
か動かせないので、夏休みには誰かが管理するという手間が生じ、担当の
先生が変わるとトンボ池として使い続けるには無理がありそうでした。

< 生物多様性に配慮した取水 >
幸いなことに池をつくる斜面に溝があり、そこからは学校の池で使った地
下水が24時間流れています。これを使わない手はない。しかもそこには
カワニナがたくさん棲んでいました。
願ったり叶ったりの水源を生かそうと児童達と一緒に3mほど溝を掘り、
パイプを敷いて、池の横から取水できるようにしました。なんと取水口の
付近にはドジョウもいるではありませんか。
なんとかカワニナとドジョウの生息域も犯さずに取水をしようと知恵をひ
ねりました。
最終的には、土嚢とプラスチックのメガホンを使って水を取り入れるよう
にしました。池には水深15cmの浅瀬の中に少しの深み、だんだんと深
くして35cmほどの水深にして、一番の深みを50cm強としました。

< 3週間後の排水口づくり >
暫くは、水の抜けの状態を見るために3週間ほど時間を置くことにしまし
た。やはり、はじめは水抜けがあり、抜けては取水口から水を取り入れし
ていましたが、2週間ほどしたら、粘土質がかたまったのか水抜けがなく
なり、雨もさほど降らないのに水はたまったままでした。

それではということで、恒常的に水の循環をさせようと27日に工事を行
いました。偶然にも埋めた土手に穴が開き排水口となっていました。そこ
でその位置を活かし細い管を敷設して排水口としました。
取水量は410ml/分、貯水量は1440lほどです。

< ビオトープの完成に向けて >
このあとは児童がいよいよ植物の植え付けとトンボの卵の放流を行ないま
す。
学校には、ガマ、サンカクイ、クロモがあり、また、稲のバケツ栽培をし
ているとのことで、浅い部分にイネを、深い部分にガマ、サンカクイなど
を植栽する予定です。
そして、嬉しいことに、アキアカネが比較的学校の近くでこの秋に確認さ
れたそうです。まだ、卵を入手は出来ていませんが、たつの市内で捕まえ
たマユタテアカネの卵を100個ほど採取できたということで植栽が棲ん
だ頃に移す予定です。

そばの山根川には、メダカもたくさんおり、それを放流すればまずは餌の
心配はしなくても済みそうです。 昨年10月初旬に話があり、下見をし
ながらすすめたビオトープづくり、児童たちにできるだけ関わってもらい
ながら作ったビオトープ。
アキアカネが来年産卵してくれるか、これから本当の意味のビオトープで
の学びが始まります。

< ビオトープだけでない アキアカネを呼び戻す工夫 >
同時に、市内でのアキアカネを呼び戻す啓蒙活動を展開しています。当社
が提供した制服の残り布で作ったマイバッグを針金細工のアキアカネそし
て、アキアカネが雄飛していた頃の絵(児童がおじいさん、おばあさんに
聞いて描きました)と共に市内各地に配布してゴミとCO2を減らしてアキ
アカネやトンボがすめる環境をつくろうとPTAも巻き込んで行われていま
す。
マイバッグは3年生が保護者と児童が一緒になって授業で作りました。 
これからも順次、この活動もご紹介していきます。

工事の写真やマイバッグ制作の写真こちらからどうぞ

小宅小学校 ビオトープとマイバッグづくり
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_lnk/5-20091030152040-1_1.pdf




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        【2】菜の花で人と地域と未来をつなぐ
            岡山県立興陽高等学校   

  
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滋賀県で始まった「菜の花プロジェクト」菜種を栽培し、ハチミツだけで
なく、菜種油を絞り、食用として使い、廃油はバイオディーゼル燃料にす
るというシステムがだんだんと広がりを見せています。

お話を伺ったのは、農業科 科長の大平先生。ご自身の経験をわかりやす
く話してくださいました。

< 岡山県で初、菜の花復活 >
岡山県でも、8年前から岡山県立興陽高等学校が菜の花プロジェクトに取り
組みました。
昭和40年代以降途絶えた菜種栽培のノウハウを、菜種油を作っていた経
験のある地元の人や外部の人に学び、復活をさせました。
無農薬栽培のため、アムラムシなどの害虫の害や病気などの発生が年によ
って違うので収穫量は稲ほど安定はしていないそうです。天候に左右され
易い面もあり、安定的な収穫ができ始めたのは4年目からでした。 

