[発行日:2012.07.31] vol.94 岡山県立矢掛高校 白石島ESD研修報告  ESD教育の意味とは?

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┃     QQ    【 トンボ エコ&ESD メールマガジン 】 
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┃  ⊂≡⊃‡⊂≡⊃       vol.94         
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┃     ┃       株式会社トンボ 環境事業企画室   
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★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2012.7.31━★




こんにちは、トンボ環境事業企画室の小桐です。
7月の最終日となり夏真っ盛りの今日この頃です。
先週からはロンドンオリンピックが始まり、文字通り熱い戦いが始まっ
ています。

今月よりトンボでは新しい事業年度が始まりました。
つきましては、このメルマガの名称を変更しました。これまでの学校ビ
オトープに関する取材内容を継続しながらもさらに幅広い視点での情報
をお届けしていく予定です。
名称を エコ&ESDメールマガジンと改称させていただきます。

ESDとは聞きなれない言葉ですがエジュケーション フォ サステナブル 
ディベロップメントの頭文字です。
日本語では持続可能な開発のための教育と訳されます。日本が国連に提
唱した考え方で、エコにとどまらず持続可能な社会を構築するための教
育活動全般を指します。

現在の地球環境について向き合うと今後の持続可能な社会の構築に向け
た変化を考え無いわけにはいきません。
お届けする情報がそのための一助となれば幸いです。


 もくじ【1】岡山県立矢掛高校 白石島ESD研修報告
     
    【2】ESD教育の意味とは?



      

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       【1】岡山県立矢掛高校 白石島ESD研修報告
         
            
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今年で6年目を迎える 岡山県立矢掛高校の白石島ESD研修。2年ぶりに
取材をしましたのでご報告します。

7月15,16日の2日間、瀬戸内海の中央部で岡山の西端に位置する白
石島に矢掛高校の1〜3年生30名が集合しました。
昨年から同校OGが通う福山市立大学の学生6名も継続して参加、今年は
さらに、県内北部の林野高校から13名、岡山東商業高校から1名が加わ
り学生、生徒だけで50名の規模となりました。この他今年から社会人と
なった矢掛高校OG2名(白石島研修1期生)も久しぶりに参加しました。
当日は2日間密着で地元のケーブルTV局が取材をしました。

もともと矢掛高校の地元 小田川のゴミ問題を研究するうちにそのゴミが
どこに流れて、どのようになるのかの調査から始まった学習ですが、今は
同校の教育の目玉の一つとして継続されています。

この2日間で生徒達は、島の歴史、現状を知り、島を歩き、文化に触れま
す。そして、この島の課題を考え、自分達の郷土の課題にも目を向け、今
後の自分達の環境演習という授業の研究課題を見つけるきっかけにするもの
です。

今回は他の2高校から参加がありましたが、ユネスコスクールとして活動
する実績が他校の教育と重なるものがあると先生間の共感を呼び実現しま
した。
ユネスコスクールとは、ユネスコ憲章に示された理念を学校現場で実践す
るため、国際理解教育の実験的な試みを比較研究し、その調整をはかる共
同体として発足したもので、このネットワークに参加している学校をユネ
スコスクールと呼び、日本では397の幼稚園〜高校・大学が参加してい
ます。
詳しくはこちらをご覧下さい。
http://www.unesco-school.jp/index.php?page_id=34

初めに、白石島公民館 天野館長より島の歴史、人口、産業、教育、イン
フラなどについて説明をいただきました。

人口は年々減少し現在606人、学校は小、中までで現在28人、高齢化
が進み70代以上は220人居る。産業としては、漁業、観光がメインで
ある。かつては石材業も盛んであったが、現在は海外産に押されている。
昭和57年に上水道管が敷設されて大変便利となったが、それまでは島は
自給自足に近い形で暮らしてきた。

江戸時代に島の一部を干拓し、田んぼを作った。そのそばには調整池を作
り島の水を海に返していた。年に1回この池の泥上げをする重労働があっ
たが、その夜に島民が集う踊りもあり、辛いことと楽しみをセットにする
ことで島の暮らしを守ってきた。

元禄時代から綿栽培が始まり、その後桑を植え、絹も作り生活を続けてき
た。綿花栽培は現在復活して糸紡ぎや機織が行われている。
昭和30年代までは山の木材は燃料に使い禿山が多かったが現在では山の
利用は少なく、むしろ放置に近い状態となっている。

島が瀬戸内海の中央という交通の要所の位置にあったので北前船や大阪と
西国を行き来する船の風・潮待ち港としても栄え、江戸時代は天領となっ
ていた。このほか、医療のこと、急病人が出た場合の対応などの話を伺い
白石島の概要を理解しました。

午後からは恒例のシーカヤックの旅です。島の反対側まで2人で漕いで行
きます。着いた海岸で待っていたのは ゴミでした。
このゴミはどこから来るのか? 島の位置、潮の流れから瀬戸内海沿岸か
ら来たゴミがここに漂着することが分かりました。

次は、ゴミ広いです。ぺットボトル、ビン、プラスチックのゴミなど様々
な物を拾いました。一番大きなゴミは、冷蔵庫ホテルで使われているもの
と同じ大きさのものですが、船舶用のものではないかと推測されます。

集めたゴミの気持ちになって5人が語りました。
まずはOGに模範例をしてもらいました。カップ麺の気持ちになって自分は
昨夏福山の河川で食べられて放置された、その後雨で流され白石島まで来
た。この海岸で自分の周りもゴミが一杯、存在に気づいて拾って欲しいけ
ど、こんな私になったのは誰のせい?というストーリー性抜群のゴミの気
持ちを語りました。ちなみこのOGは矢掛町役場でゴミの担当部門に配属さ
れているそうでさすがにプロでした。

