[発行日:2012.05.30] vol.92 5/10 コットンCSRサミットのご報告 学校ビオトープから始まるまちづくり

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┃     QQ    【スクールビオトープ メールマガジン】 
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┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃       vol.92         
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┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室   
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2012.5.30━★




こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
今月は、東日本中心に落雷、竜巻、雹など異常な天候に見舞われた月だ
ったように思います。
温暖化の影響は暑くなるだけでなく、その反対の現象も生まれると言わ
れていますが、まさに、そのとおりのような気がします。

そのため、暑くなるのが少し遅く、ヨトウ虫はじめ蝶や蛾の羽化も心な
しか遅く、先日芽が出た綿花が食害を受けています。綿の成長が気にな
るところです。

今回は、2件の話題提供で、この綿にも関係したコットンCSRサミット
2012のご報告と当社も支援するNPO法人アサザ基金が中学校で授業
を実施し、それをきっかけに中学生たちが、学び、行動し、地域おこし
につながった事例をアサザ基金スタッフより紹介していただきます。



 もくじ【1】5/10 コットンCSRサミットのご報告
     
    【2】学校ビオトープから始まるまちづくり
         牛久市立牛久南中学校 



      

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      【1】5/10 コットンCSRサミットのご報告 
         
            
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5月10日は、日本綿業振興会はが定めたコットン(5・10)の日です。
奇しくも、弊社の創立記念日と同じ日。東京で行われた第2回コットンCSR
サミット2012のご報告をします。

・今年のテーマとサミットの構成
昨年の東北大震災を受け、コットンの力で何か出来ないかとNPO法人ACE
(世界の児童労働をなくす活動を展開)とジーンズの会社LEE・ジャパンが
主催したイベントでした。
第2回目の今年は、「人と地球と被災地のためにコットンができること」
として2部構成で開催。第1部に小職もパネラーとして参加しました。
2部は復興支援東北コットンプロジェクトの進捗報告がありました。

< 企業のCSRについて2つの動向 >
冒頭 ACE 事務局長 白木 朋子氏より企業の社会的責任についての説
明がありました。
・「知らない」も企業の責任  ラギーフレームワーク
2008年に国連に提案された ラギーフレームワーク「保護、尊重、救
済」の考えではサプライチェーンでの「人権」に関する企業の責任が明確
になった。
安いだけでなく企業は社会的責任と経営上のリスクの両面で調達を考える
必要がある。

・直接的に人権侵害を行っていなくても、取引先が行っている場合や知ら
 ずに悪影響を及ぼしている場合も「加担」にあたる。
・既に起きている人権侵害に対応するだけでなく発生しうる。人権侵害を
 回避するためのリスク管理や予防策までを含む。

・全ての組織を対象にした規格 ISO26000
ISO26000は2010年10月に発行され、全ての組織に当てはまる
社会的責任の国際規格。サプライチェーン=バリューチェーンとして捉
える。7つの原則、7つの中核主題で構成されている。

原則:説明責任、透明性、倫理的な行動、利害関係者の関心の尊重、法の
   支配の尊重、国際行動規範の尊重、人権の尊重

主題:組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、
   コミュニティ参画都開発

< コットンCSRサミット 第1部の概要 > 
テーマ、「コットン生産現場の現状とオーガニックコットンの取組み」
5名のパネラーがそれぞれの取り組みを話しました。

1世界のオーガニックコットン事情/稲垣 貢哉氏テキスタイルエクス
          チェンジアジア役員・興和株式会社 開発生産部
オーガニックコットンは2010年初めて1.1%を超える生産量とな
ったが(綿全体)昨年は0.7%に下がった。
その原因は、インドでのオーガニックコットン(以下OC)が減ったこと。
遺伝子組み換えのベターコットンなどが普及したり、綿価格が一時高騰
してOCと一般の綿との価格差があまりなくなったことなどが考えられる。

