[発行日:2010.01.26] vol.63 森づくりは、国境を越える(C.W.ニコル氏)、里山の仕事を学ぶ中学校体験授業

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┃     QQ     【スクールビオトープ メールマガジン】
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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2010.1.28 ━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
2010年最初のメールマガジンです。今年はCOP10の年、名古屋市
をはじめとして色々なイベントや活動が展開されます。

COP10の検討課題の一つに「企業の生物多様性」ということが検討さ
れる予定です。日本の場合はこれまで、社会貢献的なスタンスで生物多様
性について語られる事が多かったのですが、「地球の生態系の恩恵にあず
かってこそ企業活動が続けられる」という考えが既に欧米では、広まって
います。本業における材料調達についてその影響把握や対策実施が企業活
動として当然というスタンスが広まりつつあります。

日本も無関心ではいられません。昨年、「企業の生物多様性イニシアティ
ブ」のネットワーク会員となり、現在勉強中です。社会貢献だけでなく、
本業としての生物多様性というスタンスも視野にいれて今後このレポート
をお送りしようと考えます。

今回は、生物多様性を取り戻した日本の森がどのように評価されているか
についてC.W.ニコル氏のコラム他1件です。



   もくじ【1】コラム 森づくりは、国境を越える
          C.W.ニコル氏
        
           
      【2】里山の仕事を学ぶ中学校体験授業
         板橋区立 桜川中学校 総合学習


                   

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       【1】コラム 森づくりは、国境を越える
             C.W.ニコル氏
      
            
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昨年の夏、外務省が主催した「アジアの森の国際会議」が長野市で開催さ
れ、すべてのアジア諸国の林業関係の官僚や専門化が日本へ招かれた。
彼らはセミナーの後、生き生きとした生物多様性に富む日本の里山を見学
する為に我々が管理する「アファンの森」へとやってきた。

アジアからの訪問者達の一番の驚きは、一見外国人に見える白人がお金を
使って土地を買い、人を雇って昔の日本の里山を取り戻そうとしているこ
とだった。
特にラオスやヴェトナムなどの社会主義国からの訪問者は、外国人がこの
ようなことをすることが赦されているということに大変驚いていた。
私が自分は日本人であり、日本で生まれ育った人たちと同じ権利や義務を
すべて持っていると説明した時もそれがどういうことなのか理解し難かっ
たようだ。

しかし、私が森を歩きながら案内すると、彼らは沢山の質問をしてきた。
小さな森にもかかわらず、豊富な種類の樹木や植物、野生生物などが生
息していることに大変感動したのだと感じた。
その晩、彼らのために長野市で開催されたパーティでは、フィリピンやイ
ンとネシアなどの人たちが半分冗談交じりに、日本の官僚たちに対して、
どうかC.W.ニ コルさんを私達の国に数年派遣してください、私達は
彼が必要なんですと言って下さった。

また、私たちの里山はイギリス南ウエールズにあるアファン・アルゴード
森林公園と世界でも初めての姉妹森の締結をした。英国でも少しずつ私た
ちの日本での取り組みは知られるようになってきている。
数年前、ポートタブロットのストリートを歩いている時に、あるご婦人が
私を見つけて「日本から素敵な活動をしている男性がいらしてるよ」と、
連れの方に語っていたのを目にし、嬉しく思ったものだ。

また、チャールズ皇太子が2008年10月に私たちのアファンの森を訪問した
時地元の市長と握手をしながら、「あなた方はこの人を大切にしないとい
けませんよ」と言って下さった。私はその言葉を聞いて幸福で胸が張り裂
けそうだった。

私は、自慢話をしようとしているのではない。

つまり、自然を愛し、自然を相手に働く人々は同じ仕事に携わる他国の人
々と社会的、政治的、宗教的な垣根を越えて価値観を共有し、付き合うこ
とができると伝えたいのだ。
 
今年は名古屋でCOP10が開かれる。
各国が利害を超え、世界の自然環境をより良き方向へ導く良い会議になる
よう心から願っている。



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        【2】里山の仕事を学ぶ中学校体験授業
           板橋区立 桜川中学校 総合学習

