[発行日:2011.06.30] vol.80 アサザ基金 沖縄県での新たな取り組み「キジムナー型公共事業」、オーガニックコットンの価値を広める

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┃     QQ     【スクールビオトープ メールマガジン】
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┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃        vol.80
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┃     ┃ 株式会社トンボ 環境事業企画室
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2011. 6.30━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。

夏至を1週間ほど過ぎました。一年で一番日照時間が長い時節です。
東日本大震災で被災された方々は暑さの中、日々の生活がこれ迄以上に
厳しい状況になられていると拝察します。心よりお見舞い申し上げます。

6月は各地でホタルの観察会が各地で行なわれたのではないでしょうか
小職の自宅付近は毎年ゲンジボタルが少し、飛ぶのですが、今年は水路
工事の影響で羽化場が減ったせいか、さらにその数が減ったように思い
ます。

昨年に続き、和綿栽培を行なっています。今年畑にも広げ行なっていま
すが、上旬の気温が低かったためか、夜盗虫が例年以上に幼虫の期間が
長かったようで、全滅に近い苗の食われようでした。殆ど植え替えを強
いられました。和綿を栽培されている広島の方も同じ状況だそうです。  
 
人間中心に考えると不都合で、当たり前のことも、虫の立場から見ると
また違った見方も出来ます。
自然の恵みによって衣食住を賄っていることを植物の栽培や動物の動き
を通して感じるこのごろです。

今回は、アサザ基金の新しい取り組み、綿花栽培と学校での授業について
の2編です。



   もくじ【1】沖縄県での新たな取り組み「キジムナー型公共事業」
             NPO法人 アサザ基金

           
      【2】オーガニックコットンの価値を広める
     



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   【1】沖縄県での新たな取り組み「キジムナー型公共事業」
           NPO法人 アサザ基金
      
            
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< 自己紹介 >
皆様、はじめまして。NPO法人アサザ基金の金城優華と申します。
この場を借りて、少し自己紹介をさせて頂きます。
私は生まれも育ちも沖縄で、幼い頃から珊瑚の白化や基地問題の情報をよく
耳にし、「基地がない、自然豊かな沖縄にしたいな」という強い想いがあり
ました。

その想いは今でも変わらず、大学生のインターンシップの際に出会ったのが
アサザ基金でした。低迷している沖縄の環境問題や基地問題の解決策が、ア
サザプロジェクトにはあると確信し、今年の4月から1年間、アサザ基金で
勉強させていただいております。

まだまだ始まったばかりの沖縄での取り組み「キジムナー型公共事業」です
が、トンボ学生服メールマガジンという貴重な場で紹介させていただき大変
光栄に思います。
100年後の沖縄には、基地がなく、人もキジムナーも喜ぶ、WINWIN
な循環型社会の構築を目指して今度とも取り組んでまいります。

< アサザ基金活動概要 >
はじめに、NPO法人アサザ基金のご紹介を行いたいと思います。
NPO法人アサザ基金は霞ヶ浦流域の小中学校を中心に、年間を通じて長期
・短期・単発の総合学習プランを提供し、様々な立場から地域を見直すこと
で地域の可能性を再発見し、人と人、人と地域のネットワークを結びなおす
取り組みを進めてきました。

子供達の学習意欲や感性を原動力に地域を結び付けてゆくその過程で、福祉
・治安・防災といったコミュニティ本来の機能が再生し、自立したコミュニ
ティが築かれてゆくことを目指しています。
環境保全の仕組みを自己完結した形ではなく、まちづくりの中にしっかりと
位置付けようという取り組みです。

わたしたちは総合学習を、子どもと大人の協働で創る新たな学習の場と捉え
ています。
子どもの感性(全体認識など)と大人の知性(分析評価など)が協働するこ
とで新しい社会を創ることができると考えるからです。
このように、子どもたちの総合学習の成果を活かしたまちづくりに向けた取
り組みは全国各地でも始まっています。
そこで今回は、
「沖縄県でのキジムナー型公共事業」を目指した取り組みを2つご紹介致し
 ます。