2女子大学生が自分で栽培し、語るコットンの魅力/ 目崎 梓氏 
                        筑波大学大学院生
綿花の花のきれいさやふわふわした感触にとても惹かれてインドへ渡っ
た。自分が肌が弱い体質ということもあるが安心して身に付けられ、地
球にやさしいことが素晴らしく、OCの価値を広く伝えたい。自分でも栽
培している。

3インドでのオーガニックコットンと児童労働改善活動
         /成田 由佳子氏 NPO法人ACE 国際協力事業担当
インドの児童労働は綿花畑で多く行われている。遺伝子組み換え種・人
工交配種を作るために賃金の安い児童を雇うから。結果子どもが教育を
受けられない、教育への関心がない状態が蔓延している。

綿花畑で働いていた子どもの就学を支援、ブリッジスクールという正式
な学校に行く前の学校に通わせる助けをしたり、家計を助けるために働
く児童が多いので、母親の収入を向上させる支援をしたりしている。
ある村では3割の子どもが働いていたが2年間で村の9割が学校へ通い、
1割がブリッジスクールへ通うようになった。

4学校の授業でオーガニックコットンの価値を伝える
                    /トンボ 開発本部 小桐
地球と人にやさしいオーガニックコットンの価値を伝えるために学校で
授業実施。子ども達に事実を伝え、考えてもらうきっかけ作りを提供。
綿花栽培もしてもらい、糸にすることの大変さも体験してもらっている。

授業実施後、学習成果発表会で150人の保護者に向け5年生が自分達
の研究発表を披露することにつながった。発表資料は下記でご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_VKxbBU.pdf

5オーガニックコットン商品 販売の取り組みについて
     /株式会社新藤  藤沢 徹氏 「天衣無縫」 代表取締役
1993年からOCの商品を展開当初1.5億円の販売が6億円までにな
った。2000年からグロバリーゼーションの機運が高まっているが、
それだけに安心安全な商品を求める声が高まっていることだと思われる。
不況の中で伸びてきた商品だけに本物といえるのではないか。

今後は、モノとしてのOCのアピールでなく、背後の価値(環境面の安心
や、人権に配慮した価値)などを伝えることが大事になるだろう。

 
< 第2部東北コットンプロジェクトの紹介 >
・東北コットンプロジェクト発足のきっかけ 
昨年の第1回コットンCSRサミットで 「コットンの力で何かできないか」
から 東北コットンプロジェクトはスタートしました。

サミット終了後、大阪靴下メーカー タビオの呼びかけで、塩害を受けた
農地で綿花を栽培し、塩を吸わせて除去し、作物が取れる農地にしようと
いう考えに共鳴した株式会社クルック(事務局;インドでのプレオーガニ
ックコットン栽培支援も実施)やLEEジャパン、その商品納品先の全農。
さらには被災地で農業を営む農業生産法人イーストファームが連携し瞬く
うちにコットン栽培の話が固まりました。

そして、大正紡績(オーガニックコットン専門紡績)の近藤部長が種子選
定、確保を担当し、商品販売には、ユナイティッドアローズ、アーバンリ
サーチ、フェリシモなどが参加し、支援含めて56団体のプロジェクトと
なっています。

東北コットンプロジェクトのHPはこちらです。
http://www.tohokucotton.com/

< 東北コットンプロジェクト 2011年の取組み >
・収穫はごくわずかに終わる
当初50aほどの土地に栽培する計画が、1.2haに増え、関係団体の草
抜きのボランティア支援もあり順調に進んでいました。収穫予定も1tの
見込みをしていましたが、台風15号の影響で水害に合い、結実期に4日
間も綿花が水に使ってしまいました。
結局、予定とは大きくかけ離れた35kgしか収穫は出来ませんでした。

・貴重な成果物の紹介
この綿花から一つの作品が出来ました。
「希望の大地」というタペストリーです。葉の形は1枚1枚全て異なるそ
うです。宮城県庁に寄贈されました。将来は黄金色にかわる意味が込めら
れています。
サイズ 3.6m×0.8m  画像はこちらからどうぞ
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_wlEIbL.jpg

