[発行日:2012.04.05] vol.90聞き書き甲子園 10年目の役割 

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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2012.4.5━★



こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。

今回は、先週お知らせしたとおり、聞き書き甲子園のフォーラムの模様
をお届けします。

就職氷河期といわれる昨今、若者の就職・就業意識の変化もあり、未就
業や3年未満での離職率が急激に高まる中 仕事とは?生きるとは?を
高校生が考える良い機会になったフォーラムでした。



   もくじ【1】聞き書き甲子園 10年目の役割 
      



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        【1】聞き書き甲子園 10年目の役割 
         
            
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去る3月25日、2年ぶりに聞き書き甲子園フォーラムが東京で開催され、
高校生、OB達が集いました。東日本大震災の発生で昨年は開催中止だった
ため、今回は9期生、10期生合わせて100名強の高校生が全国から集い
ました。

今回で10年目を迎える聞き書き甲子園は、節目ということもありますが
昨年の震災を契機に新たな役割が生まれたように感じました。フォーラム
とその後に行われた振り返りの研修から抜粋して報告します。

http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_Eemg0q.pdf

2年ぶりのフォーラム開催にあたり、聞き書き甲子園の生みの親であり、
NPO法人共存の森ネットワークの理事長 作家塩野米松氏が基調講演で下記
のことを述べられました。
 テーマは「聞き書きを通して高校生が得てきたもの」

「働くことはいったい何か?」お金を貰うことと働くこととは違うのでな
いか?縄文時代に思いを馳せると「生きる」ことと「働く」ことは一緒だ
った。 
縄文人は大きな木の甘そうな実を探して身の回りに植えた。自然界で生き
るためには技術が必要。生きることは学ぶこととイコールだった。

昔の徒弟制度では、技を身につけることで自立したが、「技術を身に付け
る体を作る」ことが重要だったので技術と直接関係ない、仕事以外のこと
もたくさん学ばせた。
師匠は弟子と同じ方向を向いて、後ろや横から指導し、それを見て学ぶこ
とで技術が身についた。暮らすためにどのように、道具を作り、道具を使
うかが重要だった。

自分の1日の時間を切り売りして働く今の私達。お金を手に入れることが
働くことになっている。
森・川・海の名人は生きることと仕事がイコールに近い。そこが、今の社
会、社会人とは少し違う。

この事業を始めた時に10年後に話そうと決めたことがあった。それは、
「今日の糧を得る。明日生きていく」そのことがどれほど大変であるかを
学ぶチャンスを聞き書きの経験が与えてくれるということ。

この後、フォーラムでは、名人と高校生の代表が登壇し、聞き書きをして
の感想などを語りました。 
金目鯛の1本釣りの漁師を聞き書きした高校生は、「漁師だが、魚を取るだ
けでなく資源管理にも力を入れていた。魚も限りある資源」であることに気
づかされ、資源管理にも思いを馳せる名人の仕事に感動したと発言しました。

「わさび栽培が生きがい」という名人の言葉に、自分も将来人に誇りを持っ
て語れるような仕事をしたい、父と祖父が林業に従事し自分自身も林業や森
林に関わる仕事への思いが強くなったという女子生徒の発言もありました。
  

フォーラムの最後に、澁澤 寿一副理事長より、「私達が描く未来」という
テーマで話があり、冒頭で聞き書き甲子園OBの現在の暮らしの映像が上映さ
れ、聞き書きがどのようにOBに影響を与えているか紹介がありました。

一人は、パティシエ。聞き書きのOB達が活動する共存の森活動に参加、茅刈
などの農作業を体験し、地元の人達が作ってくれたつうのおにぎりやトン汁
がとても美味しく感じられ、人のつながりの素晴らしさを経験した。
将来的に皆が集う店を故郷で作りたいと夢を語りました。  

一人は、大学を中退、新潟の山村に飛び込み森林組合で働く青年。山仕事
3年目で少し分かりかけてきたが地元では、まだお客さん扱いされている。
「雪が消えると水になる」と思っていたら地元では「春になる」という共通
の生活観があり、ショックを受けた。最近、自分も自然の中の一部と感じる
ようになってきた。この集落が消えないように自分は何をすべきか今後、考
え取り組んでいきたいと語りました。 


今の日本は未来に対し80%が「不安を感じる時代」日本の根幹が壊れ始め
ているタイミングではないか? 公務員や大企業に就職したから安泰ではな
くなった。3.11の震災がそれを気づかせてくれた。

OBが被災された方々に聞き書きをした、そこから見えてきたのはそれぞれの
方の思い。異口同音に語られたのが、『お金があることが安心して生きてい
けると思って生きてきたらそれは違う』 
『これまで地方は、都会の政策に虐げられてきた。インフラを整備するから、
もう一度経済成長を目指した生活を取り戻して欲しいはおかしい』

被災地の聞き書き101 暮らしを語り想いをつなぐ
http://blog.canpan.info/kikigaki101/


全国的に「自立した地域」といわれている地区の調査を昨年行い、愕然とす
る結果が出た。「75歳以上とそれ以下は考え方の段差」が明らかに存在
する。
自分達の衣食住は自分達で賄うと答えた75歳以上。若い人達は、食糧・水
・エネルギー・仕事は国が用意してくれるものと感じていた。そして、自分
達が関わり地域を作るなど考えもていないことが判った。
55歳以下は伝承に対して殆ど興味がなく、他が与えてくれると思っている。
しかし、被災地では答えが違った。食べる、支えあう、見守りが大事、絆と
いうことばが浮かび上がってきた。経済だけで社会を見る時代が転機に来た。

ブータン国王は国の価値を国民の幸せ度で図ろうとGNHを提唱し、世界でその
考えが広く理解されるようになってきた。
『未来は自分達が作る、価値観を自分で作る』を名人を通して高校生達は見
聞してきた。経済だけでない見方が大事なのではないか。
「共に生きていく覚悟」が必要ではないか 

この後会場を移し、高校生同士で振り返りを行いました。
名人との出会いは自分にどのように影響したか?名人の仕事を通して自分の
職業観は変わったか?今後聞き書きで経験したことをどのように活かすか?
などグループ単位で話し合い、まとめ発表をしました。

高校生それぞれの思いは違いますが、名人の仕事は持続可能な仕事という実
感を得た高校生が多くいました。同時に自分の中の意識の変化に気づいた人
やコミュニケーションの大切さに気づいた人も居ました。

これからの高校生の成長と願うと同時に、人の育成が出来るこの事業の素晴
らしさと役割を感じたフォーラムでもありました。

4/16より共存森ネットワークホームページの「事務局日誌」
http://kyouzon.blog114.fc2.com/
にて参加した学生達の声が掲載されますのでこちらもご覧下さい。


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