[発行日:2012.03.31] vol.89 学校ビオトープは学びの宝(田から)愛知県 豊田市立寿恵野小学校

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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2012.3.31━★




こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。

ここ数日めっきり春めいてきた岡山ですが、皆さまのお住まいの地はいか
がでしょうか。月末にかけて本州でもソメイヨシノの開花が予想されてい
ます。今年は少し遅いようにも感じられます。

弊社の春はまだまだ、先で 入学式で着用いただく全国の生徒さんたちの
服を休日返上で、社員一丸となって製造している最中です。

今回は、学校ビオトープの取材、次週聞き書き甲子園のフォーラムの模様
をお届けします。



   もくじ【1】学校ビオトープは学びの宝(田から)
         愛知県 豊田市立寿恵野小学校

 
      


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       【1】学校ビオトープは学びの宝(田から)
           愛知県 豊田市立寿恵野小学校
         
            
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前回簡単にご紹介した 環境大臣賞受賞校 愛知県豊田市立 寿恵野小学
校のビオトープを使った学習について取材をさせていただきましたので紹
介します。

当日は、ビオトープ部顧問の林先生と、コンクール発表会にも参加された
児童の皆さん8人がより詳しく活動の様子を発表して下さいました。
限られた紙面ですが、ポイントを絞ってご紹介します。

寿恵野小学校ビオトープを使った学びの特徴。
1.ビオトープの再生を通して、その定義を児童全員に伝え、共有し、守り
 利用する仕組みが出来ている。
2.地域の個人、団体と幅広く連携した学習が行われている。
3.各学年においてビオトープを使った学習が計画的に行われている。
4.食を中心とした生活の視点と文化を結びつけた学習を実施している。
5.児童たちの体験を重視した指導が行われている。

寿恵野小学校は平成6年に外部の支援を得てビオトープを造成しました。
色々な樹木が植栽され、地下水を利用した100mの小川や池などがあり
ハード面は素晴らしいものでしたが、時が経ち、その後児童の遊び場や生
き物の投げ捨て場的になり9年が経過していました。

それを、ビオトープ部顧問の林先生の強力なリーダーシップの元、再度
ビオトープを学習教材として利用する方針と具体的な計画を立て、保護者
や地域の方々、児童たちが連携し、ビオトープのハードとソフトの改革を
実施しました。そして、結果全国学校・園庭ビオトープコンクール環境大臣
賞の受賞に結びついたのでした。

初めに学校全体の意識を変えるために、遊びや人間の楽しみ中心の対象だ
ったビオトープを本来の生き物の暮らしの場として位置づけ「寿恵野の森
ビオトープ」としてインフラ整備を実施しました。

まずは意識の変革を定着させるため「ビオトープ」を正しく理解し、維持
管理するための人材育成に着手。4〜6年生を対象にした部活動として
「ビオトープ部」を設立。野鳥班、蝶班、木の実班、水生調査班、水生生
物班などを編成し、外部専門家を招き指導をされました。学習により、児
童達は現状を認識し、在来と外来生物の有り様が分かるようになり、ビオ
トープがどのように生まれ変わるのが良いかを理解できるようになりまし
た。「めざせ寿恵野の豆博士」のテーマは学びの意欲も高めました。
そして、外部の助成金もうまく利用し、ハード面の整備に着手しました。

生き物の棲みかとして人間が入らない場所と人間が立ち入ってよい場所を
分離、地域の竹や樹木を使い、児童自らが土木作業や池のかいぼりなどを
行いました。その結果、児童はノコやナタ、ノミ、ドリルなどの道具が使
えるようにもなりました。昭和30年代までの子どもたちが行っていたこと
が復活したともいえます。

A.ビオトープ再生画像はこちらをご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_CusNYx.pdf

ビオトープを使った正課の授業の取組みについては、地域との連携なしに
は考えることが出来ません。

5年生の稲作授業はビオトープが出来る以前から、近隣の方が、ご自分の
田んぼを提供して稲作とその文化について指導をされています。田植え歌
を歌いながらの田植え〜稲刈り、伝統的な道具を使った脱穀、料理づくり
までを地域の伝統行事と共に体験しています。最多で42種類の内外の稲
の栽培と米にあわせた調理を行い、体験による学習を重視しています。

働くこと=命をつなぐことであり、自然とつながることを児童は知らず知
らず体験しています。これまで日本人が営々と続けてきたライフスタイル
の復活でもあります。働き=稼ぎ=金銭換算とは違う 生きる力を育てる
教育であるといえます。ESD教育とも言えるのではないでしょうか。

B.田んぼの授業画像はこちらをご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_XneNv3.pdf

正課としては「環境教育」の目的、方針を策定し、各学年ごとに取り組む
内容や月次毎にまで具体化しています。総合学習だけでは時間数が少ない
ため学科ごとにどのように取り組むかも計画されています。

ビオトープを活用した授業の到達目標や方向性が低、中、高学年毎に設定
してあり、各学年の先生方の指導ガイドラインが作られていて、取組み易
いシステムが確立されています。

これとは、別にビオトープ部の活動は行われています。通常は週3日放課
後を利用した活動。夏休みは、ビオトープの改修も行いましたが、それだ
けにとどまらず、水の循環についての学びも深めるために、学校ビオトー
プと地域の自然の関わりや川、干潟、海という水辺の繋がりについて宿泊
研修を実施しています。

衣・食・住について自分達で作る体験もしています。どんぐりを使ったハ
ンカチ染色、ヤマモモ、カリンのジャム、アキグミ、オニグルミの食体験
住は近隣で縄文時代の竪穴住居跡が見つかったこともあり、将来当時の生
活を体験しようと地元の樹木を植林し、森の復活を楽しみに待ちます。

その他、近隣や市内の自然保護活動家や研究者、環境学習施設、自然体験
施設での学びも積極的に取り入れ、専門家から昆虫や植物の同定の仕方な
ど指導を受けています。情報発信や交流にも力が注がれ、2010年の生
物多様性国際会議COP10では、なごや環境大学のブースで環境活動の発表を
したり、全国学校林サミットにも参加したりと交流の幅を広げています。


C.ビオトープ部の活動画像はこちらをご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_giFS2y.pdf

里山の荒廃を親でなく孫たち小学生の世代から復興しようとする授業とビ
オトープ活動。これからの日本のあり方を考えたときに大変重要な取組み
であると感じました。
充実した活動を続けるビオトープ部ですが、今回中心の林先生の転勤で新
しい体制に引き継がれます。更なる発展を期待したいと思います。


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