今回は、わずかな収穫量でしたが、残りはタオルとして販売されます。

< 東北コットンプロジェクトがこれから目指すもの  >
・世界一流の綿を作り、輸出も考える
この東北コットンプロジェクトは震災復興だけを目指すのではなく、新し
いオーガニックコットンビジネスを考えています。
5年後も継続して買ってもらえる商品を目指すという視点でビジネスを展
開するとしています。
既に海外の有名ブランドへの生地輸出や国内での感性の高い商品プランが
計画されています。

現在綿花は世界で100数種あり、今回取れた綿の品質は世界ランクでは、30
〜36位に位置すするとのこと。今後10位くらいになるよう品質管理や改
善を行うと生産現場では考えています。
・安心安全そしてCSR + ファッション
また、事務局のクルックでは、収穫した綿について収穫重量 紡績重量 
編み、織りの製品重量のトレーサビリティデータをしっかり持つと共に 
放射能の状況などそれぞれの情報開示を進めたいとしています。 
本での新しいエシカル(倫理的)&エコロジー コットンとその商品として
今後注目が集まりそうです。




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      【2】学校ビオトープから始まるまちづくり
            牛久市立牛久南中学校  
         
            
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地元中学生と大学生がコラボし、中学生のまちづくり学習から、地域ブラ
ンドの「つながりの輪風せんべい」が誕生!

茨城県霞ヶ浦・牛久沼流域では、アサザプロジェクトに参加する多くの小中
学校の児童・生徒が地域の環境や特色を活かしたまちづくり学習に取り組ん
でいます。

牛久市では、2004年より市内全小中学校で「学校ビオトープからはじまるま
ちづくり事業」として、生き物と人間が共生できるまちづくりに向けた提案
づくりを行ってきました。
今回は、昨年度先進的な学習を展開してきた牛久市立牛久南中学校の「かっ
ぱん田」プロジェクトについてご紹介いたします。

<かっぱん田プロジェクトとは>
「かっぱん田」プロジェクトとは、牛久南中学校の生徒と、首都圏の大学生
(環境分野での人材育成を目指す損保ジャパン環境財団のインターン制度に
参加している大学生)、損保ジャパン環境財団の社員が協働で、地域に新た
なつながりを生み出しながら、牛久沼の水源地である谷津田を再生していこ
うとするプロジェクトです。南中生の学習から発展したまちづくり提案によ
り、地域をはじめ、企業や大学生、地域商店、福祉、農業、漁業など今まで
つながりがなかった人やもの、産業などをつなぎあわせ、地域に新しい物語
を生み出しています。

<物語のはじまり〜谷津田の再生>
舞台は、茨城県牛久市にある谷津田(やつだ)と呼ばれる牛久沼の水源地で
す。谷津田は谷地にある田んぼのことで、谷には湧き水を利用した水田、谷
を囲む斜面には雑木林など多様な環境があり、かつては多くの生きものたち
が暮らしていました。しかし、現在は農家の高齢化や関心をもつ人がいなく
なったことによって、耕作放棄地され荒れているところがほとんどです。

また、牛久沼もコンクリート護岸化により植生帯が減少し、水質、生物多様
性の低下が進んでいます。南中学校では、そうした地域の特色や自然環境、
課題を発見することから学習をスタートし、牛久沼の水源となっている谷津
田で生物調査や水質調査、昔の様子の聞き取り調査などを続けてきました。

そして、この場所を再生させて「トキの舞う谷津田にしよう!」という夢を
掲げ、谷津田の再生提案を続けてきました。この提案を首都圏の大学生が受
け、2011年度から「かっぱん田」プロジェクトがスタート。20年以上人
の手が入っておらず、背の高い草や木までもが生い茂っていた谷津田の草を
刈り、手作業で水路を掘って再び田んぼへ再生したことで、田んぼの水面や
水路を利用するたくさんのトンボやカエル、ホタルなどの生きものが戻って
きました。

