[発行日:2013.05.31] vol.104 「聞き書き」手法で岡山の中学校で総合学習、アサザ基金 「ビオトープ万歳」

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
┃                               
┃     QQ    【 トンボ エコ&ESD メールマガジン 】 
┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃                      
┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃       vol.104         
┃     ┃                         
┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室   
┃     ┃                         
┃                               
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2013.5.31━★


こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
明日から6月を迎えます。入梅が例年より10日近く早い地区もある
とのことです。梅雨明けは7月21頃と予測されていて、例年よりも
長い梅雨となるようです。大雨の災害には注意したいものです。

今月は、2つの話題提供です。


 もくじ【1】「聞き書き」手法で岡山の中学校で総合学習 

     
    【2】アサザ基金 「ビオトープ万歳」
           

      
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
このメールマガジンのタイトル ESDとはエジュケーション フォ サス
テナブル ディベロップメントの頭文字です。日本語では持続可能な開
発のための教育と訳されます。日本が国連に提唱した考え方で、エコに
とどまらず持続可能な社会を構築するための教育活動全般を指します。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      

◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


     【1】「聞き書き」手法で岡山の中学校で総合学習 
                      
            
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇



トンボグループとして告知のお手伝いをしている高校生を対象とした
「聞き書き甲子園」は 毎年全国の高校生100人が森・川・海の伝統的な
仕事を営む名手名人達に その仕事・技術、人生を取材し、名人達の生の
言葉でレポートを残す事業です。
今年も7月1日の締め切りに向け、現在、学校に告知をしている段階です。

この聞き書きという手法を使い、弊社の地元 岡山県の南東部「かきオ
コ」(牡蠣のたくさん入ったお好み焼き)で有名な備前市日生町にある
日生中学校で「聞き書き甲子園」事務局、NPO法人共存の森ネットワ
ークのメンバーが指導役となり聞き書きの授業が始まりました。

元々、日生の人々は漁業の町として瀬戸内海の魚を獲って生計を立てて
いましたが、昭和40年頃から漁獲高が減り始め、安定した収入を確保す
る目的で「カキ養殖」が始まり、今では町の代名詞にまでなっています。

 漁獲高が減った背景にはかつて580haもあった海の生き物の宝庫
「アマモ場」の衰退がありました。燃料革命で薪炭林であった山の手入
れがされなくなったり、瀬戸内海の沿岸部に出来た多くの工場の排出物
や垂直護岸の影響を受けたりして、アマモ場は昭和60年にはわずか18ha
にまで減少。日生漁協はこの事態を深刻に捉え、30年前からアマモ場の
再生に着手し、現在200haにまで回復して来ました。

今回ご紹介する日生中学校では、「共存」と「共生」の視点の元、日生
の町を愛する中学生を育て、成長してもらおうと 地元の人々をゲスト
ティーチャーとして学校に招く他、生徒たち自身も学外に出て体験し、
外部の方から直接学び、交流をする授業を実施しています。

13年前から、始まった「カキ養殖」の体験授業では、1年生達が日生漁協
の指導を受け、カキの種付けから収穫そして、お世話になった方へのギ
フトとして出荷を体験しています。
 さらに漁協に支援を受ける授業が、2年生を対象に今年から始まりまし
た。 「アマモ場」の再生とその意味を確認するという総合学習です。

これは、日生のアマモ場の再生に協力するNPO法人共存の森ネットワ
ークの「聞き書き」手法を日生漁協が日生中に紹介したことがきっかけ
です。
この手法を 3年生の総合学習「人権教育」でも取り組む事が決定し、5
月後半の沖縄修学旅行で元ハンセン病患者の方の話を聞き書きすること
になりました。

そこで、今月2年生、3年生を対象に聞き書き事務局の指導による聞き書
き手法を学ぶ授業が実施されました。
5月10日に3年生が事務局長吉野氏による聞き書き手法のレクチャーを受
けた後、同事務局員、地元ケーブルTV社員、教師ら6人を話し手として
生徒が12グループに別れ、その人のキャリアや生活などについて質問を
行い、聞き方を学びました。

話し手1人につき 2グループが担当しましたが、同じ話を聞いてもまと
め方に違いがあり、話し手の人となりの浮かび上がらせ方が違ったのは
興味深かったです。

2年生の聞き書き研修は5月24に行われました。午前中に海に浮いた種つ
きアマモの採集を漁船10隻に分かれ行いました。浮きアマモの採集はア
マモの繁殖のためだけでなく、漁船のスクリューに絡みつく、被害を減
少させる目的もあります。 

午後からは、アマモの生態について岡山県の職員に説明を受け、その後
聞き書き手法のレクチャーを吉野さんから受けました。 
当日はグループで相談した質問を吉野さんが代表で漁協の専務天倉さん
に質問する手法を取りました。グループワークでは、事務局員や聞き書
きOBの岡山、愛媛在住の大学生らが質問の纏め上げをサポート、その結
果アマモや漁業、天倉専務個人に関する質問がたくさん出ました。
少しご紹介します。
Q全国でアマモは16種類、岡山では2種類、日生は何種類
A日生は1種類のアマモだけ。