  
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2年間の里山を題材とした総合学習の締めの授業が11月、12月と行わ
れました。3月にはそのまとめの発表がありますが、今回は8回シリーズ
の最後となった2回の授業についてご報告します。

< 11月 里山での仕事を学ぶ >
里山の恵みをもとに生業として取り組んだり、日本の伝統的な生活様式を
実践したり、研究しておられる方々をゲストティーチャーとしてお呼びし、
自分たちの生活との繋がりを身近に感じてもらい、里山の現状や大切さを
再確認する「聞き書き」の学習を行ないました。

5月、6月で学んだ森の機能、そこに棲む生物の生態などを振り返った後、
里山の活用の仕方についてのスライドを見た後グループに分かれて、バラ
エティに富んだゲストの5名のお話を伺いました。

炭焼きの実践と指導をしておられる方、原木シイタケ栽培をしておられる
方、農業をしておられる方、草木染めや里山の保全管理を行なっている女
性、古民家の再生プロジェクトに関わる大学院生などです。

生徒達は、これまで出会った人たちとは全く違った世界を持っているゲス
トティーチャーの話を一言も逃すまいと真剣に聞き入っていました。

そして、その仕事をどのような思いで取り組んでいるのか、今と昔でどう
変わったのか、これから自然や里山とどう関わっていけばよいかをグルー
プ毎にまとめて、最後に代表が発表を行ないました。

授業の模様はこちらから
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_tFaBMc.pdf

< 12月 里山との関わりを体験する >
最後の授業はフィールドでの学習。里山での作業や体験を通して里山の持
つ役割や意義を認識すると同時に自然と触れる楽しさ、大切さを学びまし
た。
用意されたメニューは、昨年体験し、生徒に人気のあった笹刈り体験。前
回学んだ炭焼の見学、里山の恵みを活かしたクラフト作り、動物のクイズ
ラリーの4つ。

初めての炭焼き窯の見学では、なぜ、ここに炭窯があるのか?どのように
炭が利用されているのかという説明を聴きました。毎年大きくなる木の手
入れと共に土壌改良剤として炭は活用されており、余ったものは来援客に
も持ち帰ってもらい利用してもらっていること。木酢液は液肥として利用
していることなど、エネルギー利用のほか、樹木の加工でいろいろなもの
ができると学びました。

ササ刈は2度目の経験で刈った後と刈る前の変化が如実にわかるだけに、
一番現実的に達成感が感じられ。生徒には人気があります。また、ササ
刈りの楽しさは刈ったものにしか分からない充実感もあります。

今回初めてのチャレンジとなったクラフトづくり、グループで一つ以上は
作ろうということで最終16組17個のリースを中心としたクラフトが出
来あがりました。動物クイズラリーの途中で、落ち葉、落枝、どんぐり等
の実生、蔓などを集めました。もちろんササ刈りの時のササも貴重な材料
です。タコ糸、ボンドなどを使い作り上げたクラフト、皆で発表し終わっ
た後電車で持って帰りました。授業の成果として学校に飾ってあります。

授業の模様はこちらから
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_q3ldzU.pdf

これで、2年間計8回の里山に関する授業が終了しました。
あとは、それぞれの振り返とまとめを行い、3月20日に最終発表会が催
されます。この2年間の成果が楽しみです。

これから、新指導要領が施行されると総合学習の時間が少なくなるので、
色んな学科の授業を削りながら現場の先生方による調整がないとこのよ
うな体験学習は実施できなくなるとのことです。

これまで持続可能な暮らしをしてきた伝統的日本人のライフスタイル。
この様な基本の体験学習なしには、特に都会に住む生徒達たちには、持続
可能な社会を築くヒントすら見つけられないのではないかとこの2年間の
学習を通して感じます。

買うことで、生活に必要な品を揃え、経済を活性化させることで回ってき
た明治以後の日本社会。昭和30年代までは、それでも地球1個分の資源
の中で生きていました。しかし、今の日本人の暮らしは2.4個分の地球
を必要としています。持続可能な社会をつくるために行なう環境教育の主
役は、生徒ですが、そのための条件整備はわたしたち大人の仕事であると
感じる今日この頃です。


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