<つながりの輪風せんべい誕生>
2012年度の南中生は、再生されたかっぱん田での草刈りや生物調査や水質調
査、地元の方から昔の様子の聞き取りを行ってきました。その結果見えてき
たのは、人と自然とのつながりが希薄になっていることでした。この取り組
みをさらに広げていくためには、地域に新たな「つながり」をつくっていく
ことが必要だと考えた中学生たちは、谷津田で無農薬栽培したもち米を使っ
た地域ブランド商品づくりに取り組みました。その過程では、地元の農家や
漁師、企業の方や大学生など様々なバックグラウンドをもつ方々を招待して
提案を披露し、意見交換をする中で考え方の違いに遭遇することもありまし
たが、自分とは異なる考え方に触れることでより具体的なつながりを考える
きっかけになりました。
そして誕生したのが「つながりの輪風(わふう)せんべい」です。

<つながりの輪風せんべいとは>
再生したかっぱん田で収穫したもち米を使い、小美玉市にある大形屋商店の
協力で、霞ヶ浦で密漁しない漁師から仕入れたざざえびを入れたえびせんべ
いづくりに取り組みました。せんべいを揚げる油は、霞ヶ浦流域の耕作放棄
地を再生させて育てたヒマワリから搾ったヒマワリ油。
日本テキサス・インスツルメンツ鰍フヒマワリ畑で、霞ヶ浦の外来魚からで
きた魚粉を肥料に栽培したヒマワリを提供していただきました。

もち切りや袋詰めなどの作業は小美玉市の福祉作業所「つばさ」の方々の協
力を得ています。
さらに、せんべいのネーミングやパッケージのデザインなどのブランディン
グ、販売先の開拓などのマーケティングを牛久南中学校の生徒が担当し、牛
久市内にある社会福祉・障害者通所施設「みのるの郷」で販売を実現しまし
た。

このように、これまでつながりがなかった様々な人やもの、産業をつなぎあ
わせたことで、生物多様性保全や福祉、地球温暖化防止など多様な効果をも
つ物語をもったせんべいが出来上がりました。

「つながりの輪風せんべい」というネーミングやラベルのデザインは、南中
1年生119人の生徒全員が想いやアイディアを出し合い、学年全体で何度も企
画会議を重ねた中から出てきた意見を有志メンバーが集約して作り上げまし
た。

谷津田を再生させることでたくさんの生き物や人、人と地域がつながるとい
う願いを表現しています。また、谷津田の環境を良くしていくことで将来呼
び戻したいと考えている「トキ」と、昔のような「時」を取り戻したいとい
う願いをかけ合わせて、「ときを呼び戻そう!」という副題も加えました。

このせんべいは、2012年3月23日〜30日の間、みのるの郷の売店にて1袋300
円で販売され、南中生も販売体験を通じて地域住民へ取り組みへの想いを伝
えました。

<地域へひろがるつながり>
2012年2月25日には、かっぱん田1周年を記念して、首都圏の大学生と南中生
の協働企画の収穫祭を開催しました。
かっぱん田復田までの経緯や1年間の活動を振り返り、南中生によるせんべい
のお披露目、収穫したもち米でもちつきを行いました。
この収穫祭には、地元の方々も数多く参加してくださり、地域のつながりの輪
がまたひとつ広がったことを実感することができました。

このように、南中学校では、せんべいのブランド化に取り組むことを通じて、
生徒たちが提案するまちづくりを社会に発信していく取り組みへと学習が発
展しています。
今年度2年目を迎えたかっぱん田でもさらなるつながりを生み出しながら、
大学生や南中生とともに地域に新しい物語をつむいでいきたいと思います。

牛久南中の活動の様子をご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_3n16zO.pdf


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