Qアマモはどれくらい大きくなる
A3月は30cmくらいだが、これが2mくらいに成長する。海の透明度が
 上がり光が入るともっと成長するだろう。昭和60年頃には鹿久居島
 付近で 6〜7mのアマモが生えていた。

Qなぜ、アマモを増やすのか
A環境の改善と暮らしのため。アマモは海の生き物がたくさん集ま
  る所なので、アマモがあると魚もたくさん取れるようになる。

Qアマモを増やす以外に魚を増やすほう方法はあるか
A稚魚放流の方法があるが、稚魚が育つためには餌を採ったり、隠
  れたりする場所が必要。アマモ場はその役割も担う。

Qアマモを増やすのは楽しいか
A成果はこの4〜5年実感している。先輩から引き継いだ環境を後輩
  に良くして引き継ぎたい。

Qこれからの夢は
A魚がたくさん獲れる様になり、漁師が増え、若い人が増えてくれ
  たら嬉しい。

Q今の中学生に出来ることは
A自然を受け入れる気持ち、自然を大切にする気持ちが必要。
  今日の浮きアマモの回収は非常に有意義、今後一般の人にも広げた
  い。アマモの航行害も少なくして海に恩返しもできる。

本番は次月、漁協関係者や日生の海の変化を知る人達への聞き書きとし
て行われます。
それまでに2年生達は、今回のQ&Aをまとめ直し、日生の海の変化や暮ら
しの変化の年表を作り、質問の内容を整理します。歴史(過去と現在)
があるから、未来が見える それを自らの質問で確かめて欲しいという
主任の先生のまとめがとても印象的でした。

この1年生から3年生までの総合学習は地元のケーブルTVと、NHK岡山が
継続取材をしており、11月宮城で開催される全国アマモサミットでの発
表の後、編集され放送される予定です。

「聞き書き」が中学生の授業にも利用できると分かった今回の取り組み
です。本番での成果が楽しみです。

聞き書きの授業の模様はこちらをご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_e7oKZF.pdf  




◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


        【2】アサザ基金 「ビオトープ万歳」
           
                   
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇



2013年5月11日、茨城県潮来市にある「水郷トンボ公園」に、早朝から潮来
ジャランボプロジェクト実行委員会のメンバーが集まってきました。
 当日は一橋大学大学院国際企業戦略研究科の留学生40名が、水草の手入れ
や小川の整備、そしてカワセミ米の田植え体験に参加するため東京から大型
バスでやってくる日です。
小雨が降り注ぐ生憎の天気となりましたが、皆カッパを着用して「国際色豊
かな河童!」となり、水辺の作業に勤しみながら潮来の住民と交流を深めま
した。

潮来ジャランボプロジェクトは1997年に発足し、それ以後15年間この水郷ト
ンボ公園の管理運営を手掛けてきました。国土交通省や潮来市と管理協定を
結び、市民が中心となって活動してきた珍しい事例だと思います。
この水郷トンボ公園は、霞ヶ浦(西浦)と北浦の合流地点にある外浪逆浦に
面し、もともとは国と県が観光の新名所として水生植物園(アヤメ園)を造
ったのですが、アヤメの栽培に適さず放置されてしまったのを市民が提案し
て蘇らせました。

当基金の飯島が設計して1998年に地元住民と協力しながら作り上げたのです。
園内には「アサザ池」「ガガブタ池」「オニバス池」「ミズアオイ池」など
絶滅に瀕する植物が生育できるように工夫された池があり、湖の魚が水路を
通して公園内に自由に行き来できる構造になっています。
つまり、霞ヶ浦の絶滅に瀕する動植物が生育し繁殖できるよう配慮された<
ビオトープ>なのです。また、園内には水車や江間など昔懐かしい水郷の様
子が再現され、市民の憩いの場、子どもたちの環境学習の場としても利用さ
れています。

<ビオトープ>の定義が「生き物の住みやすい場所」だとしたら、人も生き
物ですから、都市機能にビオトープの理念を生かしたら、もっと違った都市
が出現するかもしれません。コンクリートで固められた湖は生きものに配慮
された作りではありません。このままでは、いつか、みな、いなくなるでし
ょう。人間だって同じではありませんか。

 生き物の住みやすい場所<ビオトープ>の概念を広げていきましょう。
「潮来の水郷トンボ公園」のような活動を全国、全世界に広げていくといつ
の間にか、人も生き物も共に豊に生きられる素晴らしい世界になるに違いあ
りません。
環境問題も原発問題も<ビオトープ>の概念ですべて解決するではありませ
んか。<ビオトープ>万歳です!

茨城県潮来市公式 水郷トンボ公園の写真はこちらからどうぞ
http://www.city.itako.lg.jp/index.php?code=1246

潮来ジャランボプロジェクトの詳細はこちらからどうぞ
http://www.kasumigaura.net/asaza/itako/index.html


前のデータを表示

後のデータを表示

バックナンバートップへ