< 各学科での取り組み >
現在で、菜の花プロジェクトを、授業をベースとして農業3学科がそれぞ
れに取り組んでいます。
農業科は菜の花栽培、農業機械科はBDF走行実験、造園科:リサイクルをテ
ーマに「発泡スチロール」をプランターへ転換する研究などを行なってい
ます。
また、家政科は菜種油の使用しての調理研究並びに、廃油回収の実習を行
なっていて、学校全体の取り組みとなっています。
BDFに関しては、水島工業高校ともタイアップ。食用油から燃料をつくるこ
とがつながると 「農」と「工」がつながっています。

栽培開始は9月後半で、種まきを行い、年末に株が伸びてきます。
現在の作付面積は10a(1反)あり、収穫種子重量は200〜250kg。
昨年から田んぼの裏作として10月初旬に播種。今年で裏作としての栽培は
2年目を迎えました。昨年は約60kgの収穫があり、一部販売もしてい
ます。普通の油とくらべたらコシが強いとのことで通常の食用油の3倍ほど
寿命があるそうです。

< 学外との交流 >
近隣の学校とも交流しながらプロジェクトを進めています地元の2つの小
学校の生徒さんが畑にやってきて体験しながら学習をします。学校が立地
する岡山市 藤田地区はESD(持続可能な開発のための教育)活動が盛んな
地域であり、学校間だけでなく、一般市民も巻き込み公民館活動も盛んに
行なわれているとのことです。

学校外の取り組みはそれだけにとどまりません。
隣接する玉野市の青年会議所と一緒に3年間、県の補助を受けて地域の子ど
も達と菜の花を植える活動行いました。 
倉敷菜の花プロジェクトでは、倉敷市、倉敷ライオンズクラブとコラボレー
ション、近隣の岡山市2地区では公民館において菜の花プロジェクトの説明
を行なったり、学習の教師をしました。

< 生徒が講師をして伸びる >
講師は生徒が行ないます。これは、自信の醸成にもつながり学びの確認とし
て大変良いということでした。
つい先日は、岡山市内の中学校で、環境学習のメインゲストとして全校生徒
の前で半日授業を行ないました。そのときのテーマは アヒル農法と菜の花
プロジェクトです。

< 相次ぐ視察 県内への広がり >
今秋はまだ菜の花の種を植えるイベントに招かれているとのこと、県の農業
総合センターからの視察や、J.A岡山中央でも取り組みが始まるなど「菜の花
プロジェクト」は岡山県全体に広がりを見せようとしています。

昔、菜種油は ロウソクの原料としても使用されており、今後様々な利用方法
が考えられます。人と地域と未来をつなぐ菜の花プロジェクトにご注目を

菜の花プロジェクトネットワークはこちらから
    http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/option/framepage.htm




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    【3】とんぼに関する新刊紹介
          田んぼの生きものたち  新井 裕氏
          
  
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これまでにもトンボの書籍を書かれている新井 裕氏がこのたび主に小学
生のために新しいトンボの本を出版されました。
トンボの一生を写真、図を使い分り易く書かれています。学校等でもトン
ボ観察のバイブルとしてご活用いただけるのではないかと考えます。

今回の著書について新井さんは下記のように語っておられます。

最近田んぼの生き物への関心が高まり、農業書を出版している農文協から、
田んぼの生き物シリ−ズとしてトンボの本の企画がありました。田んぼに
は色々なトンボが住んでいますが、その代表は赤とんぼです。

しかし、最近はアキアカネをはじめ、田んぼに住む赤とんぼが減っていま
す。日本人の米離れの中で田んぼそのものも減っています。こうした状況
の中で、田んぼと赤とんぼの暮らしについて考えるための本にしたいと考
えました。また、同時に赤とんぼのくらし自身も実はまだ分かっていない
ことが多いことを子供達に知ってもらい、自由研究のテ−マとして赤とん
ぼを調べてもらうための素材も提供したいと考えました。

たんぼの生きものたち 赤とんぼ  農文協  ¥2500税別

書店で是非手にとってご覧いただきたい1冊です。

書籍紹介
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_lnk/5-20091030152040-3_1.pdf


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