「キジムナー型公共事業による地域活性化の提案」
みなさんは、キジムナーという言葉をご存じですか?
キジムナーとは、かつて沖縄全域に生息していた森の精。森や泉、川、海で
生活をし、森から海の繋がりがなければ、生きていけない存在です。
キジムナーを呼び戻すことは、失われていた地域の自然を取り戻すことと繋
がります。
そこで、キジムナーを呼び戻す取り組みを軸に、地域の多様な人々や組織を
結ぶネットワークを作り、地域に新しい人とモノとお金の流れを生み出すこ
とで、自然と共存する循環型社会の構築を目指します。

キジムナー型公共事業を基盤とした取り組みは、沖縄県の2カ所で始まって
います。

1,沖縄県宮古島・多良間島での取り組み
地下水源に依存する両島で、子ども達の学習を軸に地域に潜在する資源を掘
り起こす取り組みにより、地下水源や生物多様性の保全と地域復興(ブラン
ド創出)を一体化した島つくりを目指すものです。

今年度の5月31日に、宮古島の小学校3校へ授業に行きました。
環境保全型ブランド創出の提案作りに向けて、導入〜課題の発見までの授業
展開となっています。

・宮古島市立宮島小学校
生きものの「体のつくり」「くらし」「すみか」を勉強し、生きものの視点
に立って身の周りを見つめなおすことで、生きものの視点に立つ方法を学び
ました。宮古島に生息している、ウスバキトンボやサシバ、アサギマダラは
日本各地へ飛びたち、クバの葉を使用したクバ扇は扇子となり日本各地で伝
承されています。
宮古島は生きものの道、文化の道の発信地であり、日本各地と繋がっている
事を学びました。

・宮古島市立狩俣小学校
プールのヤゴ観察では、生きものの「体のつくり」「くらし」「すみか」を
体系的に学びました。茨城では見られないハラボソトンボやタイリクショウ
ジョウトンボ、ヒメトンボが観察できた一方、茨城や東北まで来る、ウスバ
キトンボも観察でき、宮古島が生きものの道のスタート地点であることを子
供たちと一緒に確認することができました。

・宮古島市立池間小学校
近所のお年寄りの方へ昔の自然や生活、遊びの聞き取り調査を行いました。
昔住んでいた生きものを呼びもどす方法や、地域にあった自然再生について
学びました。
池間島にある池間湿原は、昔入江で、ミナミコメツキガニやウミガメ、ウナ
ギなど海洋性生物が多く生息していた事を学び、今後池間島が人も生きもの
も住みやすい環境にするための提案作りを行っていきます。

授業風景
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_W0z6oZ.pdf

2,沖縄県宜野湾市大山での取り組み
離島だけでなく沖縄島でも生きものの道を増やし、キジムナーを呼び戻す、
新たな取り組みが始まろうとしています。
対象地区は、沖縄県で有数の湧水と土壌を活かしたターンム(田芋・水芋)栽
培の一大産地となっている宜野湾市大山地区。

市街地化や耕作放棄地増大に伴い農業地区の減少が進行しており、食文化や
生物多様性の損失が懸念されています。
今年度の秋から近隣小学校への授業が始まり、環境学習を通じたターンム畑
の生きものと人、自然と文化などの繋がりを発見し、生物多様性、地域文化
の保全型の地域ブランドを創出することで、地域活性化を行っていきたいと
考えております。

キジムナーを呼び戻すという長期的ビジョンを持ちながら、今後もプロジェ
クトを遂行していきたいと思います。

NPO法人アサザ基金HP
http://www.kasumigaura.net/asaza/




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       【2】オーガニックコットンの価値を広める
          
  
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< 和棉栽培の理由 >
トンボ環境事業企画室では、昨年から和棉栽培を始めましたが、その背景
には、明治9年創業の頃の足袋の原料となった地元の棉を復活させたいと
いう思いと社会的には非常に少ないが、今後少しずつ増えていきそうなオ
ーガニックコットンの価値を普及させたいという理由があります。
また、今年より海外のオーガニックコットンを使った体操服を発売したの
で販売促進という面もあります。