その後、ペットボトル、軟式野球のボール、プラスチックのトロ箱、冷蔵
庫、韓国産の歯磨きなどになりきり、ゴミの気持ちを語りました。
最後に先生方もウェットスーツの切れ端としてゴミのストーリーを語りま
した。白石島のゴミは結果であって、原因は自分達の生活にあることに気
がついた。シーカヤックツアーでした。

午前から午後までの体験はこちらをご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_MD597W.pdf


夜は島の伝統行事「白石踊り」です。元々お盆の踊りですが今では観光の
ひとつになっていて、浜辺では暗くなる前から踊りが始まります。
当日は観光フェリーが島について多くの観光客がやってきました。
踊りも1種類ではなく、子ども、男性、女性などの踊りがあります。実際
に踊ってみると結構複雑な動きで無形文化財であることが良く分かります。

白石踊りを盛り上げる行動を高校生達は経験しました。同島の公民館と協
力して白石島の伝統を外部に広くアピールしようとするNPO法人のキャンド
ルナイトに協力をしました。
フェリー乗り場から会場までの道にキャンドルを並べて行きました。その
数は島民の数と同じ606本です。ウエルカムとフェアウェルの思いを表
現しました。

踊りが終了する前にろうそくが地元の方たちと NPOのメンバーにより点灯
されました。
踊りの後フェリー乗り場に向かう観光客のみなさんは幻想的な光を見て
きれいだの声、写真を撮る人も多くいました。帰りのフェリーからも見え
るように工夫をして配置しました。その後片付けを手伝い、初日の体験を
終了しました。

夕方、夜の体験はこちらをご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_GxQGUV.pdf


2日目は朝から、島の遊歩道をも整備しました。6年前は草刈をしながら
進んだそうですが、目的地まではたどり着けませんでした。その後毎年草
刈をするので草、樹木もあまり生えなくなり、少しの作業で済む様になり
ました。 魚つき林の話、魚見台(魚群の探知や船との交信をした高台)
などの見学をしながら山を2つ越えました。地質学的に大変珍しい岩の生
成について大学の先生に解説していただきました。

午後からは、大学生がまとめた白石島の歴史、水質などの現状を発表し、
その資料を元にグループ討議で持続可能な白石島の今後について語りまし
た。
課題は何か?その課題を解決するにはどのような対策が考えられるか?
高校生達なりに色々なことを考えました。島の魅力を増やしていくことは
共通していましたが、経済活性が中心の解決策として捉えるグループが多
かったようでした。

生まれたときから、ボタンやスイッチを押すことで自分の生活を成り立た
せてきた世代に2日間の体験で持続可能な暮らしの解決策を考えることは
無理がありますが、体験により何かを感じ取ってくれたのではないかと思
います。

2年後の2014年には岡山でユネスコスクールも参加しての市民レベル
のESDイベントが開催されます。矢掛高校もそのイベントに参加予定で、代
表2名が2日目に抜けて大阪での準備会議に参加しました。

2014年にはESD提唱から10年目を迎え、名古屋で閣僚級の国際会議が
岡山市で市民レベルのイベントが開催されます。

白石島の研修が高校生にとって気づきと学びのきっかけになれば幸いです。
来年はコットンにまつわる学習プログラムもできればよいと先生方とも意
見交換をしました。トンボとしてもESDへの協力を今後も進めて行きたいと
考えます。

2日目の体験はこちらをご覧下さい。
http://www2.tombow.gr.jp/merumaga/save_up/5-file_e7GhHU.pdf

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         【2】ESD教育の意味とは?
              
                    
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持続可能な社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが、世界の人々や将来
世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革す
ることが必要であり、そのための教育が「持続可能な開発のための教育」
です。

わが国の提案により、2005年からの10年間を「国連持続可能な開発
のための教育の10年」として、国際的に取り組んでいくこととなりまし
た。(環境省のHPより抜粋)


【ESDの目標】
 持続可能な発展のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる
 教 育や学びの場に取り込まれること
 すべての人が質の高い教育の恩恵を享受すること
 環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような価値
 観 と行動の変革をもたらすこと

【基本的な考え方】
ESDは、持続可能な社会づくりのための担い手づくりです
 ESDの実施には、特に次の2つの観点が必要です
 −人格の発達や、自律心、判断力、責任感などの人間性を育むこと
 −他人との関係性、社会との関係性、自然環境との関係性を認識し「関
 わり」「つながり」を尊重できる個人を育むこと
環境教育、国際理解教育、基礎教育、人権教育等の持続可能な発展に関
 わる諸問題に対応する個別分野の取組のみではなく、様々な分野を多様
 な方法を用いてつなげ、総合的に取り組むことが重要です

【育みたい力】
 体系的な思考力(問題や現象の背景の理解、多面的・総合的なものの見
 方)
 持続可能な発展に関する価値観(人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、
 機会均等、環境の尊重等)を見出す力 代替案の思考力(批判力)
 情報収集・分析能力 コミュニケーション能力

【学び方・教え方】
 「関心の喚起→理解の深化→参加する態度や問題解決能力の育成」を通
  じて「具体的な行動」を促すという一連の流れの中に位置付けること
 単に知識・技能の習得や活用にとどまらず、体験、体感を重視して、探
 求や実践を重視する参加型アプローチとすること
 活動の場で学習者の自発的な行動を上手に引き出すこと

【わが国が優先的に取り組むべき課題】
 わが国の国内実施計画では、「わが国のESDについて、環境保全を中心と
 した課題を入り口として、環境、経済、社会の統合的な発展について取
 り組みつつ、開発途上国を含む世界規模の持続可能な発展につながる諸
 課題を視野に入れた取組を進めていく」とされています
(文部科学省HPより抜粋)
http://www.mext.go.jp/unesco/004/004.htm


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