これまでの価格、デザイン優先という視点からすると選ばれるはずのない
オーガニックコットン商品。
綿を作る人々の健康や児童労働の問題、生物多様性への配慮というエシカ
ル(倫理的)な面を理解することで初めてオーガニックコットンの価値を
知ることにつながると考えます。

その価値を体験できるのが、綿栽培と感じています。昨年備中(岡山)、
河内(大阪)、大島(伊豆)の和綿を育て、2000粒ほどの種を収穫で
きました。今年は欲しいといわれる方にもお分けして育てています。

< 新しい出会い >
先般、広島県尾道市 向島で、和棉を栽培しながら、地域の草木を原料に
して糸を染め、織物にし、帆布でのバッグづくりなど 新しい和棉産
業を起こそうというNPO法人 工房おのみち帆布 立花テキスタイル研
究所の方と知り合いました。

地元の草木を原料として買い、染料を作る、綿を島で栽培し、手で紡ぎ、
染色をし、簡易機織機でコースターなどを作るワークショップを個人対象
に実施されています。

同法人では、尾道市内の小、中学校で綿栽培の指導や収穫できた綿からの
糸紡ぎ、簡易機織も指導されており、まさに市をあげてのプロジェクトが
進行中でした。その影響か尾道では確実にオーガニックコットンの価値を
知る人々が増えているそうです。直営ショップでは、草木染めのショール
やオーガニックコットン商品などが売られており、オーガニックコットン
の価値を理解して買われるとのことです。

NPO法人 工房おのみち帆布 立花テキスタイル研究所のHPです。
http://tachitex.com/index.html


< 授業を実施 >
「人と地球に優しい衣服の選び方」という出前授業メニューを弊社トンボ
ではNPO法人ACEと協働で完成させ、第1回の授業を先日 埼玉の小
学校で実施しました。
自分達と同じ児童が働いていることにショックを受けた児童が多かったよ
うですが、過酷な労働ということ自体が身近には感じられませんでした。
当然なのかもしれません。

しかし、半分以上の児童はオーガニックコットン商品を買っても良いとい
う意思表示がありました。
バーゲンのシャツは500円、オーガニックコットンシャツは2500円
と5倍の価格差がありましたが。 もっと興味を示したのは自分での栽培
で、80%近くの児童が栽培したいと手が上がりました。

< 種をプレゼント >
少し種まきには遅いですが、手持ち綿に加え、早速綿実を工房おのみち帆
布さんから譲っていただき送りました。プランターでの栽培となると思い
ますが、栽培から何かを感じてもらうと大変嬉しいです。

収穫した棉から糸を紡ぎコースターが出来ればと考えワークショップの授
業プログラムの開発を予定しています。
 
< 国内綿栽培の課題 >
江戸時代、栽培したオーガニック和棉は300坪で100kg取れたそう
です。種が70kgと棉30kg。 綿は繊維に、種は綿実油で食用に、さ
らにBDF燃料として天ぷら油と混ぜて使用可能です、さらに絞り粕は家
畜の飼料として販売も可能です。そこからの収入を試算したところとて
も採算に合うものでは有りませんでした。
なぜ途上国で綿花栽培が多いのかを分かった瞬間でもありました。

オーガニックコットンの収穫量は現在の一般的な綿花と比べると3/4程
だそうです。価格が高いので生産者の収入は安定しますが、現在の消費水
準のままでは商品不足となってしまいます。モノを大事にする心もオーガ
ニックコットンの普及には欠かせないのかもしれません。

ちなみに江戸時代は、着物 から古着、子どもの着物に仕立て、次に端切
れとして布団などに使い、さらにおしめ、ぞうきんとして利用し最後は燃
やして灰にして畑に蒔いて、完全な物質循環がありました。

オーガニックコットンの価値が徐々に広まることが期待されます。

授業の模様です
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_bpYtr0.pdf


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